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川端康成 単行本 書影97

00
まえがき

2022年10月から川端康成を読み返している。
代表作は中高生の頃にわけわからないまま読んだが、今回はネットも参照しつつ。
文庫で手に入ったものだけなので全く網羅的ではないが、なんとなく全容が見えてきた。
恵まれなかった幼少年期を燃料にして、結構な頻度で自分を切り売りする形で作品化している。代表作はこちら。
かたや少女小説や婦人向け小説も多い。こちらは代作や文壇政治や権力構造など厄介だが、文筆業界の慣習でもあるだろう。
数か月に一冊刊行しているので、現代でいえばライトノベル作家並みのペース。
職業作家として必要な量だったのだろう。
が、おそらく川端は筆は早い方ではない。さらに構成の能力が高くない。そこで弟子というか協力者というかゴーストというか、抱え込む必要があったのだろう。
1899年生まれなので、マッピングの軸にもしやすい。(ちなみにウィリアム・フォークナーも1897年生まれなので近い)
明治後半、大正、昭和の文化、戦争の影響など。
文筆業界以外への言及が多いのも、参照しやすいところ。
内容については、結構な割合で、冷酷なキモオタが、清純な少女(鑑賞用)と奔放な女性(抱く用)を、見つめる、という構図が多い。
澁澤龍彦とは別ベクトルで「眼の人」なのだ。写真にある顔もそうだし。
初期の前衛から戦後の日本回帰まで、常に絵や骨董など、アートへの興味を持続していた。
ブックデザインにも気を配っていたはず。
ビブリオマニアではないので蒐集はしないが、ちょっと調べてみようと思った。

手法
1 wikipediaの「著作本一覧」の「単行本」に限ってexcelに整理。
2 webで書影を検索。
3 行列入れ替えしてexcelをコピペ。一言感想を追加。

・番号
・書籍名
・版元
・刊行年月日
・収録作品
・ビジュアル
・雑感

01
感情装飾

金星堂
1926年6月
掌の小説35編を収録
装幀:吉田謙吉
なんというハイカラアな装幀よ。吉田謙吉という舞台装置家、映画の美術監督、衣裳デザイナー、タイポグラフィ作家。金星堂は1918年設立で、戦前は新感覚派の拠点となった。戦後は文芸から撤退し、語学系出版社として活動を、いまもしている。一作品一書影という原則をのっけから破ってしまうが、稲垣足穂の宣伝が右横書きで掲載されているのも見逃せない。

02
伊豆の踊子

金星堂
1927年2月
白い満月、招魂祭一景、孤児の感情、驢馬に乗る妻、葬式の名人、犠牲の花嫁、十六歳の日記、青い海黒い海、五月の幻、伊豆の踊子
装幀:吉田謙吉
早速代表作キター。三島の「煙草」について、あの年齢でなければ書けなかったことを書いているからいい、と中村光夫だかに言ったらしいが、本書に収められた作品群も同じ。

03
僕の標本室

新潮社
1930年4月
母、神の骨、ほか47編
掌編集にこの総題をつけるセンス、いまでいえば中二ふう。新潮社は1896年創業。

04
花のある写真

新潮社
1930年10月
死体紹介人、春景色、花のある写真、文科大学挿話、死者の書、花嫁姿、或る詩風と画風、温泉宿
現在は「花のある写真」だが、当時は「の」抜きで「花ある寫眞」だった。随分雰囲気が違う。

05
浅草紅団

先進社
1930年12月
浅草紅団、日本人アンナ、白粉とガソリン、縛られた夫、浅草日記、水族館の踊子、を収録。
装幀:吉田謙吉、挿画:太田三郎
流行作キター。イケイケドンドンの時期だな。いまはなき版元。

