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飯髙悠太 『僕らはSNSでモノを買う』のレビュー

2019年8月発売。アマゾンの検索結果で広告表示みたいに出てくるので、なんとなく読まないでいた本。

広告っていまいちな本を買わされるイメージ、ありませんか?

そんな中、『宣伝会議』でこの著者が書いていた記事が興味深く、本も読んでみようと手に取りました。

結果、毛嫌いが間違いだったことが判明。とっても参考になる内容でした。SNSに関わる業務をしている人はみな必読です。広報・宣伝・PR・マーケティング関係者も絶対に読んでおいたほうがいい本です。

ゆえにこのレビュー、長文です、あらかじめ謝っておきます、すみません。

SNSマーケティングはまだ確立されたものがない

前提として、SNSマーケティングという分野は、まだ歴史が浅く、定番となるような考え方などがありません。その分野の先駆けになろうとする筆者の意気込みが、随所で感じられました。

とはいえ、書かれていることは難しいことではなく、SNS担当になった人との対話形式という体裁で書かれており、読みやすく分かりやすい構成になっています。

SNSマーケティングで大事なことは?

そもそもの疑問として、SNSで人はモノを買うのか?とは多くの人が感じるかもしれません。

データをみると、SNSをきっかけにして購入に至った人の割合は、どの世代でも年々増えているといいます。

さらに中国ではほぼ全世代において半数以上がSNSをきっかけにして買い物をしているそうです。

中国は、スマホや情報革命といった分野において、日本よりも先進的です。スマホ決済やTikTokは言うまでもなく、情報通信分野において日本は保守的、すでに中国の後を追う状態です。

新しいものに対して中国は積極的、日本は追従的、というお国柄はたぶんに関係ありますが、いずれにしろ、日本も中国と似たような方向に向かっていく潮流があり、SNSをきっかけにした購入は今後も増えていくことはほぼ確実でしょう。

また、本書では購入動機の調査結果として、「家族・友人・知人からの推薦」が日米中どの国でもダントツの1位であることを紹介しています。いわゆるこれはクチコミになります。

SNS上のクチコミは、UGC(User Generated Contents)と言われ、このUGCをいかに増やすかがSNSマーケティングでは要になる、というのが本書の重要な主張のひとつです。

(10年くらい前まではどこの誰が書いたのか分からないレビューや口コミなんて・・・という状態だったのが、あっという間に180度変わってきたという意味でもあります)

フォロワー数は重要じゃない?

SNSというとその指標としてフォロワー数が取り上げられがちですが、フォロワーの「質」を重視すべきと説きます。

フォロワーを増やすのは、最終的にお客さんに購入してもらうための手段であり、目的ではないと。

質の低いフォロワー、つまりここではクチコミを生まず、クチコミをしても拡散力がないフォロワーのことを言いますが、そうしたフォロワーをいくら増やしても、最終的な目的達成にはつながらないから意味がない、というロジックです。

分かりやすくいえば、フォロワーが10人であっても、その10人がそれぞれ10人の家族・友人に伝えてくれるようなフォロワーであれば、それは100人のフォロワーがいるのと同等、もしくはそれ以上だという話です。

逆に100人のフォロワーがいても、その質が低ければ、つまり誰にも情報拡散してくれないような、もしくは拡散しても影響力ゼロのユーザーであれば、それは上記の10人のフォロワーのほうが意味があるということになります。

じゃあどんなフォロワーを増やせばいい?

興味深いのは、どんな種類のフォロワーを増やせばいいのか?という疑問により具体的な回答を出していること。

下記、やや長くなりますが、大事なことなので説明します。

まず、Twitterを使っているユーザーは、プライベートグラフ、ソーシャルグラフ、インタレストグラフの3つに分けられるといいます。

プライベートグラフは、LINEなどと同じようにごく近い人との交流手段として使っているユーザー。

ソーシャルグラフとは、友人・同僚や学校のサークルメンバーなど、やや広い関係の中で使っているユーザー。

インタレストグラフとは、興味・関心で結びついた人たちとの交流で使っているアカウントのことです。

で、Twitterではこれらの割合がどのくらいか?割合はそれぞれ
▼ プライベートグラフ65%
▼ ソーシャルグラフ25%
▼ インタレストグラフ10%

だといいます。

ここで大事にすべきユーザーというのは、
プライベートもしくはソーシャルグラフでツイッターを使っているアカウントで、かつ、
ツイート数の多い人
だと言います。

つまり、関係の近い人たちに対して口数多くウワサをしてくれるユーザーを大切にすべきだ(企業としてフォローやリツイート、いいねしたりすべき)というわけです。

一般的には、フォロワー数の多い、いわゆるインフルエンサーを大事にすべきように思えます。しかし、そうではない。

なぜでしょう?

ところで拡散とはどういう現象なのか?

というのは、バズ、いわゆる広い拡散が起きるときには、必ずしもそうしたインフルエンサーが絡んでいるわけではなくから(もちろん絡んでいることもある)。

プライベートやソーシャルで使っているユーザーの「強いつながり」が「数珠つなぎ」のようにつながっていくことでバズが起きている、という事実があるからです。

本書にある下記の図は、まさにこの拡散のようすをあらわしています。

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ちなみに、バズ・拡散が上図のようにして起きる、という指摘は、以前紹介した『ウェブはグループで進化する』の重要な主張のひとつでもあります。

これが10年近く前に書かれた本であることを考えると、素直に驚かされます(この本は翻訳本で、概してアメリカのほうがこうした潮流を先にとらえて紹介する傾向がある気がします)。

やや横道にそれましたが、まとめると、企業アカウントが大事にすべきユーザーは、インフルエンサーではなく、

▼ プライベートグラフやソーシャルグラフで使っているユーザー:この人たちは、フォロー数が30人から300人台の間が多く、そうしたユーザー、なおかつ、
▼ ツイート数の多いユーザー(具体的には1万ツイート以上)

だというのが具体的な指針です。

こうしたユーザーを選別していくという作業は、本気でやろうとしたらかなり地道で大変ではありますが、ひとつの指標として頭に入れておくだけでも良いと思います。

UGCを増やすには?

UGC=クチコミが大事なのは分かったけれど、じゃあどう増やせばいいのか?

この疑問への答えは、本書ではまだそれほど明確なかたち・定型としては提示されていませんでした。キャンペーンではないかたちでUGCを増やせればベスト、というのは予算が限られた多くの人が考えることだと思いますが・・・。

ただ、ユーザーが真似したくなるような投稿を、同じハッシュタグをつけて募集し、それを公式がリツイートする、というようなことは軽く紹介されており参考になります。

公式からリツイートされる、というのはやっぱり個人ユーザーにとっては嬉しいものだからです。公式からじゃなくたって嬉しいんだから、ねぇ?

このどうやってUGCを増やすのか、という点については、各社しのぎを削って考えて試行錯誤している部分だと思います(もちろんいい商品をつくる、という大前提のもとで)。

Facebookはやはり広告

Facebookについて、本書でも軽く触れられています。

内容としては、Facebookを運用するなら広告をうまく打つべし、という主張。私が社内でたびたび言っていることと同じで、ちょっと安心しましたw

ULSSASという購買プロセス

ULSSAS(ウルサス)というのは、消費者の購買プロセスに関するフレームワーク。

AIDMAやAISASなどに代わる重要なフレームワークになりえる話で、上の話のベースにはなっており、本書の主軸といえばそうなのですが、ちょっと長くなってしまったので割愛しちゃいます。

興味のある方は、本書を読んでみるか検索してみてくださいね。


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