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【歌舞伎】六月大歌舞伎(傾城反魂香・義経千本桜など)

 予算等もあり、私はあまり歌舞伎座には行かないのですが、チラシを見ていて「これは観てみたい」と思う作品があり(後述します)、結局、六月大歌舞伎に行って来ました。メモを残します。

■傾城反魂香
(1)傾城反魂香とは
 『傾城反魂香』は、宝永5(1708)年に大阪で初上演された全三段の時代物浄瑠璃です(筋書より)。近松門左衛門が原作となっています。
 今回、①「土佐将監閑居の場」と②「浮世又平住家の場」が上演されました。

(2)土佐将監閑居の場
 ①は「吃音ゆえに土佐の名字を得ることが出来ない又平と女房おとくの悲哀(筋書より)」とあり、吃りの又平、通称吃又(どもまた)と呼ばれている場のようです。今回は、又平を市川中車さん、おとくを中村壱太郎さんが演じられました。喜劇性も持たせてあったように思います。有名な場面であることもあり、鑑賞出来て良かったです。

(3)浮世又平住家の場(ネタバレあり
 さて、私が見てみたいと思ったのは、②「浮世又平住家の場」でした。
 歌舞伎美人のホームページには、「又平が描いた大津絵の人物たちが次々と抜け出して活躍する賑やかな演出にご期待ください。」とあります。
 もう少し詳しく書くと、又平は絵師で、絵の道で功を立てようとしています。そして、②では、又平が描いた大津絵の登場人物が次々と抜け出し、又平とおとくを助けるという設定です。

 筋書によると、昭和45(1970)年「春秋会」以来53年ぶりの上演だそうです。
 竹本による演奏の題名も「戯場花名画彩色(かぶきのはなめいがのいろどり)」とあり、「おおっ!」と思いました。

 次に、舞台進行についてふれます(ネタバレあり)。又平の家には、大津絵が4枚、離れて1枚立て掛けられています。そして、不破伴左衛門率いる追手が押しかけて来ます。
 そこで、大津絵が反転し、まず「奴」が抜け出し、立廻りを行い、絵に戻って行きます。次に「藤娘」「鯰(ナマズ)の精」「座頭」と続き、最後は「鬼の観念仏」です。特に、鯰の場面は「瓢箪鯰」の大津絵から「鯰の精」が抜け出し、鯰の髭を黒髪で表現する演出に感激しました。

 私は、物語の登場人物が絵(場合によっては本)から飛び出して活躍するような、若干ファンタジーが入ったストーリーが好きなようです。
 他方で、こうした想像の話は、入り込み過ぎてはいけないように思う部分もありました。現実世界と仮想世界の関係上の問題とも言えましょうか。「おっと危ない!」と思いつつ、大変楽しむことが出来た時間でした。

 長くなりましたので、以下は、少しずつ記載します。
■児雷也
 忍者のジライヤは、青少年向けの作品で出て来ることもありますが、歌舞伎(はたまたその先は中国の古い話)に源流があるようです。
 中村芝翫さんの演じる児雷也は、格好良く決まっているように思いました。また、蝦蟇は私が想像していたよりは小さめでしたが、中に人間が入り、元気よく飛び跳ねていました。
 筋書によると、蝦蟇(蛙)を操る児雷也、なめくじの妖術を使う児雷也の妻の綱手、大蛇の術を使う大蛇丸が、話の中心になるようです。
 今回、児雷也と綱手の立廻りの場面がありました。愛する人との立廻りですが、原作者の河竹黙阿弥が創作した場面か、もっと源流を遡るのか少し気になりました。今回は、一幕でしたが、もう少し追ってみたい作品です。

■扇獅子
 舞踊物で、日本橋界隈の四季の風物を描いています。芸者衆が清元にあわせて踊ります。筋書等で、三味線音楽には①浄瑠璃といわれる劇的な語りものと、②メロディーを重視する唄ものの二つのジャンルがあり、今回の清元は浄瑠璃の一種ということでした。
 まだまだ舞踊物や音楽には慣れていませんが、少しずつ学んでいきたいです。

■義経千本桜
 『義経千本桜』三段目にあたる『木の実』『小金吾討死』『すし屋』、「四の切」と言われる四段目の『川連法眼館』が上演されました。
 三段目のいがみの権太を片岡仁左衛門さん、四段目の狐忠信を尾上松也さんが演じられました。昨年私は、尾上菊之助さんが『義経千本桜』で三役こなすのを見ていて、型の違い、演出の違い、演じる人による違いを感じることが出来ました。
 上方歌舞伎と江戸歌舞伎の違いなど、調べて書いてみたいことは色々あるのですが、長くなるので今回は控えます。
 初心者の私が恐縮ですが、仁左衛門さんの権太は、円熟味(のようなもの)が感じられました。また、小金吾は今回片岡千之助さんでしたが、傷つきながら戦う姿に悲壮感や繊細さを感じました。昨年観た中村萬太郎さんの小金吾は元気いっぱいだった感じがして、演じる人によってこうも違うのかと感じた次第です。

 少しリンクなどを貼るかもしれませんが、本日は以上です。

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