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スコットランド日和①阿比留久美 Take your time.(ゆっくりやってね)

 スコットランドのエジンバラで研究生活を送っている阿比留久美さん(早稲田大学、「子どものための居場所論」)の現地レポートを連載します(月2回程度の更新予定)。
 ★「子どものための居場所論」note はこちらから読めます。
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 はじめまして。私は大学で、子どもや若者が生きられる社会や、子どもから大人への移行について研究をしています。これまで、若者支援や地域の子ども・若者の活動の現場のことを研究してきましたが、これからの若者支援や子ども・若者の活動のことを考えていくためには、海外の状況についても知り、そこからみえてきたことと照らし合わせながら日本の若者支援や子ども・若者の活動を考えていきたいと思うようになりました。

 そのため、スコットランドのユースワークを研究するために「40の手習い」で、特別研究期間(大学の教育や運営にかかわる仕事をせずに、一定期間研究に専念することができる期間で、サバティカルともいいます)を取得してスコットランドのエジンバラで1年間生活をすることにしました。

 もともとその国の文化にあかるかったわけでもなく、日本以外の土地で生活することもはじめてという私からみたスコットランドの風景、そしてスコットランドの風景から逆照射されて浮かび上がってくる日本のことを書いていきたいと思います。

 エジンバラにきて、感じたことは、まず、街の人がそんなに急いでいないということ。

 東京にいると、みんなせわしくて(地方から東京に来た人から、東京の人の歩く速度の速さにびっくりした、とたまに聞くことがあります)、人がもたついているとイライラされているのを感じますし、自分もイライラしてしまうことがあります。だから、自分の不手際で人を待たせてはいけないという気持ちが働き、もたつかないように行動する習慣がすっかり身についています。

世界遺産であるロイヤルマイルにあるセントジャイルズ大聖堂

 ですが、エジンバラに来てからはあらゆるところで日本とは勝手が違うので、たとえばスーパーマーケットのレジでの精算でも袋詰めでも、もたついてしまうことがけっこうありました。そうなると、待っている人のことが気になって、慌ててしまい、私はさらにもたついて、あたふたしてしまったりしていました。

 そんな時に、何度も言われたのが「take your time.(ゆっくりやってね)」「Don't be in a hurry.(急がなくていいよ)」という言葉です。実際、スーパーマーケットのレジでも、バスに乗る時でも、現地の人はゆったりと自分のペースで財布を出したり、うしろに人がたくさん並んでいてもあまり気にせずマイペースに行動しています。そんなことを繰り返すうちに「ああ、そうだ、そんなに急ぐことはないんだな」と腑に落ちてきて、慌てることは少なくなってきました。そして、自分自身が慌てず、落ち着いて行動できるようになると同時に、まわりの人に向けるまなざしも同じように、せかせかしたものからゆったりしたものになり、自然と寛容なものになっているように感じます。

 そのようなスコットランドでの日常の発見は、私にとって新鮮であり、数週間スコットランドで過ごすうちに、スコットランドのことがどんどん好きになっています。

 ですが、スコットランドの人から見た時には日本も魅力的な場所なようです。先日、日本に旅行に行って来たスコットランドのカップルと話していた時、彼女たちは「日本は、電車の中でもうるさくしている人がいなくて静かで、礼儀正しくて、とっても居心地がよかった。」と話していました。それに対して、わたしは「スコットランドでは、あまりみんなが周りのことを気にしないで自由に過ごしているのがいいなって思ってるんです。」とこたえ、「お互い、自分が生活してきた国と違うところをいいところだと思っているんだね、面白いね。」と笑い合いました。

 見ているものは同じでも、それに対する感じ方は人それぞれです。どれがよくて、どれが悪いということではなく、それまで自分が生きていた文化の影響を受けて人は外的な刺激を解釈していきます。スコットランドという新しい文化に触れることで感じていることを、少しずつ、みなさんと共有していきたいと思います。

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