【読書日記】1/11 お正月の行事出来た?「絶滅寸前季語辞典/夏井いつき」

絶滅寸前季語辞典  
絶滅危急季語辞典
夏井 いつき (著) ちくま文庫

 昨日、「最高峰」の歳時記をご紹介して、句作用としては私には使いにくい、と書きましたが、その理由の一つは、さっぱり意味の分からない季語も大量に載っているところです。
 特に新年の巻は、その傾向が強いです。
 「大臣家大饗」「初子の玉帚」「粥柱」「穴一」などなどこれらは、「角川俳句大歳時記・新年」からぱらぱらとページをめくって適当に拾った季語ですが、これをどう扱ってよいやら検討もつかないですし、そもそも結社にも入っていない素人がこれらの季語で無理に句を詠む必要は全く無いわけです。
 だから、新年の巻は買うのをやめようかと迷ったのですが、やっぱり全五巻揃えたいという誘惑には勝てませんでした。
 歳時記を読み物としてとらえた場合には、難解季語のなんじゃこりゃ感や、へー、そうなんだ感が逆に最高なのです。

 この不思議季語を味わう醍醐味を余すことなく伝えてくれるのがこの二冊。
 プレバトの俳句の先生としてもご活躍の夏井いつき先生の著作です。膨大な季語がある中で現代では生活習慣の変化や季節感のずれなどの理由で使われなくなっていく季語も多くあります。
 先生が季語を如何に大切にしているかはTVの解説からも伝わってきますが、季語が消えていくのを惜しみ、歳時記の次の改訂で省かれてしまいそうな季語の寿命を延ばそうと試みます。
 つまり、誰も使わないから廃れるのであれば、その季語を使って良い句を詠めば歳時記に残るだろう、という着想です。
 さて、「絶滅季語」と一言でいっても絶滅しそうな理由は様々。たとえば、
 正体が分からない・・・「藍微塵」「オランダ雉隠」「われから」
 ジェンダー&コンプライアンスの問題・・・「男滝・女滝」「毒流し」「尾類馬」
 風習として廃れている・・・「畔塗」「薬狩」「除目」
 生物として滅びかけている・・・「鴇」、「シマフクロウ」
  等々。
 中には深刻な背景が隠れているものもあるのですが、それはさておき、夏井先生が「いっそトドメをさしてしまおうか」とか、「ほんとうにめんどくさい」とか、こぼしつつ絶滅寸前季語保存委員会の委員たちと一緒に難解季語・奇々怪々季語に嬉々として果敢に挑んだ記録が本書。
 笑えます。
 保存委員会の方々の詠んだ半ばやけっぱちとも思える例句や、夏井先生の軽妙な語り口がおかしくて、ケラケラではなくゲタゲタ寄りの笑い声をあげて家人に不審なまなざしを向けられております。
 なお、私の持っている文庫版の「寸前」の方が2010年、「危急」の方が2011年の出版ですが、続きが出ないかな~と10年待ち望んでいます。
 次巻の企画が出たら、ぜひ保存委員会に入会して無い知恵を絞ろう、と妄想しながら、ふと、委員会では句作だけではなくて季語を体験する活動も大事にする、ということは・・・とここまで考えて大事なことに気が付きました。
 私自身、季語の絶滅に大いに関与しておりました。
 前述したマニアック季語はともかく新年の季語の中には知っている&体験したことがあるものもあるのですが、ここ数年で親世代の高齢化もありどんどん省略してきています。
 ゆえに、子供たちに伝わっていない。私の経験は、祖父母、父母世代のおかげ。私たちの世代で途切れたら当然次の世代で絶滅するわけです。
 うーん。今からでも母にお節料理の作り方、ならおうかしら。私を飛び越えて子供たちに教えておいてもらおうかしら。
 やっぱり絶滅季語問題、根が深いです。