確定申告の罠!罠!罠! これからされる方の参考に
行ってきたよ、確定申告。地元の税務署でもう受け付けていたからね。
確定申告、不安で眠れなかったから、とにかく早く済ませたかったんだ。
税務署のフロアには、「令和5年分 確定申告の手引き」というのが置かれていたけど、その手引き書自体が分厚く、小さな文字でわけわからない専門的なことがいっぱい書かれている。
「マイナンバーカードを使って、スマホやパソコンでe-Tax!」
と表紙には書いてあるけど、とても簡単にできるとは思えない。手引きを読むのも面倒なので、結局、税務署に出向いて、申告の指導をしてもらうことになる。退職老人だから、時間だけはあるからね。
俺はさあ、アタマ使いたくないわけ。
会社を定年退職して、これでやっとアタマ使わなくてよくなった、と思った。
あとは死ぬまでボーっとしてりゃいいんだ、と。
しかし、サラリーマンの老後にたちふさがるのが確定申告ですよ。
ずっとサラリーマンやってると、確定申告なんて無縁だったからね。
しかもこれが、複雑怪奇で・・。
それについては、以前「会社を定年退職して初めて知ったこの世の罠」という記事に書いたけど。
サラリーマン時代以上に、アタマを使わなければならなくなるなんて、ほんと思ってもみなかった。
わたしのようにサラリーマンだけずっとやってきた人間は、面倒なことは全部総務部がやってくれてたから、その方面ではボーっとしててよかった。
ところが、会社をやめると、その方面にいくつも罠が待ち受けている。
こうしたことは、マスコミも教えてくれない。
マスコミの記事を書いているのは、しょせん現役サラリーマンで、老後の現実を知らないからだ。
たいがいのサラリーマンは、会社をやめて、年金もらえるようになれば、税金とかそういう面倒なことはなくなるんだろう、と思ってると思う。
逆なんだよ。面倒が全部自分に降りかかってきて、だれも助けてくれない。
収入がなければ税金はとられないだろう、と思ってると甘い。わたしはそれで痛い目に合った。
収入がなくても、自治体の役所にそれを伝えておかないと、地方税などが余分にかかり、もらえる給付金がもらえない。
年金は国からもらうんだから、面倒がないだろう、と思うが、そうではない。
年金でも源泉徴収される場合があり、確定申告しないと損をする場合がある。それは必ずしも年金の額に拠らないーー税務署に聞いても「いちがいに言えない」としか答えてくれないんだ。
そして、国の出先機関の税務署に確定申告していれば、自治体の市税事務所には申告しなくていいーーふつうはそのはずだけど、それも「いちがいに言えない」と言われたりする。
つまり、国の税務署、自治体、年金機構、ほかにもあるかもしれんが、それらが、それぞれ別に動いていて、しかも共通して「スキあらば税金をとる」「できるだけこっちからは払いたくない」という意思で動いている。
むこうは大勢であなたを狙い、こちらは自分ひとり。ひとりで、手ごわい全組織を相手にしなければならない。
要するに、徴税側は、
「老後、税金のことを考えず、ボーっと暮らしていても、あなたが罰せられることはありません。ただまあ、知らないうちに、あなたが損していることは、よくありますけどね。あなたが損をしていても、だれもそれを指摘してくれません。それをあなたに知らせる機関はないんです。まあ、せいぜいボーっとしててください」
という態度なわけです。
これは、「ボーっとしていると罰せられる」のと同じでしょう。心やすらかに老後が送れないようになっている。
俺はさあ、税金が払いたくないわけじゃないんだ。
面倒をなくしてくれ、と言いたいだけ。
老人だから、もうアタマもボケている。難しいこと考えたくないし、考えられない。
でも、貧乏だから、1円でも損したくない。
せっかくマイナンバーカードつくっても、なんの役にもたってない(のちに述べるように混乱をふやしている)。
ボーっと老後を送らせてくれ! 言いたいのはそれだけ!