06
化粧と口笛

新潮社
1933年6月
化粧と口笛、明日の約束、抒情歌、真夏の盛装、針と硝子と霧、二十歳、水仙、落葉、霧の造化
装幀:妹尾正彦
戦間期だが震災恐慌や金融恐慌のためスピリチュアリズム流行→「抒情歌」。

07
水晶幻想

改造社
1934年4月
禽獣、騎士の死、それを見た人達、椿、慰霊歌、女を売る女、夢の姉、父母への手紙、結婚の技巧、寝顔、水晶幻想
新感覚派ここに極まれりな表題作。なのに装丁が意想外に古風でびっくり。1919年創立の改造社、反骨のイメージが強いが、こんな文芸書も扱っていたんだな。

08
抒情歌

竹村書房
1934年12月
浅草の姉妹、水仙、春景色、青い海黒い海、寝顔、伊豆の踊子、二十歳、十六歳の日記
装幀:木村荘八
竹村書房、太宰治の小文「私の著作集」で出てくる。

09
禽獣

野田書房
1935年5月
散りぬるを、禽獣
本の厚みが分からないが、この短編2作で本の体裁になるんだろうか。

10
小説の研究

第一書房
1936年8月
「小説とは何か」(12論)、「創作の動機」(6論)、「長篇小説」(4論)、「短篇小説」(6論)、「主題」(6論)、「筋」(6論)、「性格と心理」(4論)、「文章論」(3論)、「作家と作品」(30論)、「小説一家言」(18論)、の10章95論
第一書房は学術書の版元として現在も活動中。一部を伊藤整・瀬沼茂樹が代筆。

11
純粋の声

沙羅書店
1936年9月
文学的自叙伝、嘘と逆、ほか36編
装幀:堀辰雄
堀辰雄! にしてはザ・シンプル! 紙の質感とか気になるな。

12
花のワルツ

改造社
1936年12月
虹、散りぬるを、童謡、田舎芝居、花のワルツ
題簽:川端康成
2022年は没後50年ということで新潮文庫の美麗な新装版が続々出たが、「花のワルツ」はまだ。

13
雪国

創元社
1937年6月
雪国、父母、これを見し時、夕映少女、イタリアの歌
装幀:芹沢銈介
第二代表作キター。宮崎駿が「風立ちぬ」にて「創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も設計家も同じだ。君の10年を、力を尽くしていきなさい」とカプローニに言わせているが、川端にとってのは十年は(まずは)25歳から35歳くらいだったのかな。版元はなんと創元社! 谷崎潤一郎「春琴抄」がベストセラーに。調べてみたら、創元文庫とかの東京創元社はこの創元社の東京支社の「のれん分け」なんだとか。 芹沢銈介って何者。

14
むすめごころ

竹村書房
1937年7月
むすめごころ、女学生、夢の姉、ナアシツサス、花束の時間、夏海恋、ポオランドの踊子、初雪、姉の和解、七人の妻、絵の匂ひから
おそらく女性向けだか少女向けだかの雑誌に載せていた、身過ぎ世過ぎの短篇集。だが掘り甲斐がある。

15
女性開眼

創元社
1937年12月
装幀:芹沢銈介
長編らしい。文庫で読みたいなー。芹沢銈介は美術館もあるくらい有名な染色工芸家。川端作品には画家とか、「古都」などでも呉服の図案を作る人が出てくるが、付き合いのある人が着想のもとなんだろうな。ところで「雪国」と「女性開眼」同じ装幀家なのに違い過ぎて驚くんですけど。

16
級長の探偵

中央公論社
1937年12月
級長の探偵、開校記念日、弟の秘密、愛犬エリ、夏の宿題、駒鳥温泉、翼にのせて、コスモスの友、学校の花
装幀・挿画:深沢省三、深沢紅子
そそられるタイトル。中公文庫で出してくれんかな。

17
乙女の港

実業之日本社
1938年4月
乙女の港、薔薇の家
装幀:中原淳一
川端に付き纏う代作問題……。個人的には、中原淳一、中里恒子、と組んだメディアミックスと打ち出せばいいと思う。

