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人生で一番泣いた本は『スロウハイツの神様』

みなさんは「一番泣いた本」って、覚えていますか?(*この記事は過去僕が出した電子書籍エッセイ『書店員芸人 僕と本屋と本とのホントの話』の一部を抜粋し、加筆修正したものです)

「一番泣いた」というのもいろいろな基準がありますね。読んでる最中、読み終わった後、数十分泣いた小説がある人もいるでしょう。

僕はカレー沢薫先生のエッセイやマンガを読んで、笑いすぎて涙が出たこともあります。というか、僕自体かなりの泣き虫です。新垣結衣主演の映画『くちびるに歌を』(原作:中田永一)なんて開始15秒、長崎県五島列島の綺麗な景色だけで泣いてましたし。

そんな泣き虫の僕の中で「一番泣いた本」は、泣きまくってるので難しいですが、いろいろ考えた結果、選考基準は「泣いてはいけない我慢しなきゃいけない状況でも涙があふれてきた本」ということにしました。

そうなると1冊しかありません。辻村深月先生の長編小説『スロウハイツの神様』です。




10年ぐらい前、お世話になっている先輩から辻村深月先生の小説をお勧めしてもらい、『ぼくのメジャースプーン』から入り、この時期はずっと辻村深月作品ばかり読んでました。その中で「創作者」たちが主人公になっている話が『スロウハイツの神様』です。

正確に言うと、第一線で活躍する脚本家、もともと売れっ子小説家だけど、読者が人を殺したことがニュースになってしまった男。そして、マンガ家など、さまざまな創作活動でデビューを目指す「卵」の人達が住人のシェアハウスのお話。

今だと珍しくないですけど、当時はシェアハウスという言葉があまり耳馴染みがないので、たとえで手塚治虫や藤子不二雄らが住んでいた「トキワ荘」を出していたのがわかりやすくて良かったです。

あるとき、この小説を横浜のほうまで出かけたときにもっていったんです。

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