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【ドラゴン危機一髪】史上最高のアクションスター、ブルース・リーが魅せる不朽の名作①

 貧しい中国の田舎から病気の母親を置いてタイへと出稼ぎに来たブルース・リー演じる主人公チョウアン。親戚のツテで氷の工場で働かせてもらえることになったがその工場には問題があり…。カンフーの達人ブルース・リーが躍動する超弩級アクション映画。

※この投稿にはドラゴン危機一髪のネタバレを含みます

 この映画の一番の魅力はわかりやすさだったと思う。分かりやすいド派手なアクション、分かりやすい演出、分かりやすいストーリー。分かりやすい要素は他にもたくさんある。映画序盤母親との約束で喧嘩を禁止している主人公、それを象徴するのが親からもらったであろう飾り付のネックレスと明らかに柔らかいBGM。そして敵となる悪党は麻薬を密売して、秘密に気づいた主人公の仲間たちを次々と手に掛け、女性に手を挙げる、まさに悪逆の限りを尽くしたわかりやすい悪党だった。そして作品を一番をわかりやすくさせていたのは主人公の表情だ。ブルース・リーの表情は喜怒哀楽と言った感情はもちろんだが考えていることまで良くわかる。主人公のセリフはあまり多くなかったが表情を見れば主人公の感情や考え、今何を思って次に何をしようとしているかがわかるため気が付けば自然とブルース・リーに目が惹かれる。これこそがブルース・リーという俳優の凄さであり国境を超えて愛されたアクションスターの魅力だったのだと思う。

 印象的だったシーンは幾つかあるがその一つは主人公がカンフーを解禁するシーンだ。母親や叔父との約束で喧嘩はしないと誓っていた主人公、しかしカンフーを解禁したのはタイで知り合った同僚であり親戚であり、主人公の良い見本であり、兄貴分とも言えるホイの存在が大きいだろう。主人公は元々正義感が強くて誠実でいいやつではあるが母親との約束で喧嘩はしなかった。しかしホイはというとどこまでも正義感が強く、賢いが喧嘩とあらば平気でカンフーを使う。工場の麻薬密売の秘密を知り行方不明にされた仲間を探すために工場長や悪の親玉である社長のもとへと平気で向かっていく。そしてホイが社長宅に向かったきり行方不明となり工場で従業員たちが騒動を起こし主人公は最初は傍観をしていたがやられていく仲間を見てとうとうカンフーを使う。ここでもわかりやすくネックレスの飾りが壊れたのが演出として印象的であった。

 そして主人公が決して賢くない所は魅力の一つであった。主人公は正義感が強く誠実でカンフーの達人である、一方で片田舎から出てきただけの世間知らずな田舎者であり人を疑うということをしない。その結果主人公はあっさりと悪党である社長とその部下の工場長に丸め込まれ、仲間たちと仲違いをしてしまう。これもストーリーの中ではなかなかに苦しいシーンではあったが、カンフーの達人であり最強とも言える主人公が決して万能な超人ではなく弱みもあること。そして社長や工場長も数と武器に物を言わせた暴力的な悪党かと思えば意外と頭脳派的な一面が見えてきて悪党っぷりに光るものがあることが分かる。

 ラストのシーンも魅力的だった。社長と主人公、カンフーの達人同士である2人の死闘の末に主人公は勝利、これだけ見れば華々しいハッピーエンドにも見えるが主人公は社長宅で何人も殺してしまい結末としては警察に連れて行かれてしまう。映画はここで終劇となる。このシーンの魅力は主人公が非合法的だった工場で働き、非合法的な敵と戦い、非合法的に暴力的に敵を片っ端からぶちのめす、これは仲間を失った報復であり許せない敵へと立ち向かったカンフーしか取り柄がない主人公が行った騒動の結果である、そこから合法的な世界へと舞い戻ることに魅力があるのだと思う。主人公には正義があって大義があって敵は悪だった、そして主人公は自分の正義の元で巨悪を罰した、しかしそれはどこまでも非合法で主人公は最後ヒロインが連れてきた警察に連行されていく、それが合法的な世界へと主人公が戻る唯一の方法でありカンフーに頼らない選択だったのだろう。ホイが社長宅で言った「警察に通報する」という考えを主人公は持っておらず最後まで主人公はカンフーだけが取り柄の正義感の強い青年だった。しかしそれこそが主人公の魅力でありドラゴン危機一髪のストーリーを魅力的にした要素であったと思う、そして安易なハッピーエンドで終わらせなかった結末によってこの作品は完璧な名作になり、ただのアクション映画とは一線を画した不朽の名作へとなったのだろうと思う。

 余談。僕は以前ランボーという映画見たことがある。「この映画はあの映画の二番煎じだ!」と言うのは趣味に合わないのでそうは言わないが、1970年前後に制作されたドラゴン危機一髪という映画が、1980年代に制作された、ランボーという最強の主人公が武力を捨てて秩序の中へと戻っていく映画に何かしらの影響を与えたのではないかという気がした。というよりもそうだったら良いなと思う。ブルース・リーという若くで亡くなった世界一のアクションスターが死後も映画に影響を与えていたら彼の人生は死後も映画の世界で生き続けている、時を超えても風化しない何かがあるのではないだろうかと思える。

 

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