18
短篇集

砂子屋書房
1939年11月
夏の靴、有難う、髪、朝鮮人、馬美人、ほか29編
凄く見覚えのある版元名。太宰治の「晩年」だ。今も引き継いだ版元があるらしい。

19
正月三ヶ日

新声閣
1940年12月
正月三ヶ日、燕の童女、日雀、母の初恋
装幀:芹沢銈介
あまりハネなかった出版社みたい。

20
寝顔

有光社
1941年7月
高原、温泉宿、伊豆の踊子、虹、寝顔
装幀:小穴隆一
「寝顔」……いい題だな。「掌の小説」に収められた「化粧の天使達」の中の1ページにも満たないスケッチのことかしらん。と最初は思ったが、調べてみたら全集にそれとは別に「寝顔」があるので、そちらだろう。小穴って芥川龍之介の文脈で見たのか。小穴隆一は芥川龍之介の大親友。

21
小説の構成

三笠書房
1941年8月
序、小説とは、小説の本質、主題(テーマ)、ほか13編
「小説の研究」の続編かしらん。

22
愛する人達

新潮社
1941年12月
母の初恋、女の夢、ほくろの手紙、夜のさいころ、燕の童女、夫唱婦和、子供一人、ゆくひと、年の暮
装幀:芹沢銈介
意外と戦前の作品だったんだな。

23
文章

東峰書房
1942年4月
随筆集。四つの机、純粋の声、ほか18編
装幀:林芙美子
思い切った題……。それにしても、林芙美子! 告別式で葬儀委員長を務めた川端が述べた挨拶がふるっている。「……故人は自分の文学生命を保つため、他に対しては、時にはひどいこともしたのでありますが、しかし、あと二、三時間もたてば故人は灰となってしまいます。死は一切の罪悪を消滅させますから、どうか、この際、故人を許してもらいたいと思います」

24
美しい旅

実業之日本社
1942年7月
-
少女小説。「乙女の港」みたいに実業之日本社文庫で出ないのかしら。中原淳一効果がないからか。

25
高原

甲鳥書林
1942年7月
序、秋山居、高原、美人競争、百日堂先生、父母、戸隠の巫女
装幀:堀辰雄
またも堀辰雄!……なんか貧相な装丁だが、戦時下のせいかしらん。

26
女性文章

満州文藝春秋社
1945年1月
序、〈行進ラッパ(大空やよひ)など40編〉
矢継ぎ早出版の川端にしては珍しく3年のブランク。戦時下ゆえ。いかにも大政翼賛会っぽい版元。※書影を見つけられず。全集34巻に収録。

27
朝雲

新潮社
1945年10月
朝雲、故人の園、冬の曲、十七歳、わかめ、小切、父の名、寒風
短編「朝雲」発表は1941年だが、絶品の百合で、戦後初単行本に相応しい爽やかさ。

28

養徳社
1945年11月
伊豆の踊子、夜のさいころ、寝顔、春景色、禽獣
収録作を見るに、戦後すぐの代表作セレクションみたいなものかな。というかその傾向、今後も続く。

29
駒鳥温泉

湘南書房
1945年12月
駒鳥温泉、弟の秘密
装幀:岡秀行。挿画:門屋一雄
副題に「新日本少年少女選書」。かなりうすーい本。

30
日雀

新紀元社
1946年4月
日雀、母の初恋、女学生、燕の童女、十六歳の日記、春景色、抒情歌
装幀:恩地孝四郎
ヒガラ。新紀元社って、ファンタジーオタク向けのあの? 調べたら偶然同名らしい。また、恩地孝四郎はカンディンスキーに影響を受けた抽象絵画だけでなく、装幀も手掛けていたんだとか。すごくシンプルなのに何か感じさせる絵。

