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【エフェクターレビュー】Amptweaker/Bass Tight Fuzz Tim Lefebvre Signature

エフェクターレビュー第8回はアメリカのAmptweakerBass Tight Fuzz……、のTim Lefebvre Signatureです。

Amptweakerは元々Peaveyのエンジニアで5150とかの製作に関わっていたJames Brownという方が2009年に作ったメーカーだそうです。
日本ではあまり有名ではない気がしますが、たぶんベースよりもギターの方ではもうちょい馴染みがあるかも?どうなんでしょう?


Bass Tight Fuzzとティム・ルフェーヴル

今回紹介するペダルは、すでに廃盤となったモデルではありますが、元々はギター用だったTight Fuzzをベース用に調整したBass Tight Fuzzを、さらにベーシストのティム・ルフェーブル(Tim Lefevbre)用に調整したものになります。
情報を探すと、そもそもベース用開発のきっかけ自体、ティムさんがギター用を気に入ってAmptweaker社にコンタクトを取ってベース用をリクエストしたという経緯があるみたいですね。
ギター用との違いは、方向性はそのままに、ツマミが効く周波数帯をベース用に1オクターブ下げて調整、Dry LowのMIXを追加といった感じのようです。


シグネチャーというだけあって、ティムさんはこのペダルを長年メイン歪みのひとつとして使っています。
具体的にはテデスキ・トラックス・バンドあたり、意外な(?)ところだと、デヴィッド・ボウイの最後のアルバム『★』だったり、ウェイン・クランツ・トリオでのライブでも使っているようです。
ティムさんは関わる音楽のタイプが膨大&ペダルフリークなところもあって、ペダルの入れ替わりが異常に激しく、特に歪みは結構な種類を使い分けています。
その中でもこのペダルは長年一軍を外れることなく、↑で書いたような特に要求がきびしいであろう仕事に使っているあたり、信頼度が伺われますね。
(ティムさんのプレイだったりペダルについてはいつか別記事で書きたいと思っています)


筐体

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なかなかいかつい筐体です。
結構海外のサイトでは「戦車みたいだ」と書かれていました笑
しかも青にライムグリーン笑
個人的にはこういう不器用な感じの筐体も結構嫌いじゃないんですが、まあこのへんは好みですね。
そして、見た目を裏切らずに重い(後述)


シグネチャーモデルの仕様/通常版との違い

ギター版との違いは上で触れた通りですが、シグネチャーモデルとなれば気になるのは通常版との違いですね。
シグネチャーというと大抵はスペシャルなパーツがついていたり、ユニークな追加機能みたいなのがあったりと期待するかと思います。

ですが!このティム・ルフェーブルシグネチャーはむしろ通常版から機能を削減しています笑

どういうことかというと、通常版には元々ついていたスライドスイッチ類がカットされています。

画像を見て頂けると分かるのですが、通常版にはこんな感じでツマミの下に
・60s/70sのトーン切り替え
・ゲルマニウムとシリコンのトランジスタ切り替え
・Edge/Smoothの切り替え
ができるスイッチがついています。

シグネチャー版ではこれらの切り替えが「タイトでブライトなキャラクターの60sトーン」と「ローゲインで温かみがあるゲルマニウムトランジスタ」に固定されているとのことです。

ただ、公式がすでに情報を削除しているのもあり、Edge/Smoothがどうなっているかは情報を見つけることができませんでした。
というか、付属の説明書にも販売店に載っている情報もあんまり通常版との違いを説明しているのがないんですよね。シグネチャー版だけの仕様っぽく書いてあるのも実際は通常版でも同じだったり。
なので、今回の記事は拾える限りの情報を集めて、そのへんの情報にもなればいいなと書いています。
(本当は通常版と直接比較できればいいのですが、残念ながら両方手に入れる予算はなかったので、そのへんの比較はご勘弁を…。印象としてはSmoothかな…。
誰か知っていたら教えて下さい…!
通常版あるいはJr.版を持っているから、つきあわせて比較してみようという方も、もしいたらぜひ連絡ください笑)

その他、特別な仕様としては、すべてのツマミを12時にするとティムさんお気に入りのセッティングのひとつになります。
具体的には開発時のきっかけとなったBlack Crowesとのツアーで使っていた設定のようです。なので、大体の方向としてはトラディショナルなロックでかけっぱなしで使える音という感じですね。
BassTightFuzzをメインで使っている仕事がテデスキ・トラックス・バンドだったりするように、基本的にはこの方向で使うことが多くなるかと思います。
ただ、ジャズやヒップホップの仕事でも使っていたり、派手さよりも堅実な方向なペダルということもあって対応幅は広めです。


コントロール

通常版との違いを書いたところで、コントロールについて見ていきましょう。

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コントロールは左からVolumeToneFuzzTight、さらに少し下にはずれてDry Lowとなっています。

Volume、Tone、Fuzzはファズペダルにはよくあるコントロールなのでなんとなく分かると思うのですが、Tightは比較的珍しいかもですね。
モデル名にも使われているように、これがAmptweakerの十八番のようです。
具体的には、12時を基本に時計回りに回すことで、ファズでルーズになったアタック感調節して切れのいい歪みを得ることができます。
反時計回りに回せば、よりシンセライクな伸びのある歪みになります。
ちょうどKaslederのFreaky StoneのFatノブの反対ですね。近い機能でも回す方向から設計思想の違いが見えてくるあたり面白いですね。
地味だけど役に立つ機能です。

