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【読書日記】11/2 明日も一緒にご飯を食べよう。「14ひきのかぼちゃ/いわむらかずお」

14ひきのかぼちゃ
いわむらかずお 著 童心社

11月の声を聞いたとたん、あんなにも町にあふれていたカボチャはかき消えてしまいました。
カボチャはおばけ、おばけは消える。諸行無常。

とはいえ、かぼちゃの旬はこれから。
朝夕寒くなってくると、ほくほくの食感がうれしくなってきます。ありがたく黄金色のかぼちゃをいただきましょう。

絵本でも明るい色とぽってりとした形のカボチャは大人気。
様々な名作絵本がありますが、今日は「14ひきのかぼちゃ」

おとうさん おかあさん
おじいさん おばあさん
そしてきょうだい 10ぴき
ぼくらは みんなで
14ひき かぞく

今ではうらやましいほどの大家族

この14ひきのかぞくが料理をしたり、ピクニックにいったり、遊んだりという暮らしを綴った人気シリーズです。

「14ひきのかぼちゃ」は、「いのちのつぶ」のかぼちゃのたねをまき、芽が出て葉が伸び蔓が伸び、花が咲いてちいさな実がつき、嵐に耐えて大きな実となり、みんなで収穫して様々な料理にしてみんなで食べる、その命の巡りを描いた物語。

童心社さんのnoteでこちらの記事もありました。

ごく当たり前のごく普通の暮らし。
その背景にあるのは、作者・いわむらかずおさんの戦争体験。
そのことについて、たまたま10月31日付の朝日小学生新聞で読みました。

「この暮しこそが平和」という見出しで、誕生から40年を迎えた「14ひきのシリーズ」について一面で取り上げていました。

いわむらさんの疎開先で寂しくお腹を空かせた記憶。
戦争が終わって「ばらばらだった家族とまた暮らせるようになった」幸せな気持ちを表現したのが14ひきの最初の2冊「14ひきのひっこし」「14ひきのあさごはん」だったそうです。

「この本には平和がかかれている」と出版後、評価されたといいます。
いわむらさんもその評価を喜びました。

うれしかったですね。平和とは何だろうかと改めて考えてみると、食べること、働くこと、遊ぶこと、眠ること。暮らすという基本的なことが普通にできる。それこそが平和だと思うんですね。

朝日小学生新聞の記事からいわむらかずおさんの言葉を引用。

私たちが起きて、学校や仕事に行き、帰って来て食事をしてお風呂に入って眠る、という日々の暮らしをおくっているまさに今、ウクライナ、パレスチナなどの戦火の中、そんな当たり前の暮らしを奪われた人々がいます。

自分に何ができるのか、考えれば考えるほど無力感しか感じませんが、「平和」とは何か、当たり前の暮らしの尊さを、それを踏みにじる戦の愚かしさを、こうしてささやかにでも伝えていくことはしていきたいと思っています。

10月31日はハロウィーンでした。
繁華街での馬鹿騒ぎには眉をひそめてしまいますが、仮装をして非日常を楽しむことが出来るのは、日常が当たり前にあり、それに物足りなさを感じるからこそなのでしょう。
「当たり前の暮らし」のありがたみは、失ってはじめて気づきます。
そういう意味では毎日が当たり前すぎて退屈だ、と思っているくらいがちょうど良いのかもしれません。

しかし、14ひきの物語を読むと、「普通の暮らし」が「退屈」なんて、とんでもない、ということに気付かされます。
ご飯を食べる、散歩する、家事をする、そんなことも14ひきたちの視点で見るとこんなにわくわくすることが一杯、なのです。
普通の暮らしを丁寧に行い、その中から楽しみを見つける感性を養うことが幸せの種なのかもしれません。

かぼちゃの収穫!たのしいね。うれしいね。なかまたちにもごちそう。

「この暮らしこそが平和」
その意味をしっかりとかみしめて、明日をまた迎えたいと思います。

くんちゃんのお人形。おんぶひもでおんぶしたりちいさなお布団に寝かせたり。かわいくてたまりません。

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