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カレー屋立ち上げマニュアル①~カレー屋ケプリの内部のスケッチ~

 

 このかもカフェの一連のnoteでは、兵庫県川西市でのくきたふみや(https://twitter.com/fbtfumiel)によるカレー屋を中心とした地域活性化のプロジェクトをご紹介して来た。くきたは2018年の7月7日に川西能勢口駅前でカレー屋を開業し、その活動に共鳴する人たちが、これまでに多数のカレー屋を全国で開業してきた。元々はくきたの友人であるえらいてんちょう(https://twitter.com/eraitencho)が巻き起こした「しょぼい起業」というムーブメントの一つとしてカレー屋のプロジェクトも生まれたが、実際にやって行く中で分かったのは、カレー屋は実店舗の起業形態としては初心者でもやり易く、経営者の身体さえ動けばコピー可能な面が多いということだった。この数年間で店舗経営の知見も貯まってきたため、えらいてんちょう著『しょぼい起業で生きていく』を読んで、初めてのしょぼい起業をやってみたい人向けに、例えばカレー屋を立ち上げるには具体的に何があればいいのかをイメージしてもらうためにこのnote、「カレーや立ち上げマニュアル①」を書いた。ここでは、カレー屋ケプリの内部に具体的にどういう物があるのかを詳細に紹介する。とりあえずこのnoteで紹介されている物資を揃えれば、物理的にはカレー屋を開業することができるということになる。 店舗経営は本当に色々なやり方があるので、一つの参考としてカレー屋の例をご紹介したい。



Ⅰ.カレー屋ケプリの中がどうなっているか

1.カウンターの内側


 カレー屋ケプリはカレー屋として営業できるコンパクトな形態だ。ケプリの物件は一階と二階がある木造の古い建物で、私たちはいつも一階でカレー屋を営業している。一階の広さは約20平米で、店内は大きくカウンターの内側か外側かで分けられている。ケプリのカウンターの内側には、商品であるカレーを提供するのに必要な物が置かれている。 

(1)カレーの釜とご飯の釜

 

 まずドアから見てカウンターの一番手前側に釜が二つあって、一つがカレーのルゥの釜、もう一つがご飯の釜として使われている。釜自体は一般的には保温器と呼ばれるもので、カレーのルゥは12食分入り、ご飯は5合分が入るような大きさだ。ケプリでは主にトマトチキンカレーという商品を提供していて、カレールゥの製作では、カレー粉100グラムあたり12食分のカレーができ、直径23センチ・深さ15センチの鍋で12食分のカレールゥの製作をすることになっている。 

(2)アナログの量り 

 カレーを提供するにあたってご飯を盛る時は、アナログの量りを使って目視で、小盛り・並盛・大盛りを分かり易く盛りつけることができるようになっている。これはデジタルで表示される量りだと数字を具体的に認識しなければならないので、ご飯を盛る時に毎回、頭にストレスがかかってしまう。ご飯の量については、車の運転と同じで、一目見て目分量で把握できた方が、カレーを盛る動作を反復・継続しやすいのだ。 
 カレールゥについても目分量で計っており、汁物を入れて販売するお持ち帰り用のプラスチックカップがあり、釜からお玉でルゥを掬い上げ、それに8分目まで入れれば一人前のカレーが提供できることになっている。
 カウンターの内側から客席へは銀皿に盛ったカレーを直接店員が置いて提供する。 

(3)カレー皿などの食器類 


 カウンターの背後には壁があり、壁は物が収納できる棚になっていて、そこには食器類が並んでいる。食器はカレーの大きな銀皿が10枚あるのと、カレーを食べるスプーンが10本ある。客席が5席なので、食器の個数はこれで十分だ。銀皿もスプーンも平らな形をしているので、スポンジで洗うのは簡単だ。 
 食器棚の上の段にはコップ類が置かれている。ジュースやコーヒーはよく出るので、コップも10個はある。飲料の計量のための計量カップや、コーヒーを淹れるためのビーカーや漏斗も収納されている。

