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ハンガリー生活⑫ 春になると現れる白いふわふわ

春になって暖かくなると、ブダペストの街に白いふわふわが現れる。
木や森が近くにない街中でも、あらゆる場所で飛んでいる。

詳しい品種までは分からないが、ハンガリーではメジャーな樹木の種子らしい。日本のタンポポの綿毛のようなものだろうか。
この綿毛、寒くなるときちんと出てこなくなり、暖かくなった折にはまた一斉に現れる。植物の寒暖差を把握する能力は凄い。

ふわふわは大量に飛んでいるものの、日常生活で邪魔になるわけではない。服や洗濯物につくこともないし、視界が遮られるような密度でもない。
私も「春の風物詩だなぁ」くらいに思っていた。先週までは。

ふわふわが牙を剥いてきたのは、郊外へ向かう列車の中であった。
ハンガリーの郊外へ向かう列車は、設備が古いものも多い。つまり、冷房がついておらず、窓を開けないと暑くて乗っていられないのである。
ふわふわは、開けた窓から爽やかな風と共に、車内に侵入してくる。
列車は森の中などを走るので、結構な量である。
閉鎖空間における大量のふわふわは、隙あらば鼻や口にも入ろうとする。

植物の種子であるならば、車内や人体に入ってくる意味はない。
私もふわふわでくしゃみや咳がでそうになる。
完全にLOSE-LOSEの関係である。
植物の自身では動けないという性質は、何とも悲しい。

今週に入って、ふわふわは姿を見せなくなった。大方の種子が飛び終わり、次の成長に向けてそれぞれ根付こうとしているのだろうか。

私の鼻に入りかけた種子は、その後外に出れたのだろうか?
私に非はないものの、願わくば土の上についていてほしいと思う。


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