31
夕映少女

丹頂書房
1946年4月
むすめごころ、イタリアの歌、童謡、金塊、浅草の姉妹、夕映少女、正月三ヶ日
装幀:石井友太郎
セレクションだが、ここ数作の中では断然美しい本。ようやく物資が回復してきた? ちなみに1977年集英社文庫コバルトシリーズの表紙が美麗なので、書影をもうひとつ。カバーイラストは幻想画家の東逸子。萩尾望都「左手のパズル」の絵を描いた人だ。

32
温泉宿

実業之日本社
1946年7月
温泉宿、父母、死体紹介人
装幀:芹沢銈介
またもセレクション。戦前の本が払底したとか? あるいは以前は当然の習慣だった? まあ出版って水物だし。

33
学校の花

湘南書房
1946年8月
装幀:中原淳一
ハイ来ました売れる表紙。

34
散りぬるを

前田出版社
1946年9月
散りぬるを、浅草の九官鳥
十年前に出したのをまた総題に持ってきて。にしてもコピー本みたいな装幀。

35

四季書房
1947年9月
装幀:猪熊弦一郎。題簽:川端康成
猪熊弦一郎は滝口悠生「死んでいない者」のカバーイラストにも使われたビッグネーム。題簽……和漢の書籍の表紙の左側又は中央に題名を書いて貼りつける短冊型の紙片あるいは布片。また、その題字。

36
一草一花

青龍社
1948年1月
掌の小説を30編収録
装幀家が不明なのが勿体ないくらい絶妙な絵。

37
旅の風景

細川書店
1948年3月
夏の靴、伊豆の踊子、処女の祈り、日雀、金銭の道、燕の童女、帽子事件、父母、有難う、虹
アリモノで本出し過ぎやろ。

38
心の雅歌

細川書店
1948年7月
母、禽獣、雨傘、朝雲、死顔の出来事、イタリアの歌、離婚の子、抒情歌、笑はぬ男、散りぬるを
アリモノで本出し過ぎやろ part2。細川書店と組んでそういう小遣い稼ぎか。

39
翼の抒情歌

東光出版社
1948年11月
翼の抒情歌、兄の遺曲、駒鳥温泉、朝雲、バラの家
「純情少女小説」という副題。

40
白い満月

ロッテ出版社
1948年11月
夜のさいころ、イタリアの歌、百日堂先生、童謡、金塊、白い満月、霰、浅草の姉妹
装幀:岡村夫二
これは味のあるいい装幀! 岡村夫二という人、太宰治、織田作之助、尾崎一雄、三島由紀夫なども手掛けた装幀家らしい。

41
二十歳

文藝春秋新社
1948年11月
二十歳、温泉宿、死者の書、神います、化粧、母の眼、指環、油、朝雲、篝火
装幀:恩地孝四郎
なんでもない気づきだが、右横書きと左横書きが混在している。

42
花日記

ヒマワリ社
1948年12月
装幀・口絵:中原淳一
中原淳一もさることながら、正方形のサイズ感もいいね。

43
雪国 完結版

創元社
1948年12月
-
ネチネチ書き続けて、ようやく終え、同じ版元から完結版を。

44
夜のさいころ

トッパン
1949年1月
母の初恋、夕映少女、夜のさいころ、ゆくひと、騎士の死、年の暮、寝顔
装幀:鈴木道明
※書影を発見できなかったので、翌1950年日本ペンクラブ会長として広島を訪れたところ。

45
陽炎の丘

東光出版社
1949年6月
陽炎の丘、椿、翼にのせて、コスモスの花
装幀・挿画:大槻さだを
「翼の抒情歌」と同じ版元で少女小説を。

46
哀愁

細川書店
1949年12月
哀愁、反橋、しぐれ、住吉、ほか16編
最高傑作と言う人もいる「反橋」シリーズ3部作。もとは「手紙」という題だったり、総題にはなっていなかったり、したのだな。共通の書き出し〈あなたはどこにおいでなのでせうか〉が、まさか死の直前に「隅田川」で4部作になるとは、作者様でも思うめえ。

