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『ライオン・キング:ムファサ』が12月公開。改めて評価される初代『ライオン・キング』

 『ライオン・キング:ムファサ』の日本劇場公開が12月20日(金)と発表された。そんな時だからこそ、改めて見返したい作品が、サバンナの広大な自然を舞台に、野生動物たちの生きる姿が手書きのアニメーションによって鮮明に描かれた初代『ライオン・キング』だ。

1994年に公開された『ライオン・キング』は、ディズニーによる32番目の長編アニメーション作品として日本でも絶大な人気を獲得。「劇団四季」によるミュージカルをはじめ、お笑い芸人が『ライオン・キング』をオマージュした芸でブレイクするなど、映画界にのみならず多大な影響を残してきた名作だ。

また、2019年に超実写版として公開された『ライオン・キング』は、約16.6億ドルの映画興行収入を記録。この記録はディズニー映画としての歴代最高記録であり(Disney Movieより)、初代のアニメーション版が公開されてから30年経った2024年でも、その人気は衰え知らずである。

「初代『ライオン・キング』はディズニーが培ってきた技術の結晶

初代『ライオン・キング」以降、翌年の『トイ・ストーリー』に代表される形で、アニメーション映画の主流は2Dから3DCGへと路線を変容していくこととなる。いまでこそ、多くのアニメーション作品がCGによって描かれるようになったものの、2023年にスタジオジブリより公開された宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が顕著な例として挙げられるように、2D作品が未だ多くのファンを抱え、人の心を動かす力があることも事実だ。そういった意味合いでは、当時のディズニーにおける2D技術の英知が詰まった初代『ライオン・キング』が現代にも提示することのできる価値は少なくないはずである。

そしてなんといっても、『ライオン・キング』の魅力は音楽にある。もはや、サバンナの代名詞といっても過言ではない「サークル・オブ・ライフ」のメロディーや、『ライオン・キング3』の表題にも使用された「ハクナ・マタタ」は、我々の耳に残り続ける数少ないアニメーション音楽の一つだろう。ミュージカル部分の作曲はイギリスの伝説的アーティストであるエルトン・ジョンが担当していることも、魅力的な音楽の要因としては大きいかもしれない。

最新作はシンバの父・ムファサが主人公。アニメーションで細かな心情を理解してからの鑑賞を

最新作『ライオン・キング:ムファサ』は、シンバの父であるムファサがいかにして百獣の王になったのかが描かれるアナザーストーリー的作品だ。実写版の前作同様に、動物たちの毛並みやサバンナの大自然が、まるでリアルかのように忠実に再現されている。しかしその一方で、どうしてもアニメーションに勝っているとは言い切れない部分が、動物たちの心情を映しだすことであると筆者は考えている。

CG技術の発展により、たしかにすべてはリアルになった。しかしそれに伴い、本来ディズニーが得意としていた情緒あふれるリアクションや、動物たちにどこか感じる人間っぽさは失われたことも事実。アニメーションだからこそ映し出されていた、リアルではない部分が、ムファサをはじめ、多くのキャラクターたちに親近感を与えていた。もちろん、実写版にはそのような問題を上回ることのできる可能性が秘められている。しかし『ライオン・キング』自体におけるムファサの出番は決して多くはない。最新作でムファサというキャラクターにより感情移入し、映画に没入するためにも、初代『ライオン・キング』でムファサというの人となりを理解しようと努めてみてはいかがだろうか。

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