ヒンディー語の補助動詞

以下の内容は、ヒンディー語学習者でないとピンと来ないかもしれません。

ヒンディー語には、補助動詞 रंजक क्रिया というものがある。本動詞の語幹に接続して、若干のニュアンスを与える作用がある。देना, लेना, जाना などが補助動詞にあたり、 रोक देना, खा लो, समझ गया のような使い方をする。助動詞、または本動詞と合わせて複合動詞とも言う。
ここでいう、「若干のニュアンス」とは、日本語で言うところの「あげもらい」や、動作の発生、開始、完了などを意味する。日本語に訳しにくいことが非常に多いが、場合によっては、「…してちょうだい」「…しちゃった」のような表現がぴったり当てはまることがある。

数年前、デリーの民間の語学学校で、補助動詞について教えてもらった。
例として、ある二人の人物が、もうすぐやって来るはずのAさんについて会話をしているとする。すると、玄関で音がする。誰か来た、Aさんかな、と一人が様子を見に行く。その時にやってきたのがAさんであれば、様子を見に行った人が発言するのは、「Aさん आ गया」。もし想定していなかったBさんが来たのであれば、「Bさん आया」。つまり、ここでは補助動詞 जाना は、「既知の情報についての言及」を示す。
この様な微妙なニュアンスはバリエーションが多く、どのテキストにも書かれていないから、自分でしっかり観察して勉強しなさい、インドまでわざわざ来る必要はない、とその当時の先生に言われた。
しかし大変残念ながら、私の勉強不足により、またインドへ来てしまった。

なお、上記のような内容は、KHSの授業で教えられることはない。なんなら、テキストに「この章を勉強すると補助動詞の使用について理解できます」と書いてあり、そして「補助動詞を使う場合と使わない場合でどんな違いがありますか」と講師に質問しても、「別に」という回答しか得られない。補助動詞の件に限らず、ニュアンス周りの質問については、「何言ってるの、同じ意味よ、馬鹿ねぇ」くらいな勢いなので、まぁ、アレだ、そういうことだ。

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