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【雑記R6】4/18 花虹式本屋の歩き方

私の4月初めのとある日の本屋散歩の記録です。

傘籤さまの記事に触発されて書いてみたくなった真似っこ記事でございます。

本屋さんに行くのは、今は一週間に一度くらいでしょうか。
電子書籍を利用することも増えましたが、本屋さんに足を運び、並んでいる本からあふれてくる「何か」を全身で浴びる「本浴」は、私の心身を整えるのに欠かせません。

ほとんどはお目当ての本を買って、新刊話書と児童書のコーナーをざっと流してくるシャワーのようなものですが、二、三か月に一度くらいはのんびりゆったりと長湯することがあります。

今回は、その「長湯」の方のご紹介です。
買いたい本を決めて行くというよりも、その時その場での出会いを楽しみに行くときの本屋さんでの過ごし方です。

私の行きつけの本屋、ジュンク堂さん。百貨店のワンフロアを占めております。訪問時から約半月が経ちましたので、棚の特集などは変更になっているかと思います。


1.第一歩で「建築知識」につかまった

エスカレーターの昇降口のすぐそば、書店員さんたちのお勧めなどが置かれているコーナーです。
この時は、雑誌「建築知識」のバックナンバーが並んでいました。
普段、建築関係は馴染みがなく、この雑誌も知らなかったのですが、表紙を見せるように並んでいたので、まず、可愛らしいイラストに興味を惹かれました。
「中世ヨーロッパの建物と街並み解説絵巻」と表紙に書いてある号があり、え、そんなの載っているの?と思わず手に取りました。
建築の様式や構造、素材や用途、名称などが詳細なイラストで説明されていて、物語の世界がぐっと現実的に感じられました。
面白いな~と他の号も見ていたのですが「平安から令和時代まで 作家の住まいと暮らし詳説絵巻」という2023年2月号を見つけました。
作家さんたちの執筆空間、文机や本の収納家具など細々と解説されていて、こんな書斎が欲しい!とむくむくと妄想が膨らんできてしまいました。
紫式部が物語の構想を練ったと言われている石山寺の図解もありました。

昔の書櫃とか文机とかの図解も素敵です

2.「ていねいな暮らし」は縁遠いけれど、眺めるのは好き。

店内散策用のレジカゴを持ってライフスタイルのコーナーへ。

まず、とりどりのガラスペンとインク、なぞり書きの本が取り揃えられているのに目がいきます。
ガラスペンに繊細な色合いのインク、こんな文房具でさらさらと詩や物語を綴れたら、と憧れます。時間と心に余裕が出来たら取り組んでみたいことのひとつです。

料理本コーナーで目立つのは、新生活に向けた「お弁当本」の特集。
「誰でも簡単」とか「朝、20分でできる」とかのうたい文句は真に受けたらだめ、というのは過去の経験で分かっているので、今更手を出すことはありません。

私は、子どもの行事の持ち物リストに書かれる「愛情弁当」という言葉が苦手でした。(さすがに中高生になるとそんな書き方はしないのでようやく解放されました)
普通に「お弁当」と書けばいいのに、何故わざわざ「愛情」をつけるのか、一体どんなお弁当を作れば「愛情」がこもっていることになるのか分かりません。

何が美味しかった?と聞いて「ミニトマト。」という答えが返ってくるお約束の展開を経て、今は、卵焼以外は市販品、というお弁当も平気で持たせています。
しかし、この時期の「さあ、愛情弁当作ろうよ」と勢揃いした弁当本の圧力に、後ろめたさはぬぐえません。

それはさておき、作るのは苦手ですが、レシピや食にまつわるエッセイや食文化の本を読むのは好きです。

今回、表紙を見せて飾られていたのが「ながののおかず」
なんと九州の端っこで長野県の郷土料理本が面陳されている!
最近、長野県の方々とnoteを通じて交流があるのでご縁を感じます。
「長野77市町村を巡ってお母さんたちから聞いた当たり前のおかずの手引書。」だそうです。

