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競争優位は、組織・思想・文化、そして執念の先に生まれるもの「#好きだから宣伝したい」Day5開催レポート

全5日間にわたって開催された「#好きだから宣伝したい ~インフルエンサーマーケティングを変えよう~」も、とうとう最終日を迎えました。

ゲストは、ワークマンにてアンバサダーマーケティングを推進する林さん。成果を出し続けるワークマンらしい“凄み”を感じることができた回でした。

過去4回を振り返りつつ、最後の振り返りレポートをお送りします。

好き宣_Day5 (1)

アンバサダー捕獲作戦の裏にある「はりつく」姿勢

ワークマンでは、アンバサダーのスカウトは非常に地道なソーシャルリスニングにて成り立っているそう。ウォッチしているポイントは、ワークマン愛があるかどうかという点はもちろん、新しくリリースされた商品をすぐにレビューしてくれているかどうか、という点を見ているとのことです。

特に後者は、候補を見つけ出した後、そのアンバサダー候補を定点観測していないと実現できないように思います。

Day1のゲストであるDINETTEの尾崎さんも、創業当時からInstagramにはりついて美容好きなユーザーとのコミュニケーションを重ねたとおっしゃっていました。これは一朝一夕でできることではなく、中長期的に担当者の熱意と根気が求められる作業です。尾崎さんも林さんも、そうすることがさも当然のことであるように語っていました。しかし、成果を得るために近道なんて存在しなくて、どこまで「やりぬく」ことができるのかを問いかけているようにも感じたのが印象的でした。

「はりついた」結果、DINETTEは強固なビジネスモデルが築くことができている点に言及したDay1のレポートはこちら。

SNSにおけるインパクトはユーザーの熱から生まれる

ワークマンの社員の方は「SNSで話題になった商品は売れる」ということを実感していたそうです。キッチンシューズの例だと、滑りにくいから妊婦にオススメであるということがSNS上で話題になり、売上につながったというのもその1つ。

特に、経営層がSNSに対して理解があることに林さんは触れていました。なので、アンバサダーマーケティングを行うことに決裁上の壁はなかったとのこと。

また、SNS上で生まれた“熱”が伴ったUGC(クチコミ)が増えていくことで、売上につながることがわかっていたので、アンバサダーがワークマン商品を紹介するコンテンツを作成・公開したときに、そのコンテンツに関係する数値(再生数など)をKPIにしています。

印象的だったのは、モノを宣伝するのではなく人(アンバサダー)を宣伝するという考え方。アンバサダーとは金銭関係はないそうですが、ワークマンの後押しでアンバサダー自身にファンが増えれば、アンバサダーにも還元されるというWin-Winの関係を築くことができています。店頭のPOPのQRコードを読み込むと、商品ページではなくアンバサダーのブログやYouTubeの動画へのリンクへ飛ぶそうです。

Day2のえとみほさんも、経営層におけるSNSへの理解の重要性と、SNSは熱を広げる場所であるという言及をされていました。ワークマンは、インフルエンサーマーケティングやソーシャルメディアマーケティングにおける事業会社の理想形であるように思います。

その点を解説したDay2のレポートはこちら。

企業文化レベルで「顧客起点」であることの大切さ

アンバサダーマーケティングを始めていく上で、SNSに対する理解がある故に、実行にためらいがなかった点を上述しました。それは、もともとワークマンは作業服をつくるためにユーザーの意見を聞く文化が存在していたからだそうです。

意見を聞く相手はユーザーに限っておらず、「やり方がわからないときに、誰に聞けばよいか分かっていればいい(知っている人に聞こう)」というknow-whoという考え方が定着している、と林さん。

また、「全員経営者」という言葉が林さんの口からありましたが、データ経営で注目されているワークマンは、社員全員がExcelのプロフェッショナルである点も特徴的です。これはつまり、全員がデータに基づいた会話ができるということ。データや数値といった共通言語があるから、立場が下の人であっても自分が正しいと思える意見を主張することができ、上の立場の人がそれを受け入れる空気があるそうです。

これは企業文化において何を重要するかという点で、とにかく顧客起点で考えた結果、顧客と一番近い距離にいるスタッフを活かしていくことにつながっているアダストリアさん(Day3に登壇)に通じているように思いました。

会いに行くこと、そして定量化をあきらめないこと

アンバサダー捕獲作戦において特徴的だったエピソードが、林さん自らが「新規オープンする店舗に訪れるであろうアンバサダー(当時は候補)にサプライズで会いに行った」というもの。

声をかけられたアンバサダーの方は驚かれていましたが、その場で(動画の)撮影が始まるなどして、とても喜んでもらえたとのことです。

他にも、バイカーの方にワークマン商品が売れていることがわかったときに直接商品の改善点を聞きに行ったり、現在もアンバサダーと開発責任者が一緒に会話しながら商品開発を行ったりしています。

ワークマンはこういったアンバサダーとの取り組み(もちろんそれ以外も含めて)の結果、本気でAmazonに勝つことを考えており、いまは販促費ゼロを目指しているとのこと。具体的な取り組みとしては、年に4回行っていたチラシの回数を減らし、テレビCMの本数を減らしています。ワークマンは低価格かつ高品質というポジショニングなため、販促費や広告宣伝費にかけられるコストは限られています。

では、どのコストからカットしていくかという点で先述したようなデータ経営が活きています。アンバサダーのクチコミが増え、それと連動して販売数や業績の向上が分かっているから踏み切れているのです。

このお客さんに会いに行く姿勢と、データにこだわる点は、Day4でご登壇いただいたDeNAと「逆転オセロニア」に通じるものがあると思いました。

ゲームの運営として「ユーザーに会うこと」を当たり前として捉え、そして「ユーザーに会うこと」の費用対効果は明示しにくいけれども、ファンとのつながりによる影響力の可視化や、それに基づく施策のジャッジを行うことをあきらめないという姿勢を感じました。

DeNAの坊さん・川口さんにご登壇いただいたDay4のレポートはこちら。

ファンとともに成長する企業の共通項

以上のように、今回ご登壇いただいた企業のビジネスモデルはどれも異なっていますが、ファンやブランドへの愛着があるインフルエンサーとの取り組みで成果を収めている企業には、以下の共通点があるのではないかと思います。

・成果は一朝一夕で得られないことを理解し、徹底的に「はりつく」。そして地道に続ける。
・全社(特に経営層)におけるSNSへの理解を得ている。
・顧客起点であること、あるいは顧客の意見に耳を傾けることを当然とする企業文化があること。
・ユーザー(ファン)と直接会話している。
・ファンと会うことの費用対効果の可視化は難しい。しかし、ファンの存在や声は資産と捉えながらも、その先に得られたプロモーション効果の可視化に取り組んでいる。

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回のイベントをきっかけに「『#好きだから宣伝したい』という思想のもとに取り組まれるインフルエンサーマーケティングが当たり前だ」という世の中になればいいなと思います。

BtoBマーケティングのプロを目指すため、日々精進しています! ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます! スキくれる方はみんな大スキです(*´ω`*)