(4)冷蔵庫


 カウンターの内側には業務用冷蔵庫があり、カレーのルゥを入れたタッパーが最大で4個保存されている。このタッパー1個にはルゥが6食分入るようになっていて、4個のタッパーで合計24食分のカレールゥが冷蔵庫に保存できることになる。これでケプリはカレー屋として回っているわけだが、これは、ケプリのチキンカレー粉を100g使えば12食分のカレーを大鍋で作ることができるので、製作上のちょうどいい割り切りとして、そういうことにしているのだ。
 他には、冷蔵庫の中にはチーズソースやココナッツソース、チャイの原液、アチャールというタマネギの漬物が保存されている。    
 ケプリの業務用冷蔵庫は2022年に導入された新しいもので、ケプリ程度の規模の店なら、家庭用冷蔵庫でも営業可能だ。

(5)カレー粉の原料のスパイス、コーヒー豆


 また、カウンターの内側の壁の棚の上段にはカレー粉の原材料としてのスパイスが何段にも積まれる形で収納されている。クミン、コリアンダー、ターメリック、シナモン、ブラックペッパー、山椒、ガーリック、ドライオニオン、食塩、砂糖などが、一袋500gか1kg単位でここに積まれている。カウンターの壁の棚の下段にはコーヒーの生豆も8種類ほどあり、モカ、サントス、コロンビア、キリマンジャロ、マンデリン、グアテマラ、などの豆が大きな紙袋に5kg単位で入れられ、全部で40㎏ほど収納されている。

(6)電子レンジなどの電気機械や米櫃の棚

 カウンターの内側の一番ドアと道路に近い側の壁には金属製の棚があり、上から、電子レンジ、電動ミキサー、炊飯器、米櫃が収納されている。米櫃として使っている箱はIKEAなどで安く買えるプラスチックのケースだ。
 スパイスや食器やコーヒー豆が収納されている壁側の棚と、米櫃などの金属製の棚の間には一台の冷凍庫もあり、店で使う食品が冷凍保存されている。チキンカレーの原材料である鶏肉の大きな冷凍ブロックや、野菜カレーというチキンカレーに野菜を乗せて提供するメニューのために冷凍したカット野菜などだ。

(7)食品用の袋類

 スパイスなどの棚の脇にはサランラップやチャック付きのビニール袋、カレールゥを入れるタッパーなどが保存されている箱がある。これらは店を営業して余った食品を包んだりするのに使う。  

(8)台所、洗い場

 ケプリの業務用冷蔵庫は台のような形になっており、清潔さを保てるつるつるの金属でできているので、ガスコンロやまな板を乗せる台所としても使われている。
 ケプリでは都市インフラのガスではなく、普通のガスコンロを使用してカレーを作っている。開店当初に経費削減のためにそうしていたのと、ケプリの建物が木造でガス漏れが怖く、ガスが漏れたとしても最大でもガス缶一つ分になるガスコンロの方が安全と考えたから、今でもそうすることにしている。
 台所にはお玉や茶漉しなどが掛かっており、洗い場の中には洗剤やスポンジがある。その下にはカレールゥ製作の鍋が置かれている。鍋は使う時は毎回必ず洗っている。
 ケプリでは玉ねぎを切る時だけ包丁を使うので、包丁は簡単なナイフのようなものでもいい。カレーを混ぜるヘラやしゃもじも簡単なものが置かれている。

2.客席側 

(1)パイプ椅子 

 客席側には、店に入るドア側から店の奥まで、パイプ椅子が5席並べられている。店の営業を経験していけば、一人で店を回すなら自分は大体何席までのお客さんを同時に接客できるのかが分かってくる。筆者の体感では、一人で店を営業するなら7席か8席が丁度いい。ケプリ店内も7席を置ける広さはある。ケプリは基本的に従業員が一人で店を回しているが、カウンターの内側に二人の人が居られる広さはあって、カウンターの奥では二人目の従業員がカレー粉を作るなどの作業を行っていることも多い。  