確定申告の罠 実践編
以下、実際にきのう確定申告に行って、わたしが出会った「罠」を具体的に紹介する。
これから確定申告に行く人の参考になるかもしれないから。
あらかじめ言っておくと、以下は、税務署の担当の人たちへのクレームではありません。税務署の人たちは真面目に熱心にやってくれてました。税の仕組みの問題です。
第1のトラップ LINE予約
源泉徴収票や領収書など、書類をそろえて、税務署を訪ねた。
会場の入り口に、数名の人が待っている。
わたしが列の最後に並ぼうとすると、受付の人から、
「えっと、LINEで予約されてましたか?」
と聞かれた。
これが最初のトラップですね。
「LINE? いや予約してません(LINEみたいな個人情報漏れ放題のやつ、怖くて入れられるかい)」
「そうですか、LINEで予約されていない・・と」
受付の人、少し考えて、
「でも、大丈夫です」
(大丈夫なんかい!)
と、心の中でつっこんだ。最初のトラップ、なんとか通過。
10分ほど待って、申告会場に入ることができた。
第2のトラップ 識別番号
で、申告会場に入ると、係の人から、
「以前にここで確定申告したこと、ありますか?」
と聞かれた。
「ええ、あります。あれは大変でしたねえ、わたし、何も知らなかったもんで、なにしろずっとサラリーマンで、アハハ・・」
「以前、確定申告されたなら、あなたの識別番号があるはずです。識別番号を教えてください」
「識別番号・・」
(そういえば、そんなものをもらったような気がする・・)
「えっと・・マイナンバーカードならありますが」
「マイナンバーカードは関係ないんです。識別番号、わかりませんか?」
「すみません、家に戻れば書類が残ってると思うけど、いまわかりません。出直しますか」
係の人、少し考えて、
「でも、大丈夫です」
(大丈夫なんかい!)
第3のトラップ パスワード
わたしの住所と生年月日をPCに入れると、識別番号がわかったようだ。
「識別番号、わかりました。よかったですね」
「よかった、よかった」
「この識別番号を、まずプリントしますね」
識別番号が記されたプリントを渡された。
「えっと、スマホはお持ちですか?」
「ええ、もってます」
「いまは、スマホで簡単に確定申告できるんです。ここでお教えしますから、今回はあなたのスマホで入力手続きしてみましょう」
「お、いいですね。ナウいですね」
以前は、PC画面で入力していたが、今回は自分のスマホで入力だ。
「では、こちらへ」
と、スマホ入力教育担当のところに案内される。
「では、スマホで入力していきましょう。まずこのQRコードを読み込んでーー」
QRコードをスマホで読み取ると、確定申告入力画面が現れる。
「それでは、識別番号は?」
「あ、このプリントにあります」
「あ、なるほど。ちょっとスマホを拝借」
と担当の人がわたしの識別番号をスマホに入力する。
「はい、ではここに、あなたのパスワードを入れてください」
「パスワード?」
「識別番号を付与したときに、パスワードを決めたはずですが」
出た、第3のトラップだ。
「パスワード・・マイナンバーカードならあるんですが」
「マイナンバーカードは関係ありません。識別番号に紐づけたパスワードです」
「すみません、忘れました」
「・・そうですか・・」
「出直しますか」
「でも、大丈夫です」
(大丈夫なんかい!)
「マイナンバーカードを使って確認もできるし、パスワードの再交付もできるんですが」
面倒になりそうだったので、
「パスワードにかすかな記憶があるんで、ためしてもいいですか?」
とわたしが言うと、
「あ、いいですよ。パスワードを間違っても、それ以降の入力が不能にならないと聞いてます」
で、かすかに記憶にあるパスワードをためしてみると、さいわい当たって、無事トラップを通過できた。
第4のトラップ 小画面
で、収入項目を入力していく。
わたしの場合、若干のアルバイト代と、非常に小さな「配当」があった。
いずれも少額だが、それでも源泉徴収されているので、それが戻ってくるのではないかと期待だ。
しかし、この「配当」が、次のトラップだった。
配当がトラップというか・・
「あ、配当があるんですね」
「まあ、配当といえるほどの金額でもないんですけどね」
「いや、こういう項目の入力があると、画面が小さくなるんですよ」
「画面が小さくなる?」
どうも、「普通の項目」だけだと、スマホ用に最適化された見やすい入力画面でいけるのだが、イレギュラーな項目が混じると、PCのサイトがそのままスマホ画面に縮小された、小さな画面になる。言ってることわかる?
