見出し画像

星屑

あぁ まただ
彼女は抱えきれなくなった
悲しみや怒りが溢れ出ないように
いつもこうして身体に押し込む

誰もいない部屋でひとり
口を固く閉ざし
身体を小さく折りたたんで
ぎゅっと強く抱く

「ん゛ーーーーー」

「ん゛ーーーーー」

「ん゛ーーーーー」

言葉が漏れないように
ぎゅっと爪を立てて
身体に閉じ込める


しばらくすると声が聞こえなくなった
鼻をすする音がする


何もできないから
そっと見守る

わたしは落ち着いた頃を見計らって
コンコンとノックする

ーーー そろそろご飯食べよっか

「うん」

彼女が力なく笑った

一人きりの食卓
湯気がたちのぼるお味噌汁に
彼女の涙がぽたぽたと落ちていく


爪痕が残って 血が滲んでるのが
内側から透けて見える

わたしは未だに体内に反響する言葉を
ぱくぱくと食べていく

もうこれ以上 彼女が痛くならないように
声にならなかった言葉を星屑に変えて
夜空に流していく

わたしには彼女を救うことはできないから

せめて 

今夜 彼女がよく眠れるようにと
願いを込めて 星屑を流していく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?