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音声燻製(#毎週ショートショートnote)

「あーなんでスマホ忘れちゃったんだろう、健に持ってきてもらおう」
息子の持ってきてもらうよう、駅の公衆電話から家に電話をかけた。
「自分で忘れたのが悪いんだろう。自分で取りに来いよ!(ガチャン)」
15歳の息子は反抗期真っ只中。取りに帰るか・・・

ふと公衆電話に貼られた一枚の付箋に目が行った。
「真奈へ
 連絡待つ 070-XXXX-XXXX」

「私の名前が書いてある?なんだろこれ?070-ってピッチかよ」

楽しい飲み会が終わり、いつもよりほろ酔いで家に着いた。旦那も出張中で、健も部屋でYouTube観てる。

「酔ったし、お水でも飲むか」

その時、真奈のスマホが鳴った。着信は070-XXXX-XXXX。「070-って」

「真奈か?久しぶり。元気にしているか?電話をくれよ」
昔、よく聞いた燻製器で燻したような低い声。
「パパ?」
「子育ては大変だろう。健君も反抗期かな。大丈夫だよ、お前もそうだったように、いい大人になるための通過点だよ。ハハハ、皆が元気なら何よりだ、またな」
「パパ!もっと話そうよ」

30年前、家でパパと大喧嘩して、会社に行ったパパはそのまま交通事故で亡くなった。
もっともっと話したかった。あの声で「大丈夫だよ」ともっともっと言ってほしかった。

あの燻製器で燻したような低い声で・・・

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