もうひとつ音作りで特に重要になるのはDry Lowではないかと思います。
これは上部のコントロールで作った歪みにクリーンをMIXするためのツマミなんですが、原音そのものではなく大体800Hz(〜最高でも1kHz)以下でローミドル中心の音のみになっています。
これのおかげでTightを上げて歯切れのよい歪みにしつつも、ローエンドの効いた音を出すこと可能になります。

なお、コントロールについては筐体上部のものは基本的にエフェクト音のみにかかります。
つまり、Volume、Tone、Fuzz、Tightで欲しい歪みを作って、そこにDry Lowで低音を足す、あるいは反対にDry Lowでベースになる音を作って、そこに歪みのキャラクターを足す、という設定方法が使いやすいかなと思います。
筆者の場合は、主に後者でプリアンプ的にローを作りつつ、アンプライクな歪みをわずかに足すイメージで常時オンにするのが最近のお気に入りです。


その他の機能について

その他の特色としてはまずバイパスが挙げられます。
バイパス自体はトゥルーバイパスなんですが、どうやらバッファを使っているらしく、ゲルマニウムトランジスタでありながらアクティブ/パッシブを問わずに入力することができます。なので、基本的には前段にどのペダルを置いてもOK。
楽器を選ばないのはもちろん、オクターバーにファズをかけたい時なんかに何も考えずにつなげられるというのはとても便利です。

また、このペダルにはFX Loopもついています。

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これはPre/Postが裏面のスイッチで選択可能で、繋いだペダルをBass Tight Fuzzのオンオフで一括でスイッチングすることができます。

ただ、このペダルの音すべてを通過してしまうので、ふつうに前後でつないだ音と同じなんですよね。せっかくだから、ウェットだけ通ってDry Lowを後から追加できるとかであったら、より色々な使い方ができた気がするのですが…。
とはいえ、常時オンでも十分使えるペダルということもあって、筆者はこのペダルをプリアンプ的に使って、ほかはチューナー、DIのみのミニマムサイズのボードをメインにしつつ、必要に応じて、このTight FuzzのFX Loop(Post)にエフェクターを追加して使ったりしています。
…この使い方の場合、反対にTight FuzzはオフでもLoopは常時有効な設定も欲しかったような…?笑

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また、電源周りにも気配りがされていて、9v−18vあるいは電池で駆動、最上部には電池駆動orDC電源の切り替えスイッチがについています。電池ボックスは右サイド(写真のジャック左側)にマグネット式でついていて工具なしで開閉することが可能で、このへん現場ファーストな感じですね。

他にも各ツマミの下にLEDが付いていて暗いステージでもツマミの場所が分かるようになっています。
…これに関してはツマミの方に蛍光塗料とかでつけてくれた方が見やすかった気はしますが…。踏んだときにズレないように配慮してつけられた傾斜もツマミの確認しづらさに貢献してしまってるところもあるし…笑


長所と短所

一通り機能面についてみたところで、シグネチャーと共通するBass Tight Fuzzのポイントかなと思うところを紹介したいと思います。

まずは音。
方向性としては、手持ちの歪みのなかでも特に「アンプで歪ませた、あるいは歪んだ音」に近いイメージでした。
同じヴィンテージ志向でもFreaky Stoneがよりファズらしいファズを目指したものだとすれば、Bass Tight Fuzzはオーバードライブに近いソフトでローゲインを目指してるように思います。
Low Dry(後述)がいい仕事をしてることもあって、ぶっとい低音を維持したまま、アンプ(あるいはキャビネット)で自然に歪んだようなウォームな音を出すことができます。

歪みの質はやや細かめで柔らかい感触です。細かいといってもDarkglassほどではなく、柔らかいといってもファズらしいざらつきはあるし、温度感の方向性が違うイメージです。Darkglassのようなモダンさとは反対の古いタイプの歪みで、このへんは好みとやる曲によって変わるものだとは思います。

ラインでもソリッドステートのアンプでも、アンペグだったりの真空管アンプで鳴らした時に近い音が出せてる気がして、ローゲインセッティングであればプリアンプ的に一曲かけっぱなしも全然ありです。

一方で短所もあります。
それは見た目どおりクソ重い!ということです笑
約900g。つまり1kg近くあります。
まぁ安定感と頑丈さにつながってるとも言えるんですが、昨今の流れに逆行してますね笑
さすがにアレだと思ったのか、かなり小型化したJr.バージョンもあります。機能は通常版よりやや縮小してありますが、新しい機能もあるので気になる方はこちらもぜひチェックしてみてください。
でもギター用ではさらに拡大したProというバージョンを出しているので、基本大きくしたいのかもですね…笑



オススメのデモ動画

最後にオススメのデモ動画(通常版の方)を貼っておきます。

Low Dryを利用したプリアンプ的な使い方なんかもしていて参考になるかと思います。

すでに廃盤となったモデルではあるし、ちょっと渋いタイプではあるものの、ハマる人にはかなりハマるペダルだと思います。中古では時々出ているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。


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