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【美術館・博物館】やまと絵-受け継がれる王朝の美-

 2023年11月3日(金)、上野の東京国立博物館(平成館)に、特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」を観に行きました。
 フォローさせて頂いている海人さん(下のリンクです)や、皆さんの記事を読みつつ、楽しみにしていた展覧会でした。以下、メモを残します。

■展覧会概要

会期:2023年10月11日(水)~12月4日(月)
場所:東京国立博物館・平成館
(※1)会期中に一部作品の展示替え(巻替え・場面替えを含む)あり。
(※2)本館では、関連企画として特集展示「近世のやまと絵―王朝美の伝統と継承―」が開催されています。

■「やまと絵」について

(1)「やまと絵」とは何か

 これまでいった美術館で、「やまと絵」についての記載を見かけたことは何度かあったのですが、あまりきちんと考えてきませんでした。今回、図録から引用してみました。

 やまと絵は平安時代前期、唐絵と呼ばれる中国由来の絵画に学びながら成立し、独自の発展を遂げてきた世俗画(仏画などの宗教画ではない絵画)のことを指す。中国を舞台とする唐絵からえに対し、日本の風景、風物を描く絵画のことで、後に水墨画を中心とする新しい技法、理念をもつ中国絵画、すなわち漢画かんががもたらされると、それ以外の伝統的様式に立つ着色画を主にやまと絵と呼ぶようになる。

図録・土屋貴裕『やまと絵の成立と展開』の冒頭より

 図録とは違った本などからも引用してみます。

 九世紀末、唐で起こった内乱をきっかけに日本は遣唐使を廃止するなど、中国と距離を置くようになります。
 そして外来文化が入りにくい閉じた環境で中国の影響から脱した独自の表現方法、いわゆる国風文化・王朝文化の時代に移ります。
 この時代に、それまで中国様式だった美術は、日本人好みの「和様」に洗練されていくことになりました。<中略>
 この頃の優雅な「王朝文化」のスタイルこそが、その後も、日本美術の根底に流れていくことになります。

秋元雄史『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』44頁より

 やまと絵とは、日本における日本における伝統的画題・主題のことを指します。倭絵、倭画、和絵、大和絵とも表記します。
 やまと絵は、
①中国美術(絵画)との対概念によって成り立つ
②時代によって概念が変化する
のです。

東京国立博物館HP・マンガで分かる「やまと絵」1話より

 平安時代以降、千年にわたり、日本美術の根底に流れる概念であり、時代によって変化する部分もあり、一義的に定義するのは難しいようです。切り口は異なりますが、「奇想の系譜」のように、流れを辿ることができる一つの概念のように思いました。

(2)「やまと絵」の特徴

 次に、「やまと絵」の特徴について調べてみました。時代によって異なり、あまり風呂敷を広げすぎても仕方がないので、平安時代の「やまと絵」について引用・記載してみます。

 日本の自然や風俗をやわらかな線と華やかな色で描くのが特徴で、<以下省略>

秋元雄史『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』61頁より

 こうした「線」や「色」の使い方などで、直観的に理解出来ればよいのですが、図録や土屋貴裕さんが書かれた本(『もっと知りたい やまと絵』)を読むと、他には「主題」や「構図」が取り上げられていました。
 誤ったことを書くとまずいので、少しだけにします。「構図」としては、「やまと絵」は「唐絵」に比して、①画面の奥行に無頓着であったり、②モチーフを散財させたりしている点に特徴があるようです。

 「やまと絵」とは何か、私も何となくは分かるのですが、「この絵は、「やまと絵」か?」と問われると、すぐには答えられないように思います。
 もう少し、美術館に足を運んだ際に意識してみたり、美術関係の本を読んだりして、理解を深めていきたいと思います。

■展覧会の見どころ

(1)会期の区分け

 会期中に一部作品の展示替え(巻替え・場面替えを含む)があり、期間は大きく4つに分かれています。
 ①10/11(水)~22(日)
 ②10/24(火)~11/5(日)
 ③11/7(火)~19(日)
 ④11/21(火)~12/3(日) 
 私が行ったのは、11月3日(金)でしたので、②の期間です。

(2)見どころ

 ②の期間には、国宝の神護寺三像(「源頼朝」「平重盛」「藤原光能」の肖像画)が展示され、私も見ることが出来ました。各幅1メートルを超える大作で、離れて見ることも出来、それほど混雑していませんでした。

 四大絵巻(「 源氏物語絵巻」「 信貴山縁起絵巻」「 伴大納言絵巻」「鳥獣戯画」)が揃うのは、①の期間です。
 ②の期間には、「 伴大納言絵巻」が無く、「鳥獣戯画」は乙巻でした。「鳥獣戯画」で、蛙や兎が出て来る有名な場面が出て来るのは甲巻で、四大絵巻が揃い、甲巻も見られる①の期間を選ぶ人も多かったと思います。
 展示作品に詳しくなると、「この作品(のこの場面)を見たい!」と思う気持ちも増えてくるように思います。私はまだ初心者で、そこまでのこだわりは無かったのですが、今回少しだけ感じました。

 三大装飾経そうしょくきょう(「久能寺経」「平家納経」「慈光寺経」)が揃うのは、③④の期間のようです。
 私は、②の期間に「平家納経」の一部を見たのですが、そもそも、お経に荘厳な絵が描かれた「装飾経」なるものがあることを初めて知りました。

■その他

(1)個人的に印象に残った展示

 個人的には、「地獄草紙」「餓鬼草紙」「病草紙」など、人々の苦しみや生活感の伝わる展示が、印象に残りました。また、時代ごとに作品を追っていくので、前半の展示は古い作品が多く、後半の展示の方が、自分の現代の感覚(美意識)に近づいて来る感じもして、楽しむことが出来ました。

(2)信貴山しぎさん縁起絵巻(飛倉巻とびくらのまき

修行僧・命連が托鉢のため法力で飛ばした鉄鉢を、長者が無視したため、法力の宿った鉄鉢が米蔵ごと宙に浮かせ、命連のもとに届けようとしている場面

秋元雄史『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』71頁より

 写真はアップ出来ませんが、宙に浮かぶ鉄鉢や米蔵を見上げて驚く人々の表情が、生き生きと描かれていました。私は、「絵心」というものがまだよく分からないのですが、その「人々の表情」に、子供の頃、絵が上手い友達が描く「人々の表情」と重ねて見る部分がありました。写実的な作品も面白いですが、「生き生きと描く」というのも、面白いなと思います。

(3)近世のやまと絵

 「出品目録」を見ると、平成館の展示は、主に室町時代までの「やまと絵」のようでした。近世の作品は、関連企画として「本館」で展示されていました。こちらもおススメです。

 今回の記事も、まだまだ初心者で調べるものが多く、「やまと絵」とは何か、概念の整理のような記載が中心となってしまいました。しかし、四季絵・月次絵・名所絵など、まだまだ深堀り出来そうなところも多く、「やまと絵」という視点は、これからも大切にしていきたいと思います。

 本日は以上です。

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