かぐやサメ【創作童話】

 昔々、ある所におじいさんがいました。おじいさんは山に入って竹を切り、色々なものへ加工する仕事をしていたため、『竹取の翁』と呼ばれていました。
 ある日、おじいさんが竹林に入ると、不思議なことにまばゆく光る竹を見つけました。光る竹をそっと切ると、中には美しく光る小さなサメが入っているではありませんか。子どもがいないおじいさんは、サメを連れて帰り育てることにしました。

 おじいさんが見つけたサメはどんどん成長し、三ヶ月ほどで美しい妙齢のサメになりました。サメは美しく輝くことから『かぐやサメ』と名付けられました。
 美しいかぐやサメの噂を聞きつけた男達は、次々にかぐやサメに求婚しました。しかしどんなに身分が高い相手でも、どんな贈り物をもらおうとも、かぐやサメは誰とも結婚する気がないと言います。

 噂は帝にまで届き、帝がかぐやサメに会いに来ることとなりました。帝を前にし、かぐやサメは語り始めました。「次の満月がくれば、私は巨大で凶暴なサメへと変わり果ててしまう。その前に皆様の元を去ろうと思います」と。
 しかし帝は、かぐやサメの言葉を結婚を断るための嘘だと決めつけ、かぐやサメにここへ留まるよう命令します。帝の命令に背けば、かぐやサメはおろかおじいさんの命もありません。仕方なく留まることとしたかぐやサメはさめざめと泣きました。おじいさんはそんなかぐやサメを優しく抱きしめ、「どう変わろうが、お前は私のかわいい子どもだよ。最後まで面倒みるから大丈夫だよ」と慰めました。

 十五日、満月の晩になりました。月の光を浴びたかぐやサメはみるみるうちに巨大化し、理性を失った凶暴なサメとなり暴れ出しました。慌てた帝お付きの兵たちが弓矢を放ちますが、かぐやサメの鮫肌に弾かれ傷ひとつつけることができません。その場にいた貴族や兵たちは、かぐやサメに食い千切られバタバタと倒れていきます。
 誰もが混乱する中、おじいさんはかぐやサメに毅然と立ち向かいます。竹で作った罠を幾つも展開し、かぐやサメの動きを封じようとしますが、かぐやサメの凄まじい力によって竹の罠は破壊されます。小手先の技術では敵わないと悟ったおじいさんは、竹槍を手にかぐやサメに真っ向勝負を挑みます。竹のしなりをバネとして利用し、おじいさんはかぐやサメの攻撃を躱し続けます。何時間もの格闘の末、一瞬の隙見つけ、おじいさんはかぐやサメの喉元に竹槍を突き刺しました。動かなくなったかぐやサメ。おじいさんは静かに涙しました。
 なんとか生き延びていた帝はおじいさんを讃えました。おじいさんは『鮫取の翁』と呼ばれるようになり、帝を救った英雄として語り継がれてました。

鮫取物語 おわり


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