(2)メニュー表 


 メニュー表はシンプルな表記にし、ラミネートフィルムというビニール製のカバーをメニューの紙に被せ、ラミネーターという機械に通して熱でビニールを接着し、ビニールの中に紙を閉じ込めたものを用意する。 カレーのルゥはよく散るので、メニュー表は紙のままではなくビニールに閉じ込めたほうがいい。また、紙のままよりもラミネートしてクリアーな板のようになったメニュー表は、お客さんに好感を持ってもらえる。

(3)お客さんがご自身で使う物 


 カウンターの客席側には、お客さんご自分で使ってもらうための給水ボトル、紙コップ、ティッシュ、つまようじ、Pay Pay QRコード などが置かれてある。ケプリでは、これらの物をお客さん側から店員に要望されて出すのではなく、元々すぐ目に見えてお客さんがご自身で取れる位置に置くようにしている。これは、お客さんの側にも一々店員にティッシュありますか?などと聞かなければならないのは負担だし、店員の側にとっても、あるお客さんのカレーを盛っている時に別のお客さんからつまようじを渡してくれ等の要望を言われたりするのは、忙しい時はかなり負担になるからだ。そのような負担・疲労は店員の身体と頭に蓄積して行き、結果としてお客さんへの接客にもほころびが出てくる。そのような意味で、PayPayなどのQRコード決済は現金を出して計算したりする手間が店員側にとって省かれるのでありがたい。

(4)子ども食堂への募金箱  

 ケプリは子ども食堂も兼ねていて、その支援のための募金箱が、カウンター側のお客さんから見える位置に置かれてある。募金箱はかわいく親しみやすい形のもので、さりげなく置かれている。募金はもちろん任意だ。

3.店の奥①~パソコン周辺~ 


 店の奥にはパソコンがあり、簡単な事務所の機能になっている。パソコンの中のデータは主に、店のシフトや各商品の作り方のデータ、カレー粉の業務販売の見積もりの計算基準書、季節ごとのイベント出店の企画書や手順書などだ。ケプリ従有業員や関係者が共有すべきデータファイルを従業員たちが必要な時に見られるようになっている。
 パソコンの画面は壁に直接的に取り付けられていて、キーボードが白い水平の大きな台の上に置かれている。白い台は実は冷凍庫になっていて、中にはケプリやミルズの冷凍カレーが収納されている。また、パソコンの本体は冷凍庫と壁の間に挟まるようにして置かれている。
 パソコンの画面の右隣には電話機があり、ケプリの公式電話回線が引かれている。
 パソコンのモニターの上にも1立方メートルくらいの空間がある。ここには、ホームセンターに売っている、壁と壁の間に取り付けてネジを回して押し込む簡易棚が取り付けられていて、カレー粉や書類を発送したりするのに使う郵便局のレターパック一式や、ゆうパックの配達伝票、ゆうパック発送用の大きな紙袋が積まれている。また、一番奥の壁側にも収納棚が掛けられてあり、ここには領収書や文房具が収納されている。
 パソコン周辺は客席側に対して、天井から架かった柵のようなもので仕切られて見えないようになっている。柵には客席側に対して小分けの棚のような金属が6つほどかかっており、その中にはケプリの小売商品であるカレー粉が6種類ほど陳列されている。ケプリではBASEというサイトでカレー粉の通販の店も開いていて、この小売りのカレー粉を、パソコンの上に置かれているレターパックで発送する。通販サイトはこのパソコンで管理されており、従業員が毎日チェクしている。
 また、パソコン周辺と客席までは2メートルほどの距離があり、そこには日々ケプリに搬入されてくる資材の入った段ボールが時限的に置かれている。事業のための資材はケプリの二階に置くことになっているが、重い物を二階に持って上がるのは大変なので、一時的にここに滞留させることもある。   