47
浅草物語

中央公論社
1950年8月
浅草紅団、浅草日記、浅草の姉妹、浅草の九官鳥、夜のさいころ、寝顔、虹
装幀・口絵:岡田謙三
浅草ものセレクション。

48
川端康成文藝童話集

三十書房
1950年9月
弟のひみつ、虫の声、伊豆湯が島、聾学校、級長の探偵、ざくろ、つばき、ばらの家
装幀:與田準一
※書影を発見できなかったので、何の脈絡もないけど伊藤初代の写真を。

49
新文章読本

あかね書房
1950年11月
新文章読本、綴方について、綴方の話
綴り方という呼び方はいつまであったんだろう。

50
歌劇学校

ひまわり社
1950年12月
装幀・挿画:中原淳一
ひまわり社は中原淳一が創立した出版社。先行する「それいゆ」に続く少女版雑誌として「ひまわり」。いいね。元タカラジェンヌの平山宮子が代筆し、その息子平山城児が大学教授になって川端の代筆について研究し、さらにその息子が作家の平山瑞穂。

51
少年

目黒書店
1951年4月
十六歳の日記、伊豆の踊子、少年
装幀:岡鹿之助
ザ・問題作。文庫でこれを読める2022年に感謝。その筋のみなさま案件ですよー。三島由紀夫、その筋に対する嗅覚ゆえに私淑したのかとも邪推。帯に〈川端文学の精髄!! 青春…… 旅愁……… 抒情…………〉とあるが、この三点リーダーの使い方が実に「アドニス」っぽくて雰囲気ある。

52
舞姫

朝日新聞社
1951年7月
装幀:岡鹿之助。題字:高橋錦吉
森鴎外じゃないほうの。昼ドラ展開の通俗小説。

‬53
千羽鶴

筑摩書房
1952年2月
山の音、千羽鶴
装幀・題簽:小林古径
日本画の重鎮・小林古径による装幀・題簽。結構好き。

54
万葉姉妹

ポプラ社
1952年8月
装幀(カバー絵):松本昌美。挿画:花房英樹
ポプラ社は1947年創業というから新興。この絵柄でルパン、乱歩を、その後ズッコケ三人組、かいけつゾロリなど。川端は少し付き合いがあったんだな。

55
再婚者

三笠書房
1953年2月
再婚者、さざん花、白雪、お正月、夢、夏と冬、雨の日、冬の半日、首輪、再会
装幀:藤岡光一
「掌の小説」で一編、「川端康成初恋小説集」で一編(川端流ドリーム小説)読んだだけで、他は未読。ちょっと気になる短篇集だな。

56
日も月も

中央公論社
1953年5月
装幀:太田聴雨
1957年に角川文庫入りして以来文庫なし。素敵な装幀。太田聴雨は日本画。和服+望遠鏡とか和服+種痘とか、フェティッシュな題材の美人画も気になる。というか川端が好きそう。

57
花と小鈴

ポプラ社
1953年7月
装幀(カバー絵):松本昌美。挿画:花房英樹
ポプラ社との付き合い第2にして最後。

58
川のある下町の話

新潮社
1954年1月
装幀:阿部龍慶
長らく離れていた新潮社との付き合いが、再会したのかしらん。ともあれ新潮社は一刻も早く新装版文庫を出すべし。代作だからややこしいのかな。

59
山の音

筑摩書房
1954年4月
装幀・題簽:山本丘人
5年かけて完結。やはり代表作ほど作り込むんだな。

60
呉清源棋談・名人

文藝春秋新社
1954年7月
呉清源棋談、名人
題簽:呉清源
〈異色作である!〉と作者自身が熱く語っている帯。

61
童謡

東方社
1954年
童謡、夏の靴、春景色、ほか13編
装幀:福田豊四郎。題簽:川端康成
同じく作者自身の題簽である「虹」でもそうだが、「川」なんだか「小」なんだか。どうでもいいけど。

