見出し画像

会社8期目へ。いまを振り返る3つの視点を書き残す

おかげさまで株式会社Huuuuは8期目に突入しました。これまで関わってくれている皆さんありがとうございます。

毎度、振り返りのnoteを記録するようにしているんですが、これが割と重要なんですよね。読み返すことが多いわけではないけれど、チームに対しての宣言にもなるし、個人としての考えを整理するきっかけにも。

数字上は8期目でも期間としては6年半ですかね。長かったような、短かったような。勢いで立ち上げた会社でも、この継続した期間が会社の体力貯金にも繋がっている気がするので「やってよかった」の気持ちが強いです。

さて、なにを書こうかと考えていたんですが、最近は心境の変化が大きいため、わかりやすい決意表明の炎は自分のなかにありません。淡々とこういうことしていかないとなぁ…というニュートラルな感覚です。

あえて3つの視点に絞って書き残していきたいと思います。

「柿次郎さん、いまなにやってるんですか?」の問い


ジモコロ編集長を友光だんごに託してから、肩の荷が下りたのは間違いないです。戦闘服とまではいかなくとも、ジモコロを背負って8年間生きてきた身体感覚はあまりにも自分を拡張するものだったのかもしれません。

仮に30%分の拡張が編集長の肩書きによって生まれていたのだとしたら、その差分の喪失感も伴います。抜け殻ではない。ただ、自分が自分じゃないようなこそばゆさはある。脱皮に近いのかな。肩は軽くなったけれども、この軽さに慣れるのも少し時間がかかりました。

SNSの投稿がほとんど「畑」と「犬」に振り分けられているのでお気づきかもしれませんが、意識的に仕事量を減らして休んでいるのは事実。旅は控えて、長野県内を中心にした人付き合い(=遊び)に向き合いながら、次のステップに向けた社長業をコツコツとやっているような状況です。

再会の交差が遊びの延長で発生するたびに聞かれるのが「最近なにしてるんですか?」の問いです。

なにやってるんでしょうね。これも肩書きの差分が生んだ現象というか。遊んでいるし、権限譲渡をしてチームに仕事を任す。あまりに口を挟まない。「やってみなはれ」を動的につくるべく、あえて実業務から少し距離を置いているところはあると思います。

6年半の間、人を見つけては結果的に育ってくれるような環境は整ってきた。土壌改良が整ってきたともいえる。実際、成長を感じる機会は多く、「いいぞ、いいぞ。もっと、やってみなはれ!」な姿勢で今後もいこかなと。

言い変えれば「やらないことを、やる」「やめることを、やる」って感じ。ただ、他者は具体的な行動に対してリアクションを示すもの。「いや〜、畑と犬愛でてますね」でも全然問題はないけれど、「そんなことやってるんですね!」の感嘆符が欲しくなる性分なんですよね。

やはり「ジモコロ編集長として全国47都道府県を這いずり回っています」のアイデンティティは強く根付いていて、多動すぎる全国行脚を抑えていることの反動があります。

それでも京都や東京など都市部は打ち合わせ兼ねて遊びに行ってるし、9月は沖縄→台湾旅行に出かけます。なくはない、あるはある。これまでがあまりにも多動だっただけなんだろうなぁ。

そろそろいまの生活も馴染んでくるはずだし、畑シーズンが終わったら動きたくなる予感は大。このあたりの余白みたいなものが、次の決断に進むためのエネルギー補給になっていると思います。パソコンは週2回ぐらい机に向き合って触るぐらいがちょうどいい。


実業に向き合って、編集の役割を拡張したい

ウェブメディア編集の仕事は継続的に育てつつも、最近は紙媒体の相談が増えています。コンセプトから考えて、ヒアリングやリサーチから構成内容を決めていく。このプロセスは引き続き大好物なのでやっていきたいのですが、シンカイ、MADO、夜風に続くような実業をがっちりやってみたい気持ちが高まっています。

それはなぜなのか?

実業はリスクを負ってやればやるほどに、見返りの結果がおもしろいから。成功しても失敗してもおもしろい。やったことないことってめちゃめちゃ調べるし、人と対話しながら糸口を見出すもの。実践的なプロセスの中に学びの種みたいなものが発芽していって、ジジイになって死ぬまでの大事な大事な好奇心に成長していくんですよ。これは手放してはいけない、絶対に。

好奇心が純粋に芽吹いて、己に根を張った感覚わかります? 流行りものにのっかってとってつけたようなものではなく、抜こうとしても抜けないぐらいの強度が生まれるんです。これがマジ最高。わざわざめんどくさい会社を経営しながら、チームを作り上げていく醍醐味は、人的リソースをコントロールしながら新しい実践に取り組めることに尽きます。

それが居酒屋なのか、レストランなのか、ホテルなのか、オーベルジュなのか、食品加工所なのか、倉庫なのか。実業の種をいま拾い集めようとアンテナが立ってきていて、推進力をあげるためには全国で実業に向き合っている友だちたちに再会して、うまい酒とうまいメシを囲みながら仕事抜きで遊ぶ時間が必要だなと実感しているところです。

