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AD13「『好きなことだけやって生きていく』ためのバラエティ思考」

皆様おはようございます。バラエティプロデューサーの角田陽一郎(かくたよういちろう)といいます。

(2016年)7月21日に僕の新刊『「好きなことだけやって生きていく」という提案』が出ました。
一昨年2冊の本を出し、昨年は4冊出すぞ!と意気込んだものの、退社のバタバタで1冊も出版できませんでした。満を辞して今年1冊目の本です。
似たようなタイトルの書籍は多いですが(ホリエモンの本とか)、それらのオラオラ系の書籍とこの本が圧倒的に違うのは、もっとナヨナヨしているところです。
「好きなことだけやって生きていきたいけど、そんなこと自分にはできるわけない。」
…そう思っている(自分を含め)圧倒的に自信がない人に向けての、少しでもその方法を見出すための本です。
そうは言っても、「本当にそうか?」って思われるでしょうから、ここで本書の中から1節をメルマ旬報読者に向けて丸々掲載しちゃいます。(出版元のアスコムさん、ありがとうございます!)
好きなことだけやって生きていくための重要な考え方、『バラエティ思考』です。
もし気に入っていただいたら、ぜひ本書を買ってください!
よろしくお願い致します。

以下、本書第1章第8節
『バラエティの世界では、「悲劇」や「危機」が一番「おいしい」。どんなピンチも、視点を変えれば、大きなチャンスになる』

僕は、テレビのバラエティ番組のプロデューサーだったからではなく、「バラエティに富んだことをやる」という意味で、自分の職業を「バラエティプロデューサー」と言っています。

「とにかく、おもしろいことをやりたい」というのが、僕の基本姿勢です。
テレビ、イベント、映画、書籍、ビジネスモデル……表現の形にはこだわりません。
「自分の専門はこのジャンルだから、○○をやろう!」と決めつけるのではなく、「まず、いろいろなことを知り、体験し、それをおもしろ楽しく形にしたい!」という思いが、この肩書に込められています。

そんな僕が「好きなことだけやって生きる」うえで重要だと思っているのが、「バラエティ思考」です。
バラエティ思考とは、物事を平面的にとらえるのではなく、三百六十度、あらゆる視点からとらえ、どうすればおもしろくできるかを考えることです。
バラエティ思考は、たとえばあなたが失敗したときに、非常に役に立ちます。

仮に、あなたが会社から、ある商品の開発や営業を任されたとします。
社運が懸かっているにもかかわらず、その商品が悲惨なほど売れなかったら、会社中から総攻撃を受けるでしょう。
汚名返上のため、さらに熱心に営業をしても商品は売れず、気分はどんどん落ち込み、大泣きするかもしれません。

しかし、気にすることはありません。

平面的に見れば悲劇でしかありませんが、この展開を上からの視点で眺めてみましょう。
怒鳴る上司、頭を抱える経営陣、慰める同僚、くたくたになりながらも成果が出ず、会社の隅で号泣する自分……。

どこを切り取っても、バラエティとしては「おいしい」ところだらけなんです。

テレビのバラエティ・ドキュメントで一番おもしろいのは、苦労したり、うまくいかなかったりして、出演者が本気で怒ったり泣き出したりする瞬間、つまり喜怒哀楽がはっきり映し出されたシーンです。

僕たちは、彼らが「カメラを止めろ!」と怒鳴ったり号泣したりする場面に出会うと、実は「いいものが撮れたな」と内心では喜んでいます。
誤解のないように言っておきますが、決してヤラセを無理やりするわけではなく、出演者の感情が大きく動くような自然なストーリー展開を考えるのです。
「おいしい」場面を撮るために、出演者が怒りそうな要素を用意したり、涙しそうな言葉をかけたりするわけです。
日常を、ただ平面的になぞるだけではおもしろくありません。
しかし、感情の動きがはっきりとわかるような形でとらえると、視聴者は興味を持ってくれます。

先ほどの例のように、仕事が失敗し、喜怒哀楽があらわになっている状況は、周りから非常に注目されている瞬間でもあります。
つまり、結果はともかく、あなたの頑張りをアピールするチャンスなのです。

たとえば、自分自身に「世界一の駄作を作った男!」といったキャッチフレーズをつけ、この体験を自分で発信したらどうでしょう。
世の中はおもしろいもので、「並の駄作」では人々は何ら関心を持ってくれませんが、世界一の駄作には興味をそそられます。

最近、ツイッターでスーパーやコンビニなどの店長が「発注ミスで、こんなに商品が届いてしまいました。助けてください」とつぶやき、商品がドーンと売れることがたまにあります。
これは、大量の商品が並ぶ写真、悲壮感のある文章などのバラエティ的おもしろさが、多くの人に支持された結果です。

同じように、自分の失敗体験を別の視点から眺めることにより、失敗をチャンスへと変えるのです。
失敗をしてただ落ち込んでいても、何も変わりません。
それより、「どうすれば、この失敗が人の目におもしろく見えるか」を考えた方が、よほど建設的ではないでしょうか。

また、バラエティ思考はピンチのときにも使えます。
たとえば、ショッピングのロケをしたいけれど、撮影が押してしまい、あと1時間しかない場合。

そんなときに「1時間じゃ無理!」と諦めるのではなく、「1時間でどれだけ買い物ができるかゲーム」に企画を変えます。
このように、制約をルールに変えてみると、ふつうにロケをするよりも、もっとおもしろくなるはずです。

ピンチや制約をうまく利用することで、物事ははるかにおもしろくなります。
たとえば、俳句も「17文字」という制約があるからいいのです。
松尾芭蕉が、「松島」をテーマに5万字で感想を書いても、きっとおもしろくない。
たった17文字だからこそ、芭蕉は「松島や ああ松島や 松島や」という句の中に、いくら言葉を尽くしても表現できない、広がりや深みを持たせることができたのです。

ピンチになり、条件が厳しくなればなるほど、チャンスが生まれます。
そして、物事をいろいろな視点からとらえたり、物事に制約を持たせたりすることで、発想はどんどん豊かになります。
「悲劇は悲劇」「喜劇は喜劇」といった具合に、物事を一面的にしか見ないのは、非常にもったいないことだと僕は思うのです。

あなたも、ぜひ日頃から、だまされたと思ってバラエティ思考を取り入れてみてください。

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.126 2017年7月20日発行]


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