森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』を読んで
この小説は恋愛ファンタジーなのに全く恋愛をしていない。そう思えるようなほど「先輩」は外堀を埋めるとこに身をやつし、「黒髪の乙女」は自分のペースで生きている。しかしこの物語は恋愛ファンタジーなのである。
彼と彼女の物語は交わらないようで交わっている。例えば彼女が飲み屋で出会った、樋口さんと羽貫さんと木屋町か先斗町に向かって歩いていると脱ぎ捨てられズボンを発見する。このズボンを何を思ったか羽貫さんは履いてこの後の町を闊歩するのだが、このズボンこそ先輩が履いていた物なのだ。これ