【読書日記】1/5 この道はいつか来た道?『大名倒産 /浅田次郎』

大名倒産 上・下 
浅田次郎 文春文庫

 昨日1月4日は、各界で仕事始め。それぞれの長が年頭所感を述べる場面やその要旨が報道されていました。
 その中でも注目されていたのは東京都の小池知事の「18歳以下の都民に1人あたり月5000円程度の給付を始める方針(所得制限なし)」と岸田首相の「異次元の少子化対策に挑戦」ということでしょうか。
 岸田首相の「異次元」がどの程度画期的なのか分かりませんが、今までの少子化対策は、経済的支援に偏っている気がします。
 経済的支援がありがたくないわけではないけれど、自分がもう一人生む選択をしなかったのは、そこじゃない、そう思っている子育て中の女性は少なくないのでは。もし独身だったとしたら、支援策が出来たからといって、じゃあ結婚して子供を産もうか、とはならないでしょうし。
 それに、産めよ増やせよとばかり言っていないで環境問題・エネルギー問題なども考慮して日本の適正な人口規模はどのくらいかという観点から少子化という状況を受け入れてなお持続可能な社会を構築するための生産性向上、社会保障制度の見直し、町づくりなどを検討してみたら良いのに、とも思います。今までのモデルにしがみついている段階は過ぎてしまっているのではないかと。

 そもそも、財源はどうするつもりなのか気になります。
 仮に子育て支援策が実ったとして、生まれてきたは良いけれど、莫大な借金を抱えた国を背負う未来が待っているのは辛くないか?と心配になります。
 
 この状況って、多額の借金を背負った大名家の家督をいきなり継がされた若殿・小四郎の奮闘記である『大名倒産』の世界といよいよ重なりつつあるような。
 丹生山松平家の先代は、家督を譲るにあたって今まで全く顧みなかった藩の財政を重役に聞いてびっくり、積もりに積もった膨大な借金は年間の収入が利息の支払いにも追いつかない惨状。
 それを聞いた嫡男は衝撃のあまり急死。家督は次男三男を超えて軽輩育ちの庶子である主人公・小四郎に回ってきます。先代は、隠し財産をこしらえての前代未聞の計画倒産をもくろみ、一方で何も知らされないまま人身御供のように殿様に祭り上げられた小四郎は、領地経営のコツとして老中・板倉周防守から「節倹、正確な収税、殖産興業」を教えられますが、もはや藩の財政の立て直しなど奇跡を待つほかないところまで手遅れになっています。それでも誠実に必死になり振り構わず経営再建に取り組み始めます。その愚直にも誠実な姿に少しずつ味方が増えて・・・神仏をも揺り動かす???
 武士、商人、農民、江戸の人々、宿場町の人々、領地の人々そして神仏の思惑まで絡み合って、さあ、どうなるか・・・。 上下二巻、あっという間に読んでしまいます。

 昨日の本とした「日本永代蔵」の商人たちの世界と武家の違いも際立ちます。商(あきない)も政(まつりごと)も会計に明るくないとね。