「おらほには うんめえもん えっぺあるさけ こさえてみらし」と表紙に書かれたお国言葉も面白い。
長野は上高地と松本城に行ったことがありますが、何を食べたかは忘れてしまいました。(お蕎麦は食べた。おやきも。五平餅・・・は岐阜?)
いつかもう一度遊びに行こう。と決意。

続く手芸本コーナーで刺繍本の新刊を物色。
図案本は画集のようで美しいので大好きですが、これ以上作る時間も無いのに図案ばかり増やしても仕方ないので眺めるだけにしています。

3.雑誌は一期一会を楽しむ

本屋さんでの出会いは運と縁ですが、書店に並ぶ期間の短い雑誌は特にその傾向が強いです。
棚の間を興味のある特集がされていないか確認しながら回遊していきます
源氏物語を取り上げている雑誌が多くて、まんぞく、まんぞく。

4月なので、ラジオ講座のテキストが「さあ、学ぼう」と晴れやかに呼びかけてきます。
カゴに子供用に英語教材テキストを追加。子どもたち、今度こそ真面目に学んでおくれ。

文芸誌コーナーで、「日常に『言葉』の『栞』を」をテーマにした雑誌「スピン7号」発見。
これもnote経由で知った雑誌だ~とカゴにぽん。

作家・柳美里さんの文が添えられた独特の手触りの表紙に金箔で型押しされた表題。
鮮やかな黄色のつやつやの目次の紙。
これらは、紙の専門商社・株式会社竹尾さんの現在庫限りとなった紙などを使用しているそうで、その紙の説明も添えられているのが紙モノ好きにはうれしい限り。
体裁だけでなく、執筆陣が多彩で内容も充実しているようなので読むのが楽しみです

旅行関連の雑誌は、ガイドブックや地図、旅行記など関連する書籍もまとめておかれています。
「にっぽんの花地図 神社・お寺の花と桜の絶景」(著者 はなまっぷ/角川書店)の表紙写真の艶やかなこと。心が洗われる心地がします。
一通り私が楽しんだ後で母の日のプレゼントにしよう、ともくろんで購入。
「花手水」と「花の御朱印」の特集がされていたのがうれしい。

花手水は、寺社の手水舎の水盤に花や葉を浮かべたものです。
コロナ禍に手水場の使用が制限された折に、花を飾ったのが評判を呼び、他の寺社でも追随する動きがあって流行りました。
困難の中でも人は美しいものを生み出す。その心を神仏は嘉したもうのではないかと思うのです。

きれい きれい

4.美術・芸術の棚は眼福です

私は絵が(絵も)下手です。
しかし、美術展に出かけたり、画集を眺めたりするのは大好きです。
最近は、江戸絵画も含む日本画に興味を持っています。
重くて大型の本が多く、収納上の都合を考えても、そうそう気軽にカゴにひょい、と入れられるものではありませんので、店頭であれこれ解説本や画集を楽しみました。
 
酒井抱一、鈴木其一、伊藤若冲、長澤芦雪ら江戸絵画と川瀬巴水、橋口五葉、伊藤深水などの近代版画、そして特に渡辺省亭に注目しています。

新潮社のとんぼの本、平凡社のコロナブックス、河出書房のふくろうの本などのいわゆるビジュアルブックスもここに置かれています。

「図説 花咲くアメリカ児童文学 「若草物語」から「大草原の小さな家」まで」(ふくろうの本)
私の興味は日本史に特化しておりまして、世界史に疎く、米国史もあまり詳しくありません。

先日久々に「若草物語」を読み返して、ああ、そうか、マーチ家のお父さんが従軍していたのは南北戦争だったのか。と気付いたくらいの代物です。

先住民族、奴隷として連れてこられた黒人、フロンティアスピリットを展開していく途上で消えていったアメリカ大陸の動物たち、そんな背景も踏まえてもう一度、昔読んでいたあの作品を読んでみたいと思っています。