62
伊豆の旅

中央公論社
1954年10月
伊豆序説、伊豆温泉記、伊豆湯ヶ島、正月三ヶ日、椿、夏の靴、有難う、処女の祈り、伊豆の踊子、伊豆の帰り、伊豆の思ひ出
装幀:恩地孝四郎、高畠達四郎
伊豆盛り。

63
虹いくたび

河出書房
1955年1月
装幀:東山魁夷
初・東山魁夷! さぞかしとても可憐な本だろう。

64
東京の人

新潮社
1955年1月
第1回から第148回分
装幀:金島桂華
佐藤碧子の代作。川端の長編はだいたいこの人なんだな。そしてこの佐藤碧子、菊池寛の愛人にして秘書にしてゴーストライターなんだとか。「新思潮」ズブズブやん。

65
親友

偕成社
1955年3月
親友、かげろうの丘
装幀:山中冬児。カバー絵・挿画:江川みさお
代作疑惑アヤシイ……。カバー絵は、玉井徳太郎なんだか、江川みさおなんだか、よくわからなかった。

‬66
みづうみ

新潮社
1955年4月
装幀:徳岡神泉。題簽:町春草
これを川端の神髄としたい。25から35歳までが第一の十年、45から55歳が多作期(ゴーストあり)にして権力獲得期、その後55から65歳まで睡眠薬でヘロヘロになりながら第二の十年で魔界に近接したのだと思う。装幀も禍々しくてよい。

67
続東京の人

新潮社
1955年5月
第149回から第272回分を収録
装幀:金島桂華
※映画場面写真。

68
たまゆら

角川書店
1955年7月
水月、北の海から、離合、明月、あちらこちらで、横町、故郷、小春日、あやめの歌、たまゆら
装幀:高橋忠彌
角川小説新書というレーベル。高橋忠彌のこの絵、好き。

69
燕の童女

筑摩書房
1955年9月
母の初恋、ほくろの手紙、燕の童女、夫唱婦和、年の暮、再婚者
装幀:稗田一穂
吉田以外にも一穂っているんだと検索してみたら、めっちゃええやん稗田一穂の絵!

70
続々東京の人

新潮社
1955年10月
第273回から第399回分
装幀:金島桂華
※プリティ川端。

71
完結東京の人

新潮社
1955年12月
第400回から第505回分
装幀:金島桂華
※プリティ川端2。

72
女であること(一)

新潮社
1956年10月
第1回から第104回分
装幀:勅使河原霞。挿画:森田元子
佐藤碧子の代作。

73
女であること(二)

新潮社
1957年2月
第105回から第251回分
装幀:勅使河原霞。挿画:森田元子
※山口百恵の隣で嬉しそうな川端。

74
富士の初雪

新潮社
1958年4月
あの国この国、並木、自然、雨だれ、岩に菊、富士の初雪、無言、夫のしない、弓浦市、船遊女
装幀:町春草
弩級の恐怖小説「弓浦市」。

75
風のある道

角川書店
1959年7月
装幀:堀文子。題簽:町春草
映画にもなった作品だが、文庫化すらしていない。代作だからできないのか。

76
眠れる美女

新潮社
1961年11月
-
神髄。実は三島由紀夫が……という噂もあるけれど、内容が川端に似合いすぎていて、もう不可分。

77
古都

新潮社
1962年6月
装幀:石井敦子
遂にご本人の写真が! 佐藤優スタイル! でもいい小説である。

78
美しさと哀しみと

中央公論社
1965年2月
装幀・挿画:加山又造
帯文は美しく書きすぎで、その実は通俗小説、しかも結構下世話な。なにせ口説き文句が、イルカってくすぐったがりらしいですけどあなたはどうですか、だもの。

79
片腕

新潮社
1965年10月
片腕、女の手、生命の樹、生きている方に、さとがえり、ほか17編
装幀:東山魁夷
神髄。むしろその他の作品を探して読み比べてみたいところ。長編は代作が多いが、短編ってどうだったんだろう。

80
たまゆら(上)

新潮社
1965年12月
題簽:川端康成
1951年の短編とは違う、連続テレビ小説の原作。(上)って?