4.店の奥②~カウンターの一番奥~  


 ケプリの店のカウンターの奥には硬い木の柱が何本か並んでおり、その上に金属製の網がかかっている。網には何個かフックがかかっており、フックには袋がぶら下げられている。袋の中にはケプリ通販で出荷する小売のカレー粉(一袋あたり2食分か3食分が多い)を詰めるビニール袋や、ケプリのカレー粉を使ってくれている全国のカレー屋にカレー粉を卸す業務販売のための大きめのビニール袋(一袋6食分か12食分が多い)が入っていて、店の中ですぐに作業ができるようになっている。また、カウンターの奥の内側の下の部分はそこまで大きくない物なら収納できる棚のようになっていて、ケプリ店頭販売のお持ち帰り用のカレー容器や、カレー粉のビニール袋を閉じる電熱シーラー、チラシなどをビニールで閉じて綺麗に加工するラミネーターの機械などが収納されている。

5.店の奥③〜ホワイトボード周辺〜


 ケプリ従業員はカウンターの奥の内側に立ってカレー粉製作をすることが多いが、この位置からまっすぐに見える店内の壁にはホワイトボードがかかっており、それにはケプリの業務販売の受注日や種類と量が記載されている。ケプリ従業員はこのホワイトボードを確認しながら毎日作業を進めている。
 ホワイトボードの下にも冷凍庫が置かれており、ケプリとミルズの冷凍カレーが保存されている。冷凍庫の上も面積があるので、業務販売のために製作されたカレー粉を100食分から300食分単位で置くことが多い。資材が入った段ボールもこの辺りに置かれるが、重い段ボールはカレー粉を置くために丁度いい台のようになるので、完成された製作物は段ボールの上にも積まれていく。  

6.空調設備


 ケプリは小さな店舗なので空調設備は家庭用エアコンを使っている。また、簡易扇風機が2台あり、一台はエアコンのそばの棒に取り付けられ、もう一台は冷蔵庫の横の床に置かれている。これは、空気を室内に循環させて、暖かい空気や冷たい空気が建物の空間の上か下に滞留しないようにするためだ。
 エアコンは奇妙な外形になっていて、空気を吸い込むところに外からフィルターが取り付けられている。これはスパイスや乾燥タマネギの粉塵がエアコンの中に入るのをできるだけ防ぐためだ。

7.二階の倉庫 


 ケプリの二階は倉庫になっていて、一階と同じだけの面積がある。二階には、カレーのお持ち帰り用のプラスチック容器のうつわと蓋がそれぞれ入った大きな段ボールが何個かあり、それが大きな容積を占めている。また、総計で40種類ほどのスパイス・茶葉・調味料・乾燥食品などが品目ごとに分類されて、段ボールの中や棚に配置されている。一階のカウンターの内側の壁の棚の上段にもカレー粉の原料のスパイスが積まれているとご紹介したが、これらのスパイスが足りなくなったら二階の段ボールから降ろしてきている。補充する時に二階の段ボールが空になれば、スパイスの卸売業者に発注することになっている。
 ケプリではIKEAで買えるプラスチック製の収納ケースを利用してカレー粉を作るが、そのケースが二階には15個ほどある。作ったカレー粉類は二階の棚に保存される。その他には、カレー粉を出荷するためのビニール袋類、商品のシールの束、店のチラシの束、使っていない炊飯器や保温械などの機械類、長期で常温保存できるサバ缶などの缶詰、缶ジュースなどがある。 

8.カレー屋の立ち上げに必要な物 

 以上の紹介の中で出てきた道具や設備の名称を整理し、またそこでは出てこなかったカレー屋経営に必要なものを列挙しよう。カレー屋はシンプルな店舗形態なので、100円ショップで手に入る道具は多く、経費削減のためにできるだけ100円ショップの物は使ってみよう。DAISOの道具は割と頑丈で頼りになることが多い。Seriaは頑丈さよりも機能性やデザイン性に優れている商品が多い。

