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その102 筆の構え方 ~筆の構え方でお名前が上手く書けた!~

ある日の書道教室のお稽古で、
「先生!小筆で下の名前を漢字で書きたいんだけど、画数が多くてうまくいかない!」
と小学5年生の男の子。
お!下の名前は学校で習ってないし、まだ、毛筆では書かない!と言っていたのに書く気になったんだな!と思いながら、
「じゃあ、お名前のお手本を書くので、こちらに来てね。」
「画数が多いので、線が太くなると字がつぶれるから、筆は立てて持ってね。筆を立てると細い線が書けるよ。倒すと線が太くなるからね!」と解説しながらお手本を渡すと、
「先生、うまいね!」
「あ、ありがとう。」
お手本!褒められました(笑)

その後、彼は黙々とお名前の練習をしていましたがうまくいかない様子。
「先生!筆がうまく使えない!」
「どれどれ、見に行くね!」
彼は、右手手首を紙に軽く当て小筆で名前を書いていました。ずっとこのやり方で書いてきました。
この筆の構えは書道用語で「提腕法」といいます。
今までは、ひらがなでお名前を書いていたので、それほど困らなかったのですが、画数が多い漢字を書くとなると苦労している様子です。
「じゃあ、左手で紙を押さえてその上に右手をのせて書いてみようか。」
「あ!すごい安定する!うまく書ける!」
彼は上機嫌。
一件落着!
この持ち方は書道用語で「枕腕法」といいます。 
「枕腕法」は「提腕法」よりも筆が安定して細かな字を書くときに使える小筆の構え方です。
つまり、彼は筆が安定して細い画を組み合わせて画数の多い自分のお名前を書くことができたというわけです。


実は筆には鉛筆と違った構え方があります。
一般的には
①懸腕法 ②提腕法 ③枕腕法
があります。
それぞれ特徴や使われ方があります。

①懸腕法・・・肘を机から離して机と肘がほぼ水平になるように構え、肘は脇につけず、少し隙間を作ります。腕を上げすぎると肩に余計な力がかかってしまうので注意が必要です。肘や手首は固定されず浮いているので、腕を自由に動かすことができます。よって、肩から手首まで使って大きい筆運びができます。

②提腕法・・・手首から肘までを机に付けたまま筆を動かします。肘は机に軽く触れる程度に置きます。紙の上を滑るように腕を動かして書きます。そのため筆が安定します。小筆に向いています。

③枕腕法・・・紙を押さえ左手の上に右腕を軽く乗せて書きます。両手を一緒にずらしながら書き進めます。穂先(筆の先)が安定して細い字を書きやすくなります。小筆に向いています。

今日は、お稽古の出来事から筆の構え方についてお話ししました。
教室のお稽古では字形だけでなくこうした筆の構え方なども学習し、皆さんでお稽古をしています。

おまけ
昨日のお稽古でこっそり小学5年生の彼を見ると「枕腕法」でお名前を書いていました。
前回のお稽古のこと覚えていてくれたんだな!良かった!

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