81
落花流水

新潮社
1966年5月
落花流水(行燈、伊豆行、枕の草子、秋風高原)、美智子妃殿下、ほか22編
装幀:山本丘人
帯に〈戦後初めて出版される巨匠の随想集〉と。随想的短編がちらほらあるからちょっとびっくりした。

82
月下の門

大和書房
1967年12月
月下の門、鎌倉の書斎から、ほか20編
解説:島村利正
帯に〈随想、小品、短編〉。この表現のほうがしっくりくるね。

83
川端康成少年少女小説集

中央公論社
1968年12月
級長の探偵、開校記念日、弟の秘密、愛犬エリ、夏の宿題、駒鳥温泉、翼にのせて、つばき、ばらの家、男と女と荷車、夏の靴、雨傘
装幀:深沢紅子。装画:深沢省三。題字:深沢武蔵
帯に〈ノーベル章にかがやく文豪が愛と詩情をこめてつづったいとしごたちへのプレゼント〉威光を小学生にも販促! 1968年10月17日が受賞決定日なので。

84
美しい日本の私―その序説

講談社
1969年3月
装幀(カバー写真):濱谷浩
講談社現代新書で。思えば遠くへ来たものだ。

85
美の存在と発見

毎日新聞社
1969年7月
装幀:杉山寧
帯に〈ハワイ大学での特別講義全文〉。素朴な感想だが疲れたんだろうな。

86
定本雪国

牧羊社
1971年8月
装幀・挿画:岡鹿之助。題簽:川端康成
その後、1972年4月16日、自殺。

87
たんぽぽ

新潮社
1972年9月
装幀:東山魁夷
1964年から断続的連載。未完。慌てて出版。

88
ある人の生のなかに

河出書房新社
1972年9月
装幀:加山又造
1955年から断続的連載。未完。

89
川端康成青春小説集

ワグナー出版
1972年11月
花の湖、舞踊、鉄の梯子、父母への手紙、女学生、翼の抒情歌、ポオランドの踊子、踊子と異国人の母、ほか随筆7編
乗っかり。

90
雪国抄

ほるぷ出版
1972年12月
-
本人が本文を毛筆で書いた和綴じ本。途中までらしいが。

‬91
日本の美のこころ

講談社
1973年1月
秋風高原、美智子妃殿下、信濃の話、ほか36編
装幀:東山魁夷
セレクション。

92
竹の声桃の花

新潮社
1973年1月
隅田川、竹の声桃の花、髪は長く、友人の妻、ほか25編
装幀:山本丘人
受賞後に書いたエッセイまとめ。

93
一草一花

毎日新聞社
1973年10月
-
エッセイ集。

94
天授の子

新潮社
1975年6月
故園、東海道、感傷の塔、天授の子
装幀:東山魁夷
今でこそ文庫で手軽に読めるが、当時はこの出版自体が事件だったんだろうな。

95
婚礼と葬礼

創林社
1978年4月
ちよ、生命保険、非常、彼女の盛装、霰、ほか12編
「非常」は発表後単行本に収録されていたのか? 初か?

96
海の火祭

新潮社
1979年5月
装幀:山高登
1927年連載開始の初長編がここまで書籍化されていなかったとは。俄かに気になる。

97
舞姫の暦

毎日新聞社
1979年5月
舞姫の暦、母の読める
装幀:山高登
30代の作品でこれも初書籍化。山高登の装幀が新鮮。……wikipediaではここまで。202303

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