vol.83 『月は満ちて逝く』

角田陽一郎のメルマガDIVERSE vol.83 2021年10月20日Full Moon
『月は満ちて逝く』

ユニバースUNIVERSE(単一の世界)からダイバースDIVERSE(多元的な世界)へ
多視点(バラエティ)でみると、世界はもっと楽しくなる。
それが角田陽一郎の考えるバラエティ的思考です。まさにいろいろなことをバラエティに多元的に多視点で紐解くメールマガジンです。


ボクは今、満月の今日、フィクションを書いている。
いや正確に言えばフィクションを書こうとしている。ではなんでフィクションを書こうとしているかといえば、フィクションではないリアルなことを書くことにボクは疲れてしまったからなのだ。なので、誤解して欲しくないのであるが、今これを書いているボクは、実在しないボクであって、ツクリモノのボクであって、ここに書かれていることは全部フィクションであり、つまり嘘である。語調だっていつもの文体とは違う、それはなぜかといえば、このボクが、通常この場で想定されるような角田陽一郎ではないからなのではある。

ならば、例えばボクではなくて、女性が語ったっていいし、なんならこれが書かれている時代は中世だっていいし、場所は宇宙空間でも構わない。軌道エレベーターが上昇する中で、私の子宮がうずきはじめ、それは西暦1439年の出来事で、その世界ではもはや人類は存在していなくっていい。私は宇宙生命体の意思として、この子どもを授かったのだ、なんて感じで書き始めたっていい。しかしそのフィクションの世界にどっぷりハマるような心境では今はこのボクは、正直ありえない。そんな想像力も創造力もボクにはない。あれば、そもそもリアルな世界でリアルなことを書くことだって容易くできるんだと思う。でもそれが無いから、ボクはフィクションを書こうとしているのだ。なので、誠に申し訳ないのだが、この2021年の10月20日の満月の日という、至極現実世界の世界線は保持したまま、ただこのボクが存在しないボクであるという曖昧なことだけ、はっきり言及して、このフィクションを書き始めたいと想う。

そもそも、リアルとはなんなのだろうか。
最近フィクションであるボクは、ボクという存在があやふやな分だけ、むしろそのフィクションの目で、リアルを感じてしまう。

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