AD41「バラエティプロデューサーの心の平静について」

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.210 2019年11月発行「テレビの果てはこの目の前に」より]

秋田に来た。
観たかったのに見逃してた今夏公開の映画『トールキン』
秋田に来たら、ただ今全国で秋田だけで上映していて観られた!
映画の奇跡!観てよかった!!

秋田に久々来て思うのはTBSが見れないこと。
でもBSではBS-TBSは見られるしTVerでTBSの過去番組は見られる。
系列局が無い県で、見られないチャンネルがあることの意味と意図とビジネスモデルがもはや時代にそぐわなくなって来てるの実感する。
ネット時代のテレビのネットワークの無価値さを知る。

そして、秋田の象潟(きさかた)に寄る。
松尾芭蕉が『おくのほそ道』で訪れた一番北の場所。
松島は笑ふが如く、象潟はうらむがごとし
「象潟や雨に西施が合歓の花」

心の平静1


この日は、ラグビーW杯をテレビ観戦。ラグビーのおもしろさを教えてくれた。
高校時代に4ヶ月ほどラグビー部にいたことあったけど、そん時は全くわからなかった。痛いのと暑いのと疲れるのと汚れるのが嫌なだけだった。
4年後のフランス大会の時は、1ヶ月くらいフランスにいてラグビー観戦で各地を転戦したいな。

この日は、東大『文化資源学の原点』の授業にて自分の研究を(初めて)発表する。
色々考えてる構想を話す。
仮題は『バラエティ番組の存在意義と未来への展開』
言葉が弱いところは自分の思考も弱いところ。
発話することで身を持ってその弱さが知らされる。
自分の思考をアウトプットしパブリックにする鍛錬の場。

インタビューにて、角田陽一郎が勧める“プロデュースに活きる4冊”を話す。その4冊は、
『仕事道楽』鈴木敏夫/著 岩波書店
『ない仕事の作り方』みうらじゅん/著 文藝春秋
『文学部唯野教授』筒井康隆/著 岩波書店
『サルでも描けるマンガ教室』相原コージ、竹熊健太郎/著

沖縄に来た。平和の礎にて。
修学旅行生たちが楽しそうにはしゃいでピースサインを出しながらスマホで自撮りをしている。
でもそれでいいのだとも思う。それが平和の意味なのだから。

心の平静2


ccで送られて来てる重要な連絡メールで、その中のひとりがメアド変わったりすると面倒くさい。
その人にその重要な連絡が届かないし、その人はその重要メールが自分だけに来てないことも知らないわけだから、対処もできない。
でも送った方は全員にその連絡が届いてると思ってる。面倒くさい。

同じことを会話してても、その会話の端々で勇気づけられる人と、貶められる人がいる。
同じことを書いている文章でも、読んでて嬉しくなる書き手と、読んでてイライラしてくる書き手がいる。
この差は何なのだろう?
相性なのかな。
後者の人とは一緒にいても悲しいし後者の文章は読んでてうんざりする。

この日は、いとうせいこうさん出演のNHK『ごごナマ』
とても面白かった。番組観ながら思う。
自分がやりたいことは何だろうか?
自分ができることは何だろうか?
自分はこれから何をやろうか?と。
というか、せいこうさんの話を聞くといつも思うのだけど。

この日は、カフェマメヒコ井川啓央さん、コルク佐渡島庸平さん、CX辻貴之さんと定例トーク『ここ何』14回目。
佐渡島語録「モチベーションを上げるのとテンションを上げるのは似てるようで違う」に大納得。
そこを混同してる個人も組織も(自分も)多い。

この日は、カフェマメヒコにて井川啓央さんとトーク『あの頃、ボクは信じていた』
テーマは“洗濯機”
かつて洗濯機の登場は女性の家事の負担を減らし自由を獲得できるという触込みだった。
しかしそれがやがて新たな不満を産むという社会の悪循環構造、根が深い。
井川さんお手製メシ旨し。

定期的なトークイベントをやってるといつも来てくださる方々に加えて、新たな方も来てくださる。
ちなみにどんな理由で来られたんですか?と伺ったら、僕の書籍を読んで興味を持ったからと。
この一言は本当嬉しい!
角田陽一郎の書籍を読んでくださっただけでなく、イベントにも来ていただける至福。

