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「世界でいちばん透きとおった物語」

予測不能の結末が待つ、衝撃の物語

書店で見かけて、帯の謳い文句に釣られて購入しました。
杉井光さんという方の作品で、恥ずかしながら氏の作品を読んだのはこれが初めてになります。

ちなみに、これ以下の文章には若干のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。



以下、ネタバレ含む


「絶対に予測不能な衝撃の結末」という煽り文句は少々言い過ぎだと思いました。ただこれは、僕がごく最近に似たような仕掛けの作品を読んだからかもしれません。この作品で用いられているトリック(?)は、つい先日読んだ作品のものと根幹が同じでした。

いわゆる叙述トリックとも少し違う、文庫本という媒介そのものに秘められた仕掛けは、それを書き上げる労力を想像すると尊敬に値しますが、僕の好みかというとそうでもない。この手のトリックは、その性質のためにストーリーや文章で犠牲を払わないといけない部分が絶対に生まれてしまうものです。仕掛けとして上質で優れていても、読んでいて面白くない。正直に言って、この小説はストーリーとしてはあまり楽しめないものでした。トリックありきで構想されたと思われる物語で、設定に不自然さが多々あり、登場人物に感情移入することが難しい。こういう仕掛けの小説だと仕方のないことだとは思います。

とはいえ、非常によく出来ている作品なのは間違いないです。
これは好き嫌いの問題であって、僕にはあまり合わないというだけのこと。
この作品が自分の読書史に残る一大傑作だという人がいても不思議ではありません。仕掛けを施す動機のようなものも、物語に沿ってうまく説明されているので、素直に読めば見事に完結しています。

本格推理ものを好むミステリマニアに評価される作品ではないと思いますし、これをミステリーと呼ぶのは違う気もする。「飛び出す絵本」てありますよね。ページをめくると、切り抜かれていた絵が盛り上がってくる仕掛けのある子供用の絵本。これは、どちらかといえばそういう方向の発想から作られた作品のような気がします。ミステリではない、でも読んだら驚きが待っている。そういう認識で読んでみるといいのかもしれませんね。


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