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【読書日記】9/2 その手で掴め。「三月のライオン17巻/羽海野チカ」

三月のライオン 17巻 羽海野チカ
白泉社

将棋、今、藤井竜王の八冠をかけた王座戦挑戦で話題ですね。

高校生棋士・桐山零を主人公とした漫画、三月のライオン、17巻が発売されました。

数年前、かめくんが、将棋に興味を持ち、将棋教室に通い始めました。
私は将棋は指せません。駒の動かし方や基本的なルールは知っていますが、それだけです。
だから「私の子どもが私にできないことをできるようになった」という初めての経験で、感慨深く見守っておりました。
私は将棋は指せませんが、その世界を多少は知りたいな、と思って読み始めた漫画でした。

将棋のこと、棋士のこと、タイトル戦のことなども話に盛り込まれているうえに、零を取り巻く人間模様も細やかに描かれているので楽しみに読んでおります。

将棋の戦法などについても楽しいイラストを交えてわかりやすく臨場感たっぷりですが、私はその辺りは申し訳ないですがさらーっと読み流して、棋士の方々の一戦一戦にかける情熱や勝負の世界の厳しさ、ライバルでもあり友でもある棋士同士の人情の機微などを楽しんでおります。

十七巻では、零と同年代で小学生からの頃のライバル、難病を抱えながら棋士としての火の玉のような魂を抱えた二階堂と戦う場面がありました。

その中で二階堂の師匠の教えが印象に残ります。
「背すじをのばせ」

これこれ そう前かがみになっちゃあ 盤の狭いトコしか見えんし 呼吸だって苦しかろう?脳みそに酸素をやらない気か?
人間 劣勢になると ただでさえ 視界が狭まる
腹まで息を吸って 姿勢を正し 四隅の香車を見ろ 全体を見るんだ
そうすりゃ ついでに頭も冷える もうけもんじゃろ?
「姿勢を正せ」はな 別に行儀の意味だけではなくってな 割と理に叶ってるんじゃよ
「まじない」と思ってやってごらん。 

二階堂の師匠の初めての教え。

窮地に立った時うつむいてしまうと視野も心もせまくなる、背筋を伸ばして、しっかりと全体を見て活路を探せ、という将棋に関係なく、覚えておきたい心構えだと思います。

また、零や二階堂の兄貴分のような棋士・島田開八段(三月のライオンに登場する棋士さんたちの中で私は島田八段が一番好き)。
苦労人で後輩棋士たちの面倒見の良い彼の本巻最後の場面の台詞にぞくっとします。
島田八段の修羅の世界に生きる闘う人の凄みが凝縮していました。
次巻が楽しみです。

そして、棋士たちの世界ともうひとつ、ひょんなことから零と知り合った川本家の三姉妹の物語も並行して進んでいきます。

本巻では長女のあかりに焦点が当てられます。
身勝手な父親が家を出て、母と祖母が相次いで亡くなり、和菓子屋三日月堂を営むおじいさんと共に年の離れた妹たち(物語開始時に中学生と保育園)を抱えた二十代前半のあかり。
母の代わりに、といつも穏やかで温かく妹たちを見守りながらも不安と哀しみを抱え続けた彼女も、自らの夢に向かって歩き出します。

与えてもらった光は失われたけれど
ならば 私が 作りましょう
今度は 私の この腕で
私の一番 好きな場所
光に満ちた あの世界を

あかりの決意。やさしくつよく

幸あれ、光あれ、と応援したくなります。
みんな、頑張れ。
明るい未来を その手で掴め。

将棋会館にて。

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