(1)100円ショップで手に入る道具類

しゃもじ、おたま、包丁、紙コップ、布巾、タオル、カーテン、網、フック、ホワイトボード、ティッシュ、つまようじ、包丁・ナイフ、しゃもじ、ヘラ、ボウル、アナログの量り、計量カップ、スポンジ、ガラスコップ、漏斗

(キッチン用品全般や文房具、小物、ガムテープや書類関係などは、大抵100円ショップで揃えられる。)

(2)100円以上の道具類

カレーの銀皿(一枚あたり2000円)、金属のスプーン(300円)、大鍋(1000円)、お水を入れる保温ボトル(1000円)、取り付け棚(500円)、レターパック各種

(3)設備・機械類

冷蔵庫(家庭用なら2万円)、炊飯器(4000円)、エアコン(3万円)、パソコン(7万円)、照明、パイプ椅子(一脚3000円)、扇風機(3000円)、電話機(3000円)、保温機(1万円)、冷凍庫(2万円)、ガスコンロ(3000円)、ガスボンベ(一本300円)、ラミネーター(3000円)、電熱シーラー(3000円)、ミキサー(3000円)、電動コーヒーミル(15000円)、コーヒーのビーカー(1500円)

(パイプ椅子などは楽天やAmazonで購入できる。現代では店舗用品のほとんどはネット通販で手に入るので、安心して探そう。必ずほとんどの品が見つかる。)

(4)その他道具類

カレーのお持ち帰り用容器、ルゥのみのお持ち帰り容器、容器の蓋、洗剤、漂白剤、給水ボトル、タッパー、IKEAの大きいプラスチックケース、レジ袋、OPP袋(透明なA4サイズなどの袋。電熱シーラーで留めて商品を包装する)

(容器や袋類など、商品を包むための物は楽天やAmazonで買えるし、店舗用品・店舗用具の専門店でも買える。関西ならシモジマという店が有名だ。)

(5)食材

カレーの具材:トマト缶、鶏肉、タマネギ、ケプリのカレー粉(卸値)、ご飯、チーズ、ココナッツソース、コーヒー豆

(6)食品衛生責任者の資格

食品衛生責任者の資格(講習代1万円)

 以上を全て取り揃えるのに必要な資金は、概算で約25万円ほどだ。 

Ⅱ.カレー屋の店舗物件について

1.店舗物件との巡りあい

(1)どうすればいいのか? 

 店舗物件は街中にある住宅のチラシがペタペタ貼ってあるような普通の不動産屋でも紹介してくれる。気軽に不動産屋に相談しよう。どの地域で、家賃何万円までで、どれくらいの広さで、どういう設備がついている物件かということを伝えたら、不動産業者が使える検索システムで物件を探してくれる。該当した物件の情報については印刷もしてくれる。この紙は貰って集めておこう。
 日ごろから地域を歩くのは店舗をやるにあたってとてもいいことで、何気なく見つけた物件がたまたま貸店舗の張り紙が出ていて、何となくここで自分の店をやったら楽しそうだなとか、何となく成功しそうだなというイメージが湧いたら、とりあえず張り紙に書いてある連絡先に連絡してみるのがいい。他にも、閉店のお知らせをしている立地のいいお店が地域にあれば、空いたらどうなるかを気に留めておいて、物件の状況をチェックしておこう。そのような地域の情報が頭に入っていれば、不動産屋との交渉も進みやすい。地域の事をよく知っていて、地域の事を情報収集している人だと思ってもらえるからだ。 
 自分の足を使って見つけた物件にピンと来たら、その物件で店をやってみるのはいいかもしれない。地域の情報を知った上でピンと来ているので、なんやかんややれる確率は高い。 
 物件の状態については、初心者は居抜き物件を借りてみよう。居抜き物件とはカウンターや椅子などの店内設備が残された物件のことだ。反対に、中に何にも残されていないスカスカの物件のことをスケルトンという。居抜きは都内なら8万円台から、関西なら5万円台からある。それより安い物件も探したり交渉したりすれば割と見つかる。
 古い木造の物件は家賃も安く、大屋さんも、改造でも何でもしてOKと言ってくれる。このような物件は自分で補修しながらやっていかなければならないことも多いが、やっていて楽しい。   
 

