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プジョー308 GT BlueHDi(FF/8AT)

偉大なるフツーからの脱却

思えば先代モデルの現役期間は長かった。実に9年。
登場したときはあまりにも退屈なデザインゆえ、早くモデルチェンジしてくれないものかと心から祈っていた日々を思い出す。
ちょうど、少年時代に見ていた刑事ドラマで新任刑事が気に入らず「早く殉職してくれねえかな」と不謹慎ながらじりじりしながら毎週見ていたときの気持ちと同じ。
そのくらいガッカリが大きかったのだ。

ボロクソ言っていたのに今や所有車の308SW

しかしどういうわけか、現在ガレージに収まっているのは退屈でガッカリな先代のワゴン(SW)最終モデルなのだから我が人生なんていい加減なものである。

待ち詫び忘れた頃に

それにしても4月にようやく日本上陸、発表となった今回の新型。
待てど暮らせど実車がどこのディーラーにもない。

お預けだった六本木のイベント

イベントで内装を確認しようと出向いても「感染が心配なので……」と頑なにドアを開けさせてくれず、目の前でお預けを食わされること合計2回。
やっとお天道様の下で新型にお目にかかれたのは8月の末。ここまで本当に長かった。

フランス車には珍しい濃いグリーンのイメージカラーを纏ったハッチバックボディは、事前に拡大化を知らされていた目にはさほど肥大感はなく、しかし面構えの異質感は確実に周囲5メートルを非日常的な空間に見せていた。
たとえそれが蒲田の裏路地でもだ。
ライバルのVWゴルフ比べてもセンパイ感が強い。フケ顔とでも言うべきか? 
いやいやこういうのをアヴァンギャルドと言うのだろう。

長年の願いが漸く

旧型と打って変わって派手な室内

ドアを開け念願のインテリアに身体を潜り込ませる。運転席側シートには膝裏をサポートするオットマンみたいなのが付いている。しかもパワーシートはエンジンをOFFにするたびに「デフォルト」の位置にヅーンと戻るエクスクルーシブな仕立て。聞けばステアリングヒーターまで付いているとのこと。
ありがとうございますとしか言いようがない。

収まってしまえば閉塞感はない

但し、パリ方面に心の底から感謝を述べたくなったのは助手席グローブボックスの拡大のほう。
やっと”使える”大きさになったことは、歴代オーナーにとってこれまでにない朗報だろう。
今までの”3”系のプジョーは、どういうわけかずっと補器類の箱がジャマして半分しか使えなかったのだから。
ついでにセンターのコンソールボックスも地獄の底まで見えてしまいそうなほど深い。すごい進歩だ。

液晶画面の見本市

運転席周りは写真で見た通り、液晶画面の見本市(死語)のような様相。

目のやり場に困る

軽でもスタンダードになりつつある液晶化は「メーターの針」なんて表現をあと数年で葬ってしまいそうな勢い。ついにプジョーにもやって来たか。
煌びやかなのは景気がいいけれど、若干眩しいし情報量が多すぎるのが難点だ。シングルタスクの人間にはちと辛い。
昔のサーブのようにどれか一個だけにフォーカスが当たるようにしてほしいものだが。
ブラインドタッチがしづらいのであまり好きではない中央の液晶画面は、それでも進化を遂げ、ショートカットを自在に設定できるのがうれしい。
タッチ領域も大きくなったから、運転中にチラ見しながらエアコンを操作しようとして別のところを触ってしまう……なんてことは格段に減るだろう。

忘れるエンジンの存在

PUSHボタンでエンジンをかけると、静粛性のケタ違いの向上に気づく。
まったく同じディーゼルエンジンを搭載している我が家のクルマでも静かだと思っていたが、さらにレベルが高い。
それはアクセルを踏んでも同じ。いつもの道をいつものペースで進んでも、エンジンが遥か遠くに置いてあるかのような錯覚に陥るほど。
ボディの遮蔽と剛性アップにかなり血道を上げたことが伺える。
その影響で窓が小さくなり開放感が若干削がれたのは残念なポイントだが……。

見事なアシの味付け

外から見る限りいかにもゴツゴツしそうなヨンゴーの18インチを履いたアシは、旧来の猫足を期待する向きには思い出補正を含めて「ちょっと違う……」と感じるだろうけれども、マンホールや段差を超えたときのショックのいなし方は見事。がっちりしたボディとの協調で上質かつフラットな乗り心地を提供してくれる。

※WebCGさん画像を拝借します・・・

どうしても猫足を求めるユーザーは”アリュール”を選ぶべきだろうと思う。
個人的に「現代プジョーの猫足基準はコレ」と勝手に決めている208アリュールの滋味深いアシとGTのアシの差異がこんな感じだったので、グレード間の相対的な味付け方はおそらく似ているだろう。

こちらが真打ち? 308アリュール(FF/8AT)
※WebCGさん画像を拝借します・・・

気になる方は焦らずに比べることをおすすめしたい。
焦らずに。そうなのだ。焦らずに待つしかないのが非常に歯痒い。
ライバルのVWゴルフより高いトータルバランスを保ち「イイモノ感」が強い今回の308。しかし昨今の状況を反映して、2022年9月時点でハッチバック/GT/1.5リッターディーゼル以外のモデルはSW(ワゴン)を含めて「いつ入ってくるかまったくわからない」ようなのだ。

待つのは(熱心な)オーナーの務め?

強くおすすめして(自分も)いろいろ比較してみたいのだが、モノがまったくないのでどうにもならないのがイマのご時世っぽい。
ネットでクルマが買える世の中になったものの、まさか肝心の部品が供給されず納車がされないとは、なんというヘッポコな未来にわれわれは立っているのだろう。

そうこうしているうちに、本国で小変更が施され、ひと昔前のフランス車好きがフガフガするようなシンプルかつシックなグレードが入ってくるかもしれない。
現在のラインナップはいささかトゥーマッチすぎるような気がするから(”オッケープジョー”の掛け声で空調がいじれる機構を誰がありがたがるのか)ぜひとも長いモデルライフの中で実現してほしいものである。