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SDGs入門 村上芽・渡辺珠子

目標

前回に引き続き、ビジネスでSDGsに貢献する方法について知る。今回はバックキャスティングモデルについてアウトプットしていく。

学び


バックキャスティングモデルとは

 バックキャスティングモデルとは、前回説明したロジックモデルの右と左をひっくり返したモデルで、「ゴール」→「長期的な変化」→「中期的な変化」→「短期的な変化」→「現在取り組むべきこと」の流れで行う。SDGsの「ゴール」や「ターゲット」の達成のために、必要な条件を考え、遡っていくと、必然的に環境・社会課題起点の取り組みを考えることになる。


バックキャスティングモデルの流れ・方法

1.ゴール

 「ゴール」を設定するときは、現時点での事業に関連していなくてもよいので、あなたが(あるいはあなたの企業が)、これは自分のビジネスを通じて解決したい、と思えるもの選ぶことが重要である。
「広すぎて選べない」という場合もあるが、あまり複雑に考える必要はない。企業に対する期待が何かについてはSDGsに書いてあるし、「あなたが(自社)が大切だと思う課題になるわけだから、唐突過ぎる心配はない。

 「ゴール」を設定する前に事前の準備体操としてやっておきたいことが、「社会のお困りごと」を知り、自分の関心がある問題を「見える化」するということだ。
 まず「超高齢化と健康」「人口減少の問題」「情報格差と所得格差」などキーワードとなる問題見つける。そこから、過去1~5年分のニュースを見て、キーワードのどこに関心があるのかを理解する必要がある。「高齢化」という問題を1つとっても、農業・漁業従事者の人手不足に関心がある人もいれば、郊外の空き家問題に関心がいる人がいるように、「高齢化」という問題ひとくくりにせず、自分が最も関心がある問題を「見える化」することが必要である。その「見える化」された自分の関心こそが、自分の中から湧き上がる力となり、「大胆な変革」を必要とするSDGsの取り組みに求められている。

例)「ゴール」気温上昇を1.5度~2度未満に抑える。
→「目標13 気候変動お曜日その影響を軽減するための緊急対策を講じる」


2.長期的段階→中期的段階→短期的段階→自社のアクション

 「短期的な変化」が前回説明した「ロジックモデル」での「アウトプット」であり、「中期」「長期」がアウトカムになる。

「ロジックモデル」の場合は、現時点の製品・サービスから話をなるべく広げていって、登場人物をたくさん思い浮かべていくことが面白くすることがコツだった。
「バックキャスティングモデル」の場合は、大きなゴールから現在の取り組みまでスケールダウンしていく思考になるので、最初は「因数分解」的に考えてみることが有効である。「何と何」が起これば達成できるのかを考えるのである。

例)「長期的段階」
・エネルギー由来CO₂の削減→「ターゲット7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。」
→「ターゲット7.3 2030年までに、世界のエネルギー効率の改善率を倍増させる」

「中期的段階」
・再エネの利用率を増やす。→ 再エネ発電の拡大
・石炭の消費量を減らす。→ 石炭貿易の縮小

「短期的段階」
・維持管理人手不足
・ボイラ等の需要縮減
・石炭火力発電の縮小

「自社のアクション」
・遠隔操作事業の拡大
・技術者の再教育       →   エネルギー人材の派遣
・貿易関連人材の転職支援


迷ったときは、SDGsの精神に立ち返る

 SDGsの基本理念は「だれ一人取り残さない」である。
一直線に化石燃料を減らすことは「大胆な変革」に値するが、それだけに注目するのではなく、どんなに正しい選択であっても必ず発生する、短期的な負の影響に対する目配りが必要である。


「黄色いベスト運動」

 2018年冬、フランスで「黄色いベスト運動」と呼ばれるデモが起こったことは、ご存じだろうか。きっかけはマクロン政権下による、気候変動対策の強化への反発だった。ガソリンや軽油などに増税することで、化石燃料に頼る交通量を減らそうという政策だったが、車なしに生活できない地方の生活者や、ほかの手段にすぐに乗り換えられない低所得層などから反発が出たというわけである。
 フランスの「黄色いベスト運動」は、「だれ一人取り残さない」と「大胆な変革」の両立の難しさを教えてくれた。マクロン政権の政策強化は妥当であったはずだが、足元で深刻化していた格差問題への配慮が足りなかったために、「大胆な変革」から取り残されてしまった人から反発を受け、結局増税は延期に追い込まれてしまったのだ。
 一企業がここまで考える必要はないかもしれないが、SDGsへの貢献が「今までやってきたことと何が違うのか」という視点での頭の体操になると思われる。


SDGs17番目のゴール

 バックキャスティングモデルを含めロジックモデルのカードを並べていくと、自社でできることに限りがあることに気づく、会社の外の人で、「こんな風に動いてくれたら、うまくいくな」と思うポイントが出てきたのではないだろうか。
 そうしたところは、SDGsへの取り組みを進めるために必要なパートナー探しの手がかりになる。SDGsの17 番目のゴール本文に「グローバルパートナーシップを活性化する」とあるが、こうした新たなパートナ探しは、このゴールにも通じることになる。
 バリューチェーンとしては「顧客の累型の1つ」でも、SDGsの取り組みにおいては、新たな役割を生み出すことができるのだ。



以上。


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