(2)不動産屋との交渉

 不動産屋に行って家賃5万円の居抜きの店舗物件を紹介してくれと言えば、めんどくさがられたり嫌がられたりすることが結構ある。これは、物件を紹介しても、家賃の一ヵ月分しか不動産屋の手数料報酬にはならず、ほとんど商売にならないためだ。自分はこの地域の起業文化を育てたい、自分はこういう起業家のネットワークに関わっている、などと熱意を見せたら、面白がられて上手くいく場合が結構ある。また、古い不動産屋ではなく、地域に進出した新興の不動産屋などはとにかく顧客や地域の情報を取りたいので、手荒いが対応してくれる可能性は高い。家賃5万円だと、初月の家賃、事務手数料、保険料、敷金・礼金などを含めて、最初の契約で40万円あれば大丈夫だ。
 あるいは、地縁や知り合いの紹介など何らかの縁で大家さんと直接知り合えた場合などは交渉がしやすいかもしれない。貸物件の張り紙が不動産屋のものではなく大家さんが自分で貼っているものもあり、その場合は大家さんと直接に交渉ができる。不動産屋への手数料がかからないため、その分はお得だ。

(3)物件の選定とカレー屋経営の考慮要素 

 初めの店舗起業は家賃が低いところが良い。損益分岐点が下がるからだ。
 もう一つは立地だ。店舗はその店の商品を買いたいと思う人がいるから成立するので、店舗が消費者が気軽に買いに行ける立地にあれば、商売は成立しやすいことになる。
 この二つの条件を満たすために物件を苦労して探すのは仕事の内だと考えよう。物件との巡り合いは運もあるが、自分の足を使って探せば見つかることは多いかもしれない。

2.保健所の許可について

(1)保健所からの営業許可を取ろう

 大屋さんから物件を借りたら、次にやるべき事は保健所からの飲食業営業許可を取ることだ。これがないと飲食業を自分の物件で開業することができない。飲食業の営業許可を取るには市町村区の認定する食品衛生責任者の資格が必要になるが、これはどこの市町村区で資格を取っても構わない。食品衛生責任者の資格をとった後は、保健所の立入検査がある。保健所の職員さんが物件に実際に来て、店の設備をチェックする。許可が出れば、その日から飲食店として実際に営業をしてよい。保健所から指示されている条件を満たせば保健所の許可は必ず下りるので安心しよう。みんな飲食店はやれる。  
 

(2)食品衛生責任者の資格は早めに取ろう〜家賃との関係での営業日までの日程管理〜

 実店舗開業までは、時系列で仕事の順番を考えて、仕事を早く進めた方がいい。というのも、大家さんから鍵を渡された日から物件の中に入ることができ、且つその日から家賃がかかることになるが、保健所の許可を得なければ飲食店は営業できないからだ。物件の中を整備して営業許可条件を満たすようにしなければ、営業できないのに家賃がかかり続けるという日が続いてしまうわけだ。つまり、大家さんから鍵を渡される日より前に、食品衛生責任者の資格は取っておいた方がいいということになる。自治体の食品衛生責任者講習会のホームページを見て、講習会の参加を予約しよう。

Ⅲ.カレー屋を立ち上げた後のこと  

 カレー屋を立ち上げた後のことは、「カレー屋立ち上げマニュアル②」でご紹介したい。主にカレー屋における集客の考え方についてご紹介したいと思う。


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