忙しい時ほど色々雑になり、ぶっきらぼうになり、心が荒れる。
だからこそ忙しい時ほど睡眠をしっかり確保したり息抜きをちゃんと取ることが大事なのだ。
やっとそれに気づいたので睡眠を削ってまで作業はしない。
それすると翌日のパフォーマンスが悪くなるなり、結果さらにやり直し作業が増えるから。

今日の話。自分が所属する組織の中で「この組織やばいもたないもうダメだ」って文句言ってる人って、むしろその組織の恩恵に甘えてるだけで危機感が無い。
本当に危機感ある人は新たな対応策を進めなくちゃいけないと知ってるから、やばいとか言ってる場合じゃ無くてむしろ前向きだったりする。

なんか今週は物凄くバタバタしてた。疲れた。
多分、祝日や休みが続くと週のペース配分が微妙に狂って、その余波でむしろ平日が忙しくなるのだ。
これエンデのモモの時間泥棒と一緒だ。
時間を貯金しようとするとむしろ忙しくなる。
やることの全体量を減らさなければ、これは解決しないんだろうなあ。

《「ツイッターなどのSNSでどんどん情報発信していきます」
と宣言した個人も企業も広告代理店も、ツイッターなどのSNSでどんどん情報発信しているのをただの一度も見たことがない。》
この田中泰延さんのツイート、本当に本当に本当に激しく激しく激しく同意。
自分でやらないと、何にもならないし、生まれないし、繋がらない。
なのに、そういう個人も企業も広告代理店も、人には(半ば無理目に)頼んでくる。ならあんたがやればいいじゃん!って話のなんと多いことか。

この日は、村西とおる監督と対談。『全裸監督』や11月末公開のドキュメンタリー映画『M/村西とおる狂熱の日々』のお話をこれでもかと聞く。この撮影の瞬間は猥褻語を絶叫させられ中笑。
対談中、ずっと喋ってる村西とおる監督に、おだてられたり、説教されたり。これ、話聞いてたら、その勢いでいつの間にかパンツ自分から脱いじゃうやりとりです。

この日は、『バスキア展 Made in Japan』混んでる中行ってきた。
なんて言うかうまく言えないんだけど作品観てると悲しくなった。
そこに黒山の人だかりなのが、さらにその気持ちが助長された。バスキアは今流行りの“映え”という現象と本当は乖離してる作品なのかとも思う。

これから世界一美味しいコーヒーを飲む(予定)。
どんなんだろ、期待しすぎない方がいいかな。

心の平静3

深夜の都内某所にて、コルクの佐渡島庸平さんとマメヒコの井川啓央さんと。
世界一美味しいコーヒーを味わう会。
世界一美味しいコーヒーを味わう。
本当に美味しかった。
コーヒーなのに苦さが無く甘い。
豆と水と温度と入れ方のマトリックスでこれほど味が変わるのか。
世界一美味しいコーヒーと合うのが抹茶チョコレートケーキ。
確かにどちらの味も引き立つ。その後入れ方の違うコーヒーを飲む。
サイエンス(組み合わせ)とマジック(演出)の掛け算が魔法を産み出す。

その人の言ってることが正しいとしても、いつもイライラしてる人に国や組織を任せるのってなんか嫌だな。
トップのイライラはその下の者に伝染して萎縮させる。
そして雰囲気が悪くなり事態は悪化する。
「番組収録は雰囲気を大事にしろ」って怒鳴って番組の雰囲気を台無しにしたプロデューサーが昔いた。

タクシー広告、タクシーたまに乗るとウザくて正直苦手なのだが、名刺管理sansanの松重豊さん岩松了さんのやりとりからからの大森南朋さんの続きのやりとりで笑ってしまった。つまりいいも悪いも内容次第なのだ。

この日は、『メディア感性学』の講義。
“不気味の谷”という言葉をはじめて知ったのですが、これもともとの意味のロボットとかCGで人が感じる現象以上に、実は人間が自分とちょっと違う人達を差別したりいじめたり排除したりすることの本質のことなのではないかと感じた。

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うお、アメトーク見てたら、麒麟の川島さんに自分の箱根の九頭龍神社のエピソードが話されてる!!
夢が叶いますようにって祈ったら翌日、映画監督やりなさい!って拝命された話。
さらに放送以上にネタ付け加えるならば僕に拝命した上長の名前にもその時の上司の名前にも“龍”が付いてるのです!

