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塩人#毎週ショートショートnote

当社の営業一課と営業二課は昔から業績を競い合うライバルだ。

営業一課の遠藤課長は社内で「塩人(しおんちゅ)」と呼ばれている。
それは「青菜に塩」という諺に由来していると聞いたことがある。
元気な新人が営業部に配属されると遠藤課長の厳しい指導により、3日も経たずに元気がなくなってしまうからだ。最近では元気がなくなった新人にさらに厳しい指導を行い、「傷口に塩を塗っている」とも評判だ。
こんなにハラスメントにうるさい時代なのに、会社は遠藤課長を放置している。
営業部の全員が不思議に思っている。

しかし、私は知っている。

ライバルの営業二課が発注ミスで商品の納品ができず、クライアントから大きなクレームを受けている時、遠藤課長が二課の佐藤課長と話をし、一課の在庫を二課に譲り、そのクレームが無事収まったことを・・・

つまりは、遠藤課長は厳しいだけではなく、ライバルが困っている時には「敵に塩を送る」ことができる本当の「塩人」なのだ。

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