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BC45「バラエティ番組の現場で笑いを生み出す方法」

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.44 2014年8月25日発行より一部改定]

皆様おはようございます。バラエティプロデューサーをやっています角田陽一郎(かくたよういちろう)といいます。
TBSに94年に入社して、2016年末に退社したので22年9ヶ月在籍しました。現在は主にプロデューサーをしておりますが、経歴で言うと、AD3年を経てディレクターを8年、プロデューサーになって11年という感じです。あっ、今改めて自分の経歴を計算していて驚きました、僕は自分をプロデューサータイプというより、ディレクタータイプだと思ってやってきたので、ディレクター歴の方がプロデューサー歴より長いと勝手に思っておりました。でも実は去年の段階ですでにプロデューサーの方が長くやっているのですね。そういえばプロデューサーというシゴトの実感も、そういえば去年くらいに自分の中でやっと“一人前”になったなという感触がありました。なんていうかシゴトに対する自信というか確信というのは、“努力”や“才能”ってのも勿論重要な要素ですが、やっぱりそのシゴトを一定以上やったっていう“時間”も必要な気がします。シゴトが練れてくる、というか熟成するような気がします。

そんなテレビの中のバラエティの現場で、それこそ“バラエティ=多様性”ってことですから、もうあらゆるジャンルの番組を作って来ました。というか、この連載でも書いているように、もう既に番組という枠を超えてまでコンテンツにしてしまうことが、バラエティの真の意味なんじゃないか!と僕は思ってるくらいですが。でもそんな中でもテレビ現場で『笑い』を作ってきたことがやっぱり一番占めています。特に僕のディレクター歴の8年間は、日々テレビの現場で『笑い』を実際作っていました。では一体、どうやって僕らテレビマンは笑いを作るのか?今日はそのバラエティ現場での『笑い』を作る話をしたいと思います。

実は僕らテレビマンは、日々皆さんが、「最近のテレビってつまらない」って思ってると、思ってるわけです(笑)。「浅い笑いだなあ。」とか思われてるだろうなあと。でも、そこには原因があるのも、実は僕らは分かってはいるのです。
それはなぜかというと、もっと深く作りこんだ『笑い』をしようとすると、笑いの本質、それは『フリとオチ』なんですが、それを、きっちりきっちり、やればやるほどおもしろいわけです。ところが、フリをきっちりやるってことは、それ相応の時間が必要であって、とすると、オチ前のフリが長くなる。すると、視聴者のみなさん、フリの途中で「あっ、おもしろくないや」とチャンネルを回してしまうのです。てことで、僕らが一番気にするのは、なるべく皆さんがチャンネルを回さないような、おもしろい『笑い』を作らなければならないってことであって、そうすると、チャンネル回す機会を与えないように、フリが短くなる。そして、高速でフリ→オチ→フリ→オチを繰り返す。なので、テレビの笑いって、必然的に『浅い笑い』が多くなるわけです。僕も、作りこんだ深い『笑い』をもちろん作りたいのですが、チャンネル変えられたなら、元も子もありません。
テレビの“本質”はチャンネルを“瞬時に”変えられるということなので、テレビというメディアは『浅く』ならざるを得ないという宿命をもともとやどしているのです。これが例えば映画なら、2時間の上映時間のうち、まあよっぽどつまらなくても皆さん映画館と言う隔離された空間の中で席を立たずに最後までつき合ってくれると思います。ということは極論を言えば1時間59分を“フリ”に存分に使って、最後の1分間にとどめの壮大なオチを奏でることも可能なわけです。
そんなわけで仕方なくテレビでは大量のフリ・オチを繰り返す番組が繰り替えされてしまいます。ちなみにテレビ番組では1分間隔くらいでフリ・オチのサイクルが循環すると、皆さんにチャンネルを回す“すき”を与えないとも言われています。例えばクイズ番組の質問(フリ)と解答(オチ)のサイクルってこの1分間サイクルで作られてることが多いです。皆さんも質問(フリ)見たら、解答(オチ)見るまでチャンネル絶対変えないと思います、だって解答(オチ)が気になるから。で、そのまま次の質問(フリ)見せちゃう。するとチャンネルを変える“すき”がありません。

そんな『テレビ』の限界を感じながら、それでもおもしろい番組を作るためには、そのフリ・オチが大量に発生するような環境を作ること、それが僕らが日々格闘している実際のテレビのバラエティー現場なのです。では、そこで考えられる『おもしろさ』って一体何なのか?そもそも、『おもしろい』ってのは、一体何なのか?という命題になりますが、まあ、やっぱり、いきなり想像もしてなかったことが起こる=ハプニングってのが、やっぱり強烈におもしろいのです。さらにハプニングは、なにせ予想外ですからフリも必要ない。てことで、テレビのバラエティ番組って、良い悪いは別にして、必然的にやっぱり『ハプニング笑い』重視になりがちなんです。

そんなバラエティの現場で、僕らはおもしろいことを、高速で、なおかつハプニング的に起こさなければならない。では、実際どのようにそんな『ハプニング笑い』を産み出すのか?

産み出すといったって、何せハプニングですから、まあ予想外です。神のみぞ知るってやつです。ですから、僕らはその方策を年がら年中、寝ないで考えてるわけですが、まあそれは、考えるしか解決策がないからです(笑)。でも、長年やってると、その『ハプニング笑い』を産み出す確率を高めることはできるわけです。

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