今日は朝から東大駒場。何年ぶりだろう?
19歳の頃を想い出す。
普段はそんなに想わないんだけど、あの頃に戻りたいとかふとよぎった。

この日は、横浜アリーナにてナナイロエレクトリックツアー
アジカン、エルレガーデン、ストレイテナー、最高だった!!
どのバンドもどんどんどんどんよくなっていく。歳を重ねるのはいいもんだ。

この日は、ヨーロッパ文芸フェスティバル第1日目。
『窓から逃げた100歳老人』他で世界で1400万部のベストセラー作家スウェーデンのヨナス・ヨナソンさんの講演。
司会は杉江松恋さん。小説が売れないとかオワコンって嘘だと思う。

スウェーデン人作家ヨナス・ヨナソンさんと。
彼も元テレビマン。
体を壊してスイスに移住して48歳で小説を書き今や世界で累計1400万部。
小説が売れないとかオワコンとかやっぱりウソだと思う。
そんな世界の潮流に日本の業界が付いて行けてないだけだと思う。
ヨナス・ヨナソンさんの小説は人口1000万のスウェーデンで70万部のベストセラー、それで世界で1400万部。
でも多分日本語版はそんなに売れて無いんだろうと推察する。
世界のいろんな作品に触れないでいいんだろうか?と想う。
自分の半径5mだけの好奇心じゃ人生がもったいない。

この日は、ヨーロッパ文芸フェスティバル第2日目。
ユダヤ系ポーランド人でイタリア語で文学をするヘレナ・ヤネチェクさんと日本人でドイツ語で文学をする多和田葉子さんの対談『母国語の多様性』
深く考えさせられる。
想いは越境するのだ!
さらに、アイルランドの作家サラ・ボームさんと翻訳家加藤洋子さんの対談『文化と自然を翻訳する』
アイルランドと日本の近似性、思考の流れが見えてくる。

この日は、ヨーロッパ文芸フェスティバル第3日目。
スラブ文学沼野充義さんハンガリー文学岡本真理さん対談。
沼野「漱石の『こころ』は英語には訳せない→英題はKOKORO。簡単な単語ほど翻訳は難しい」
岡本「日本語の持つ潜在力、ひらがなカタカナ漢字、俺僕私…どれを使うかの決定権は翻訳家にある」
沼野「売れようが売れまいが、本は一冊一冊が対等」

一昨日にナナイロでのゴッチや細美さんホリエさんの話を聞いて、昨日今日とヨーロッパ文芸フェスティバルにて世界の小説家の話を聞いて、クリエイターの生の声は聞くべきものがあると再認識。
つまり作品自体や評論以上に実際に生み出すことの気概と想いと熱量がその言葉から深く重く感じられるから。
そんなクリエイターの生の声を聴きながらも、
同時に自分が何ができるか?
自分は何をしたいか?
にも想いを馳せる。
そしたら今日突然、朧げながらも次の執筆で書きたいこととこれからやりたいビジネスが見えてきた。
それが無いことに不平不満言ってないで、なら自分で作っちゃいましょう!って類の物。

今日の話。新しいビジネスモデルの話をしていて僕らが10年前に作ったネット放送会社goomoの資料を見ながら談義。
当時3年余りで200以上企画を実現させたけど、今見ても全然古くなくむしろ当時はぶっ飛びすぎてたことを再認識。
ビジネスコンセプトも今からむしろ有効。
昔の失敗は無駄じゃないのだ。

この日は、映画『JOKER』やっと観た。
この映画はまごうことなきファンタジー(空想で妄想)だ。
そんな完璧なファンタジーこそリアルに感じてしまう現実世界で僕たちはどうするのか?
笑うしかないのか?
嘲笑するのか?
自嘲するのか?
笑わすのか?
笑われるのか?

自分のちっぽけさが物凄く嫌になる夜がある。
他人の振る舞いで物凄く落ち込んだりする時もある。
でもそんな時は、自分のちっぽけな作業を自分一人でコツコツとやるしかないのだ。だって結局そんなことしかできないのだから。


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