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【クー!】映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』と『クー! キン・ザ・ザ』

私には好きな挨拶がある。
『クー!』
全国各地でこの言葉が飛び交っている。ソ連SF映画の金字塔、『不思議惑星キン・ザ・ザ』がアニメーション映画としてよみがえったのが『クー! キン・ザ・ザ』。現在、各劇場で公開されており、映画館によっては、前作『不思議惑星キン・ザ・ザ』も上映されている。クー!

『クー! キン・ザ・ザ』公式HP
http://www.pan-dora.co.jp/kookindzadza/
こちらに劇場リスト、載ってます。

日本ではキン・ザ・ザ旋風が巻き起こっている、はずである。
少なくとも、私の脳内では、低気圧よりも、何なら台風よりも、反時計回りにキン・ザ・ザ星雲が渦巻いており、あのどうしようもない星でのお話に夢中なのである。実際に行きたくはないけどね。行くときはマッチを買い込まなきゃ。

ヘッドホンアンプの話? 知らんよ。

そろそろ、「クー!」を国語辞典に載せようかと各出版社が意気込んでいるに違いない。意味を書こうにも一行ほどですむだろうし。対義語は「キュー」です。

日本では、1989年、2001年、2016年と劇場公開され、今回(2021年)が4度目の劇場公開だそうだ。2016年の公開時にはデジタルリマスター版として、Blu-rayも発売されている。

http://www.pan-dora.co.jp/kin-dza-dza-kuu/

その際作られた上記の『不思議惑星キン・ザ・ザ』公式HP(アドレスの文字列もイカしてる)には、こうある。

1986年にソ連での完成時の試写では、批評家からさんざんに不評だったが、公開されるや若者の圧倒的な支持により、ソ連全土で1520万人という驚異的な動員を成し遂げ、1987年リオデジャネイロ国際映画祭でグラフィック・コンセプション特別賞を受賞し、翌1988年には、ロシアのアカデミー賞に相当するニカ賞の音楽賞と音響賞を授与されている。

1520万人って……。文句なしの大ヒットでしょう。日本での記録で言うと「ハウルの動く城」の動員数とほぼ変わらないようです。カルシファー!

2016年のデジタルリマスター版の予告篇がこちら。https://www.youtube.com/watch?v=fgd7dDgDPZI

「スター・ウォーズ」と並べられちゃったよ。世界中で(カルト的)人気を誇っているこの映画ですが、「スター・ウォーズ」と似てるところはほとんどないぞ。特撮は負けてないと思うけど。

そういえば、先日『不思議惑星キン・ザ・ザ』のBlu-rayを買ったんですよね。
現在、日本三大祭りのひとつ、「死ぬまでにこれは観ろ!2021」というキングレコードのキャンペーンが開催中です。

https://www.kingrecords.co.jp/cs/e/ekore2021/

Blu-rayやDVDを3枚買うと、更に一枚貰えるという、形式としてはかなり伝統に沿ったお祭りです。太っ腹ですね。
『キン・ザ・ザ』はもちろん、多くの怪作がラインナップされています。死ぬまでにこれら全部観るのは大変なことです。長生きしなきゃ。

そのBlu-rayの商品説明文をそのまま転載します。各通販サイトにも書いてありました。

地球よ、おまえは遠かった。
ファンが愛してやまない変な映画がよみがえった!クー!!
ソ連では1570万人を動員!『2001年宇宙の旅』も唖然の超SF巨編!

(個人的には、『2001年宇宙の旅』のほうがよっぽど唖然としちゃうのだけれど、どうだろう。)

本作は、思いがけず"空間移動装置"のボタンを押してしまい、キン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュクにワープしてしまった地球人2人が"クー"としか言わない汚い異星人たちに騙されながらも地球に帰還を試みる姿を描く、史上空前の脱力SF超大作です。
監督は名実ともにロシアを代表するゲオルキー・ダネリア。75年作品『AFONYA』は6,220万人の観客動員を記録し、もはや意味不明な領域に達してしまったロシア映画界の巨人です。そして音楽は世界的作曲家のギア・カンチェリが担当、史上最も気の抜けたサントラを作りだしてしまっています。
旧ソ連時代当時の社会や、資本主義世界に対する皮肉や風刺などが他に類をみない途方もなくゆるい脱力空間とともに展開され、『2001年宇宙の旅』(68年/スタンリー・キューブリック監督)、『惑星ソラリス』(72年/アンドレイ・タルコフスキー監督)、『未来世紀ブラジル』(85年/テリー・ギリアム監督)などの名だたるSF作品群と比較されるほどの人気を誇りつつ、実はこの世に類似作が見当たらないというまさにクーな作品です。

名文である。

何ならこの説明文が映画よりよっぽどカルト的じゃないか。この記事を書く意味ない気がするぞ。まさにクー。

脱力SF超大作とあるが、私としては、結構手に汗握った。
キン・ザ・ザ星雲から、地球は遠い。
この映画のいいところは、その遠さを物理的距離では一切表現していないところだ。
遠いのだ。地球は。
地上から宇宙までの距離が、実は東京から大洗までと変わらないのは周知の事実ですが、実際大洗は遠いし、宇宙はもっと遠く感じる。それと同じなのです。知らんけど。

その”遠さ”という感情を、この映画では存分に味わうことができる。遠さの単位として、映画の尺135分を、”1キン・ザ・ザ”と呼んでもいいかもしれない。
惑星プリュクを旅するには、この『135分』が必要だと思える。それは、私たちにとって、絶妙な遠さなのだ。なんだか頑張れば行けそうじゃないですか。

アニメ版『クー! キン・ザ・ザ』は、実写版に比べると、尺が90分と短くなっている。
このアニメ版は、ゲオルギー・ダネリヤ監督が『キン・ザ・ザ』を自らアニメ化し、現代版としてアップデートした作品だ。
実写版からキャラクターが追加されてたり、役回りが変更されていたりと、再構築されているものの、ストーリーの大筋は変わらない。(新劇場版:クー、って他にも言ってる人いそうだな)
やっぱり遠さは感じるし、本当に帰れるのか? とケ・セラ・セラ感に包まれつつも程よい絶望も感じられる、そんな映画である。
しかし、尺はかなり短くなっている。アニメ化されたことで、表現に幅が生まれ、テンポよく話が進んでいくのはあると思うが、それだけだろうか。

”1キン・ザ・ザ”が短くなったのは、もしかして、地球とあのどうしようもない星雲が更に近づいちゃったからではなかろうか。そんな気がして、最近の私はマッチを買い込もうか、悩み続けているのです。

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