子供の頃に気付かなかったこともたくさん。

5.詩・短歌・俳句そして向かい合わせの棚には海外文学

短歌が空前のブームらしいですし、俳句も裾野が広がっていますね。

海外文学は、数年前に比べてロシア文学、ウクライナ文学が増え、戦時下のルポなども置かれています。そのことがたまらなく切ない。

6.現代文学、ミステリ、歴史・時代小説、各社の文庫・新書棚では、無限の時間が流れてしまう

本屋大賞の時期でもあり、ノミネート本及びその作家さんの本が目立ちます。
今、積読本も増えているので、出来るだけ小説などは買わないように~と本屋さんには申し訳ないですが、立ち読みをあれこれ。

これだけ多くの本の中でNoteで教えていただいた本が見つかると、あ、これだ!と嬉しくなります。

手に取る
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noteの記事を思い浮かべる

名も知らず顔も知らぬどこかの誰かの言葉が、私の心に舞い落ちる
同じ本を読むことで、どこかの誰かの言葉が、私の中に降り積もる
あなたの言葉とわたしの言葉は、私の中で響きあい、新しい言葉が生まれる
その言葉を、私もどこかの誰かに向けて送り出す

電脳空間に紡がれていく蜘蛛の巣には、言葉という露の白珠がきらめいて、いとをかし

さて、買わないようにしよう、と思っていたのに、いつの間にか何冊か、カゴに入っておりました。
 うらはぐさ風土記/中島京子/集英社
 蝶として死す 平家物語推理抄 /羽生 飛鳥 (著)/創元推理文庫
 いちにち、古典 <とき>をめぐる日本文学誌/田中貴子/岩波新書
 向田邦子の本棚/河出書房新社 ※

※向田邦子さん、常設で特集コーナーがあります。
今まで向田邦子さんの食とか猫とか器とかをまとめたアンソロジーはありましたが、「蔵書」をテーマにしたものって意外となかったように思います。
ぱらぱらめくってみたら、源氏物語の脚本を書いた時のことを綴ったエッセイが載っていました。
向田版源氏物語、脚本は読みましたが、ドラマは視ていません。
ちなみに光源氏は沢田研二さん。女君たちは八千草薫さんはじめ名立たる女優さんたちが目白押し。視たいな~。

本は寂しがり屋なので仲間と集うのです

7.児童書・絵本 は 大人も楽しい

比較的こまめに足を運んでいますので、逆に長逗留の場合は、やや短め。
月初めには雑誌MOEの新刊をチェック。
特集が気に入ったら買うことにしています。
5月号の表紙は不思議な国のアリス。カラー原画が来日して展覧会するのに合わせた特集記事のようですね。ちなみに私は「ハートの女王」が好きです。
そのほかの特集は「藤子・F・不二雄のSF」や藤城清治、しばわんこ・・・
うん、今回は私にとって「当たり」のようなのでカゴに追加。

「あさいち」(福音館書店)
こちらは、迷わずカゴに追加。

朝市は、海でとれたもの、畑でとれたものを持ちよる商いの場。そこには潮のかおりと土のにおいがたちこめていて、人びとにとって楽しいおしゃべりと社交の場でもあります。石川県「輪島朝市」の活気ある風景を描いた、1980年刊行の本作品。令和6年能登半島地震で大きな被害を受けた被災地の、一日も早い復興への願いを込めて復刊します。本作品の利益は、能登半島地震災害義援金として、日本赤十字社に寄付いたします。

