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花虹源氏覚書 道草の巻(一) 虹花内侍と姫様について

源氏物語の原文を読む!と宣言し、注釈が充実した岩波文庫なら読めるな、とセットで買い込みました。

読んだ証として現代語訳していくことにしましたが、読むだけならともかく書くとなると古文法をしっかりふまえないと太刀打ちできないので、思い切って「私の源氏物語」を構築していくことにしました。

その過程で、この物語の語り手としての「虹花内侍」とその話を聞く「姫様」が生まれました。
noteに発表することで挫折することなく第一帖「桐壷」が書き終わりました。読んでコメントを寄せてくださるみなさまのおかげです。

いまは、第二帖「帚木」に取り組んでおりますが、皆様にお披露目できるのは少し先になりそうです。
ですからちょっと道草してこの二人についてお話させていただきます。


そもそも「内侍」とは?

枕草子にて清少納言曰く
「女は 典侍、掌侍」

これだけ。潔くたった一行。清女お得意の言いっぱなし。

典侍 (ないしのすけ) は、内侍司という役所の二等官、掌侍 (ないしのじょう)は同じく三等官です。
「内侍」という場合は掌侍を指していることが多いです。

内侍司は、職員は全て女性であり、天皇に近侍して、奏請・伝宣の事にあたり、また、後宮の礼式などをつかさどった役所です。後宮職員の第一となります。後宮職以外の他の役所には女性官吏はいません。

この役所の長官は尚侍(ないしのかみ)
次第にきさきに準ずる立場と遇されるようになりました。実務に携わるというより名誉総裁のような扱いでしょうか。
源氏物語でいえば、朧月夜や玉鬘が尚侍として出仕しています。

実質上の女性官吏トップは二等官である典侍。
源氏物語に好きものの老女官として登場する「源典侍」は、実は偉いのですよ。これに気付いた時、ちょっとおののきました。

源典侍はともかく、内侍司は天皇の秘書室のような役所であり、身分のある教養礼儀作法に長けた女性たちが務めていたと思われます。

面白いな、と思うのは、三種の神器の一つである神鏡は、内侍の詰め所である「内侍処(賢所)」に安置されていたことです。
天照大神の末裔である天皇に仕え、天皇と臣下との間の言葉の仲立ち(奏請・伝宣)をする役目は、古代の神に仕える巫女の系譜で、だから神器も預かっていたのかな、と勝手に思っています。

「虹花内侍」誕生

清少納言ではありませんが、私も内侍って恰好良いな、私が平安時代に生きるなら内侍になりたいな、と思っていましたので、語り手(=私の分身)に「かつて宮中で内侍として勤めていた」という設定を与えてしまいました。

私の実像を大幅に美化してあらまほしき姿として虹花内侍を作っておりますので、時々恥ずかしくなることもあるのですが、これはこれで女優気分で楽しんでおります。

宮中を退いた後、姫様の教育係としてお屋敷に招かれ、女房名(通称)として虹花内侍と呼ばれている四十代半ばの女性です。

この時代では、流石に女性の名前を明かさないということはないのですが、由緒あるお屋敷につとめる女性は慣例として「女房名(本人の名前等+所縁ある官職名)」で呼ばれているという設定なのです。

なお、今、作品に添える雅号は「花虹」にしているので物語の名称は「花虹源氏覚書」ですが、そのまま「花虹内侍」だと流石に図々しいかな~と謎の遠慮をして、私であって私でない「虹花内侍」にしました。
字面と語呂を考慮しても「虹花内侍」の方がしっくりきたということも大きいです。

「姫様」と「虹花内侍」の時代

設定としては源氏物語の中で紡がれた世界の約千年後の時代です。
光源氏や藤壺の宮たちは実在し、その子孫たちの時代なのです

なお、この世界では、武家への政権交代は行われておりません。
時代に合わせて変化はしていますが、基本的には帝を中心とした政治がずっと行われてきました。

西洋文明との関りは、大航海時代に欧州からも船がやってきたので交流が始まりました。
ただし、世界的に植民地支配は行われておらず、文化・商業面での平和的な交流が行われています(理想論)

西洋式の生活様式や様々な科学技術も導入されており、大正や昭和初期の和洋折衷の時代を思い浮かべています。

虹花内侍と姫様がどんな屋敷に住みどんな衣装を着ているのか、自分の中でまだ曖昧でいろんなパターンを思い描いて楽しんでいます(このあたり、文字作品って便利ですね)

女性が顔を見せてはいけないとか名前を呼んではいけないという風習はこの時代はもう廃れていますし、女学校もあります。(姫様も通っています)
まだ女性の社会進出はそれほど進んでいませんが、後宮以外の役所にも初めて女性が登用されたというニュースが大きく取り上げられた時代です。

結婚形態は婿入り婚も嫁入り婚もどちらも同程度あり「妾」はかなり少なくなりました。

「姫様」は、明石中宮の子供たちの末裔です。
現在の家柄としては中の上か上の下くらい。
だから、あまりがんじがらめではなく比較的自由に育てられているのです。
御年十三才。
ちょっと勝ち気で小生意気で好奇心旺盛、素直で率直な性格です。

最初は、こんな設定は邪道かな、と心配しながら書き始めたのですが、思いのほか皆様が好意的に受け入れてくださって、あたたかい励ましのお言葉をいただきました。
その言葉をあびて、この二人は、どんどん活き活きとしてきました。
二人の姿がより明確に像を結び始め、私も愛おしくなってきて源氏以外でも何かお話が書けそうだな、などと思い始めました。源氏物語を書きながら、大事に育てていきたいと思っています。

さて、桐壷が終わり、光源氏もいよいよ「大人」として活動始めます。
閨の話など、虹花内侍はどう語るつもりなのか・・・、姫様はどう聞くのか・・・

悩みながらゆるゆると進めてまいりますので、気長にお付き合いくださいませ。

源氏物語翻訳セット

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