一定の会社規模になれば、社員のために会社がある世界に放り投げられるとは思っているんですが、まだまだ小規模なので”自分で自分をのりこなすためのエネルギー装置”として、もしくは”社会と接続しながら、おもろい世界に若者を引っ張り込むための道具”として利用していきたい。

奇跡が起きていて決算書はスーパーホワイトコンボをキメているので、この信用を交換するために初めて運転資金としてお金を借りてみました。キャッシュは正義。安心感を担保しながら攻めるためにも、やったことないことに恐る恐る踏み出すことも上記の理由で楽しんでいます。

この前、日向くんに「柿さんは経営者の孤独を感じてないんですか?」と聞かれたんですが、「ぜんぜん感じてない」と答えられたのはひとつの意思決定かもしれません。感じていないことを決定できた。これも自己決定の好奇心ベースで会社が機能しているからだと思えるというか。

めっちゃいい感じに「稼いでるぞー!ひゃっはー!」とはならないぐらい、ちゃんと人に対価を払って、経済非合理性に全力ダッシュしているから安心です。やればやるほど利益が減る。売上は少しずつ増えているけれど外注費も跳ね上がる。絶妙な綱渡りを健全に選択できていることが、経営者としての小さな自信になっているはずです。

いまは口癖を「2億円借りたい」に設定しているのも、実際に銀行からお金を借りられるかどうかは関係なくて、実業のスケールをでかく感じ取っていたいからです。「5000万円借りたい」だと3000万円になるかもしれない。「1億円借りたい」だと8000万円になるかもしれない。2億円だったら1億5000万円まで一気に踏み込めるような事業計画が頭に浮かぶと思うんですよね。思考の予行練習というか。

口にすればするほどに脳が馴染んできて、多額のお金を借り入れするための咄嗟の意思決定ができるんじゃないかと踏んでいます。

チームの再編成で進むべき矢印を見定める

もうひとつの大きな判断として、しばらくお世話になっていた下北沢ボーナストラックのシェアラウンジスペースを解約することにしました。長野チームと東京チームの言い方で、2チーム / 2拠点の掛け算を面白がっていたんですが、前述の実業ベースで「長野」にチームを振り分けていきます。

メディア編集の大黒柱である友光だんごは神奈川県・辻堂に住んでいるので、東京案件の対応は問題なしと判断。打ち合わせも飲み会もみんなフットワーク軽く動けるし、リモートワーク含めたニューノーマルな働き方は場所に囚われない性質を持っているので利用しない手はない。

これも代表としての意思表示のひとつ。大局的な流れを考えれば、長野に根を下ろすような旗を掲げるタイミングなんじゃないかと。こんなに住みやすい土地はない。事務所もスナックも長野市にある。信濃町で自然のフィールドを獲得して、人間らしい生活とはなんなのか?これぞウェルビーイングの実践なんじゃねーか?と、すぐにお金に交換できないような知恵と体験にシフトしていってるのは予兆に過ぎません。

AIとかテクノロジー革命がどうなるとかわからん。ただ人間らしく生きるためのエッセンスが自然領域に詰まっているのは間違いない。自然と触れれば触れるほどに、「どう活かして循環していったらいいんだろうな?」と純粋に考え込む機会が増えています。草刈り然り、畑仕事然り、犬の散歩然り。小さな営みのミクロな世界から、ビジネスに置き換えられるようなマクロな想像力が掻き立てられるのがめっちゃおもしろい。

生存戦略として長野の旗をより強く振り続けて、会社の方向性を明確に伝えていかねばならない時代になってきたってことですかね。

幸いなことに5年以上も長野に住み続けたら、仕事関係も人間関係も溜まりに溜まってきてるんですよね。これはもう、意思決定の麹をぱらぱらとふりかけて、ゆっくり発酵させるしかないじゃないですか。やっぱり近い距離でその過程をみんなに共有していきたいんですよね。せっかく会社という器があるんだから。いろいろ盛り合わせていきたいし、とっておきの一品をつくるのもやってみたい。

ひとつのきっかけとして新卒採用/中途採用に再びチャレンジするのも考えています。Podcast採用第二弾。仕事が増えすぎてリソースが足りないという出発点ではなくて、平常心を保ったままのゆとりあるタイミングであえて採用活動に打ってでるのもおもしろいじゃないですか。いわゆる広義的な編集者像を見いだせるような役割をチームに混ぜ込んで、純粋発酵の新たなプレイヤーを育ててみたい気持ちです。また具体的に決まったら報告します。


犬と遊ぶ毎日

というわけで8期目初日の意思表明noteでした。このメッセージに共感して「久しぶりに会って話したい!」なんて方がいたら気軽に連絡してください。どこでも飛んでいきますし、長野で遊びながら話すのも大歓迎です。スローダウンして穏やかな柿次郎はなかなかええ味出てると思います。

最近「やってこ!」よりも「干してこ!」だしなぁ。梅干し25キロ仕込みに忙しいのでこのへんで。


1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!