わたしのスマホは、それ自体が小さい。それに小さな文字の画面が映るので、何が書いてあるのか読めないのだ。指で拡大しながら読むのだが、長文が多いから、やたら時間がかかる。
「いやー、老眼鏡をもってくればよかった」
とわたし。
しかも、「配当」という項目には、質問事項が多い。「令和何年のナントカ条項が適用されますか」的な。担当の人も、すぐには意味がわからないものが多いらしく、周りの人に聞くなど、苦戦している。
次のページに進もうとしたら、「未記入項目があります」とすぐ警告が出る。その未記入項目がどこにあるか、探すのも大変だ。
2人で顔を寄せ合って小さなスマホ画面と格闘していると、双方だんだん疲れてきて、もうどうでもいい、という感じになってきた。
それでも、なんとかこの面倒な入力項目が終わってくれた。
第5のトラップ 医療費控除
で、控除の項目に進み、医療費の入力になった。
それについては、わたしから税務署に聞きたいことがあった。
わたしは国民健康保険に入っているのだが、先日うちに届いた「国保だより」に、
「マイナポータルから、医療費通知書の情報を閲覧することができます。医療費控除の申告手続きに使用できます」
と書いてあったのだ。
実際、そこにあったQRコードをスマホで読み取って、マイナンバーカードの該当サイトに行くと、たしかにわたしが使った医療費の記録が載っていた。
ところが、その金額が、わたしが保管している領収書の金額と、食い違うのだ。しかも、微妙に・・
わたしは、マイナで記録されている医療費と、わたしの手もとに残っている領収書の医療費の対照表をつくっていた。
それを見せながら、
「ほら、マイナで3740円になってるのが、わたしの領収書では3680円なんです。微妙に違うでしょう。全部そうなんです。数十円から数百円違う。しかも、高かったり、安かったり。この食い違いはなんなのでしょうか。どっちを信じて申告すればいいんですか?」
と聞いた。
これ、ほかの人はどうなのだろう。
この現象がみんなに起こっているとすれば、全国の確定申告会場で大混乱が起こっているはずだが・・
しかし、担当の人は、
「へー、初耳ですね」
という。ちょっと待っててください、と、税務署のべつの職員を呼んできた。
その職員に改めて説明すると、また、ちょっと待っててください、とどっか行った。
で、戻ってくると、
「マイナンバーカードに記録されてる数字でも、領収書の数字でも、どちらでもいいです」
という。
「どちらでもいいんですか? なんかいい加減な・・気持ち悪くないですか」
というと、その職員も黙ってしまう。
職員を困らせるのは本意ではないし、いずれにしても数字の食い違いはわずかだから、スルーしたのだが、1件ずつはわずかの違いでも、累積すれば、控除対象になったりならなかったりする場合があるのではないだろうか。
それより、なぜ(わたしだけ?)こんな食い違いが生じるのか、理由を知りたかったのだが、結局わからずじまいであった。
*(2月21日追記)この件、病院に聞いてみると、「診察料に入力ミスがあり、帳尻を合わせるために、のちの数字までいじった」「そのときに言えばよかったです」とのことでした。入力ミスと帳尻合わせは、わたしもサラリーマン時代によくあったので、責めません。
最後のトラップ
長かった・・。
時間にして、正味30分くらいだったと思うけれど、とても長く感じた。
終わったとき、わたしは担当の人に言った。
「スマホで簡単に申告できます、というけれど、とても自分ひとりで簡単にできる気はしませんよ」
「そうですね。まあ、たいへんですよね」
「来年もよろしくお願いします」
結果、多少の還付金は確保できた。
苦労の甲斐はあったと言うべきだろう。
ぐったり疲れた。わたしは税務署の近くの喫茶店でコーヒーでも飲むことにした。
喫茶店でコーヒーなんて、貧乏老人のわたしにはめったにないぜいたくだ。
(でも、おカネが戻ってくるし)
と思って、テーブル上のコーヒーを持ち上げた瞬間、手がすべってカップを落とし、床にコーヒーをぶちまけてしまった。
さいわいカップは割れず、やけどなどもなかったのだが、店員さんの冷たい視線を浴びながら、這いつくばって床をナフキンで拭くはめになった。
確定申告で、脳みそだけでなく、全身が疲れていたのだろう。自分が思っている以上に憔悴していた。車を運転していたら、事故ってたかもしれない。
確定申告で、わずかの還付金を得て、そのかわりコーヒー1杯分が無駄になった。
喫茶店を出てスーパーに行くと、チョコレートを売っていて、そうかきょうはバレンタインか、と初めて気づいた。
(終わり)
<参考>
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