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「うちの店を潰す気か」

注)2013年に書いた記事です。
2013年当時に私が店長をしていた書店の雑誌販売の実例です。

「うちの店を潰す気か」と思ったのは確かです。
1月から雑誌に自ら手をつけて2ヶ月、定期改正(※雑誌の入荷数を店側がオーダーする業務。あくまで希望数。)が増えない。増えないというか減る。
発売後の追加発注でなんとか数を確保しようとしているが、追加効くものも限られるし、「追加発注」が所詮応急処置なもので、雑誌売場運営では健全ではない。
 現在雑誌担当として最重要の仕事は月刊誌の発売後1週間目と2週間目、週刊誌は発売後3日目の在庫数のチェック。同雑誌を二つの期間でチェックすることによって、雑誌の販売動向を把握し適正配本数を頭に叩き込む。
 この在庫調査はPOSデータだけ見てはダメだと思っている。雑誌の内容、陳列場所、隣り合わせの雑誌の相性、残部の傷み具合などが売上の重要な要素であると思っているからだ。当然ながらPOSだけではこれらを知ることはできない。
そして一ヵ月後、雑誌の入荷数は定期改正数の数にならなかった。

 この雑誌が増えないということがどれだけ危機的な状況かを取次に話してもイマイチ分かってないようで、雑誌の売場のテコ入れということで取次が持ってきた資料はジャンル別売り場面積と雑誌実売数の適正化のデータ(数字を出している雑誌なのに売場スペースが小さいとか、逆に数字を出せてないのに売場が大きいとか)。
その対策がいかにずれているか。
発売後「1週間以内」に完売した雑誌は全部で145点(※元記事は全雑誌名を記載しているが省きます)に及ぶ。
これがどれだけ危機的な状況かというと、月刊誌が1週間で完売すると、次の号がでるまでの3週間は実売が0だ。
ではこの完売した雑誌145点が、すべてあと1冊づつ売れたと仮定すると合計売上はいくらになるか。
「109,427円」
つまり、定改で増えず、むしろ減らされ、1週間で完売してしまうと、「109,427円」の損失が発生する。しかもこれは残り3週間で「あと1冊売れたら」という最小売上の仮定だ。実際はその1.5倍か、2倍くらいはあるだろうか。配本希望通りに入荷すれば最低「109,427円」の売上が上がるということなのだ。しかも2週間後まで商品があればもっと増えるのだ。

そして、実は数字に表れない部分で店にとってより大きなダメージがある。
それは上記の145点が完売したことで、あと1冊を買えなかった顧客が145人いるということ。雑誌を買いに来て(しかも発売後まだ1週間で)売り切れだったら、「この店には置いてない」の烙印を押され、来月号を買いに来てくれはしない。
この来なくなった人を呼び戻す手立ては残念ながら無い。入荷数を増やしたところで、店に見切りをつけ来なくなった客へ「入荷してますよ」と伝えることは不可能なのである。つまり雑誌の顧客は失ったら戻らない。

雑誌の配本について取次ぎの配本の仕組みへの不信感、雑誌の重要性にイマイチ理解されていない部分、そしてなんだか「雑誌は売れないですからね」という言葉が便利に使われ、具体的な問題点の洗い出しに対して思考停止してるように感じる。
雑誌が売れない時代なんてのは言い訳に過ぎず、店の仕入れ希望を叶えてくれれば絶対に雑誌の売上は上がると確信している。

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