あさいち。平穏な日々が戻りますように


壊れたら戻らないのはハンプティダンプティ。壊れても復興するのは私たちの町。

8.専門書の棚は未知への扉

ジュンク堂は専門書の豊富さが特徴。
社会、人文、理工と棚と棚の間をすいすいと見て歩き、今の世間の関心事がどのようなものなのか、ざっくりと傾向を見ていきます。

<社会棚>
SDGs NISA インボイス DX 働き方改革、多様性、地政学 フレッシャーズ応援、稲盛和夫、渋沢栄一、三淵嘉子(誰?と思ったら、今の朝ドラヒロインのモデルで日本初の女性弁護士さんだそうです)…

「上司はなぜ無能なのか?」
新書の真ん中にどどんと挑発的な惹句。
「世界は経営でできている」(岩男俊兵/講談社現代新書)がタイトルですが、あおり文句がずっと目立つ。

無能で悪かったな、と思わずむっとしてしまうところが器の小ささ、無能の無能たる所以ですが、好きで無能でいるわけではないので、手に取ってみました。
内容は「仕事から家庭、恋愛、勉強、老後、科学、歴史まで、人生がうまくいかないのには理由があった! 一見経営と無関係なことに経営を見出すことで、世界の見方がガラリと変わる「一生モノの思考法」を伝授する」だそうです。

「経営」という言葉は、源氏物語にも「世話してまわる、あれこれ奔走する」という意味で使われています。
令和の今でも中小企業の「経営」は、当らずとも遠からずです。
さて、本書を読むことで「経営」の持つ意味は変わるのか。そして私は無能から脱却できるのか。

<人文棚>
本来、人文系は好きな分野なのですが、ここの本屋さんは精神世界・心理・宗教系の占める割合が多くて、ちょっと私個人の好みからは少しずれているのです。
郷土史などは、面白いのですが。
たのかんさあすごろく(鹿児島田の神すごろく そしてちょこっと宮崎へ)はやってみたい。もう田植えの季節ですしねえ。

<理工棚>
主に宇宙、生物、農業、地学、科学読み物などの分野を見ていきます。
特に生物系の読み物は、学者さんたちが対象にかける一途な情熱のエネルギーがほとばしっているようで私も元気が出る気がします。

今回は「奄美でハブを40年研究してきました」(服部 正策 (著)/ 新潮社)と「キツネとわたし ふしぎな友情」(キャサリン・レイヴン (著),梅田 智世 (訳)/早川書房)が目に留まりました。

最終的にカゴ入りしたのは「偶然の散歩」(森田 真生 (著)/ミシマ舎)
在野の数学者の森田先生の文章が私は好きです。数学自体はよく分かりませんが。森田さんの語る「数」の話には、詩情があふれています。
私はドロップ缶の中のハッカドロップみたいだ、と思っています。
昔は苦手だったけれど、きれいな白さと薄荷のすーっとした味の独特のひんやり感がくせになるというか。

学ぼう。

9.最後に「日本の島」を引き取る

カウンターでかめくんのために定期購読している「週刊日本の島」を引き取って本日の行程すべて終了です。

かめくんは、地理が好き。

今回は、全般的に源氏物語及び平安文学に関連する事柄に多く目が留まったのと、noteで交流している方々の影響を大きく感じた本屋散歩でした。

それぞれの記事でご紹介してくださった本もしくは映画の原作、お住いの地域、お好きだろうな、と思う事柄等、自分一人ではおそらく興味を持たなかったであろう本にも手が伸び、世界が確実に広がっていること、皆様との御縁のありがたみを実感しました。

そして、最後になりましたが、本屋さんはじめ、本の流通に携わる皆様、厳しい経営状況の中、今日も本を届けてくださっていることに心から感謝いたします。

本を愛する人が気軽に本を手にすることのできる日々が続きますように。

追記:この記事を書いている間に、豊後水道のあたりで大きな地震が起きました。ここ数日来、台湾、宮崎等、地震が多く発生しています。
被害にあわれた方々に心からお見舞いを申し上げます。

それ以外の地域の皆様、避難持ち出し品のチェックなどいざという時の備え、しておきましょうね。
もちろん、私も。

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