nozawa

投稿チャレンジ 小説などです youtube:https://youtube.com…

nozawa

投稿チャレンジ 小説などです youtube:https://youtube.com/@user-kb9zg9hl4r

マガジン

  • 掌編

    とことん投稿チャレンジ:掌編

最近の記事

舳倉島へ行った時の事

2015年に五島列島へ一人旅をした事を期に、離島の旅に目覚めつつあった私は、地元である北陸にも上陸できる有人離島はないかと探した。 ないよな……聞いた事もないしな……と思いながらネットで検索すると、あった。 日本海にぽつりと浮かぶ島、その名も舳倉島。 海の幸に恵まれ、海女の島として知られ、350種類以上の渡り鳥が羽を休めに来る島。 島内は歩いて2時間ほどで一周ができる広さ。民宿が2つ、売店などはない。 100人程の人々が定住しており、海女の方達が漁をする春や夏には本土から来る

    • 私のライオン(即興小説トレーニング)

       円形闘技場の中にライオンが入場し、観客が喝采する。 ライオンは中心に立つ棒に縛られた私を見た。大きな瞳だ。私は彼に微笑みかけた。  何も恐ろしくはなかった。彼が私に危害を加えないのが分かるからだ。  私は幼い頃から動物の気持ちが分かり、言うことを聞かせる事ができた。大人たちに訝しまれたため、やがてそれを隠すようになったが。私からすれば、動物の心さえわからない彼らのほうが変に思えた。誰も同じ感覚を共有できるものがいなかった。  けれど今わかった。私の力と孤独は恐らく、この日の

      • 彼女の愛した内側(即興小説トレーニング)

        「あんた若いのに勿体ないよ。もっといい男見つけなよ」 昼下がりの喫茶店で、私は女友達の百合にいつもと同じ台詞を吐いた。百合は聖女のように笑いながらも、私の話を聞いていないのは、うつろな目を見れば分かった。その目は右手の薬指につけた指輪に向けられている。 百合には無職で大酒飲みの彼氏がいた。おまけに浮気性、ギャンブル好き、借金持ち。駄目人間の見本市のような男だ。話を聞く限り、百合が本命なのかも分からない。 「でも、好きだから。一緒にいたいの」  虫も殺さないような優しいオーラを

        • 意外!それは投資(即興小説トレーニング)

           私は彼氏と別れた事を口実に、仕事をやめ、酒を浴びるように飲み始めた。引き篭もって、酒を買うために徒歩十秒のコンビニにだけ出かける毎日。  本当は大好きな酒だったが、彼は酒好きな女より酒に弱く、他にも全体的に弱い守ってあげたい系の女の子が好きだったのでそれを演じていたけど、我慢する必要はもうなかった。振られたから結局無駄だったし。 「最近水代わりに飲むんだよね」 ある日泊まりに来た友達に、飲み干した大量の酒瓶を見せた。オブジェのようなそれを目の前にして、唖然とする友達を見て少

        舳倉島へ行った時の事

        マガジン

        • 掌編
          6本

        記事

          お題忘れ(即興小説トレーニング)

           所属していた隊での木剣の稽古で、初めて私があいつに勝った時の話だ。  負けた、と言って地面に倒れたあいつに、私は怒った。 「本気でやってないだろ、お前が俺に負ける筈ない。俺はこんな勝利認めない」  今まで好敵手と定めたあいつに勝つために鍛錬に励んで来たのに、その日は全くもって手応えがなく、俺を勝たせる為に手加減したとしか思えなかった。こんな勝利は全く喜ばしくない。  あいつは困ったように笑っていたが、どこか嬉しそうにも見え、それがまた俺の神経を逆撫でした。 次の日、あいつは

          お題忘れ(即興小説トレーニング)

          ヒーローと交渉

          路地裏のゴミ箱の横で、背広の男と男子高校生が会話している。 嬉しげに手を揉んでいる男は糊のきいた背広を身にまとい、手には汚れ一つない白手袋。清潔過ぎて逆に胡散臭い。 どこから見ても普通の高校生はひたすらスマホを弄っている。 「あなたには生まれ持った才能があります。最新式のDNA検査で、それが分かりました。その気になれば空も飛べる、姿を消せる、ビームや必殺パンチを繰り出せる。その他、諸々。どうかその力を世の為人の為に使い、突如現れた宇宙からの星人らを倒すヒーローになりませんか」

          ヒーローと交渉

          冬籠(第27回ゆきのまち幻想文学賞へ応募、加筆修正)

          高い山の傾斜にあるこの村では今、どっしりと降り積もった雪が地面を固く閉ざしております。僕達村人は一日の多くを家の中で過ごし、火をおこした囲炉裏の前に集まる冬篭の時期を迎えておりました。近年国中で広まった文明開化の恩恵はまだここに届かず、僕達は貧しい暮らしのままです。 数えで十三になる僕は、夏に流行った病で家族をみな亡くし、同じ村に住む叔父夫婦の元に住まわせて貰っておりました。 僕は彼らの迷惑にならぬようにと懸命に働きましたが、意地悪い叔父に食い扶持が一人増えた事を疎まれ、毎日

          冬籠(第27回ゆきのまち幻想文学賞へ応募、加筆修正)