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「ビジネスはゲームからセッションへ」【一章】マーケティングの進化振り返り

<目次> 
■はじめに「これは朗報です。」
一章 マーケティングの進化振り返り
二章 マーケティング5.0以上の概念のペライチ
三章 VUCAな世界では「音楽的」であるのが強いかも
四章 もう見えて来た「音楽的」なマーケティングの兆し
五章 小規模ビジネスにおける具体的実践について
六章 そして、その先にある世界 音楽と発酵の共通点など
【補足】お笑いの世代変遷とマーケティングの変遷の相似性

【一章】マーケティングの進化振り返り

マーケティング5.0以上を仮説的に提示する前に、マーケティング1.0から4.0までを駆け足で意訳しながら振り返って参ります。「5.0」に置いても「1.0」から使われている理論やツールは必要となって来ると思いますので、改めて構造的に理解して置きたいと思います。

まずマーケティングの進化の中で「1.0」はモノを一方通行でマスに売る事でした。物質的不足を満たす為に、必要なモノを作って流通させる「生産性」を企業に消費者が求めた時代です。

「1.0」のマーケティングに求められたのは5W1Hで言うと【WHAT】です。
【何】が提供できるか、その商品・サービスのスペックを正しく広く伝え切ること。

マズローの5段階欲求説になぞらえると「生理的欲求・安全欲求」に応えることが商品・サービスの役割であり、生産者と消費者がピラミッド型の関係性の中で商品はもちろん情報も1方向にだけ太く流れていくマスプロモーションの時代。

「お客様は神様です」とか表の顔で言いながら商品提供側の企業が実は絶対神だったと言える売り手主導型のマーケット。日本では1960年代までの市場で、三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)、3C(カラーテレビ、クーラー、自家用車)などが該当商品に当たります。

活用されたプロモーションツールは、テレビやラジオのCMなどのマスメディアで、マーケティング理論としては4P分析(Product, Place, Price, Promotion)が基本をなりました。何をいくらでどこに流通させ周知徹底するか。これは今でも商品の戦略を整理する際の大切な理論。

あくまでも消費者の不足を満たすという役割を商品提供側は担っているので、水が高い所から低い所に流れていくがごとく一方通行のマーケティング1.0でした。事業者への期待は必要なモノをつくり続けることができるのかどうかでした。

そして大体物質的な不足感が解消されていく中で次の「モノからコトへ」というお題目がマーケッターの中で流行していく時代に入って行きます。

次に来たマーケティング「2.0」では、精神的不足(それは人と人との繋がりの薄さ)を埋めるコトでファン化を促進しました。消費者側は「私の為に何を提供してくれるの?」という「個別性」を商品やサービスに求めました。

それに応える形で企業も【WHO】、【誰】の為の商品・サービスかターゲットを決め差別化要素を伝えることに注力して行きます。この時に満たそうとしていたのは、5段階欲求では「社会的欲求」で、関係性はピラミッド的な一方通行の情報発信から、より「コミュニティ的」な地域のお祭り参加的な雰囲気を持つようになっていきました。

「お客様は神様です」から「お客様は一人の人です」となりました。誰に何を届けるかが大切になった買い手主導の市場。でもまだまだ商品の提供側と購入側は情報の非対称性も高く、一方通行性が残っているのは否めませんね。

1990年頃までの、ファッションブランドでの購買、SONYのウォークマンのヒット、携帯電話の台頭などの時代です。マーケティングツールとしては、マスメディアと雑誌などのセグメンテーションのできるものをメディアミックスと言いながら活用されました。

マーケティング理論では、STP分析と呼ばれる「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング」というこれまた今でもとても大切な概念が追求されて行きました。どう市場を分割し、どこに狙いを定め、どう差別化された立ち位置を確立するかということにマーケッターは知恵を絞りしのぎを削ったのです。必要としているヒトに、ちゃんと届きますように、という祈りにも似た精神状態ですね。でも、思ったようにカスタマーは分割したり、ターゲティングされたり、うまくハマってはくれないものなのでした。

それにしてもターゲティングはとても大切なので、カモシカマーケティング的には「ふたりのしんぷ」というお話をたまにします。結婚式に行くと、まず最初に「神の父」と書く「神父」さんが聖書の言葉などを使って結婚を祝福し応援してくれますね。ここで参列者が涙を流すことはよほど敬虔なキリスト教徒でもない限りはないでしょう。そして結婚式の最後です。「新しい婦人」と書く「新婦」さんがご両親やご家族に当てた一通の手紙を読みます。この時には参列者の多くがうるっと来ていると思います。つまりは、全世界に向けた「聖書」の言葉よりも、一人の女性が書いた「手紙」の方が、その届けたいターゲットがかなり狭いにも関わらず、多くの共感を生むのです。

「ターゲットは絞った方が良いです。」を伝える為の少し長めの小話ですが、真に多くの人の心に刺さるキャッチコピーやブランディングは、「誰か一人に向けた(N=1)お手紙」のようなものなのでしょうね。

そして、マーケティング「3.0」は存在価値を確認する場(リアル&オンライン)づくりでフォロワー数の獲得競争に入りました。͡この2000年付近に、やっとマーケティングは「文学性」の時代に入ります。それは、【なぜ】【WHY】その商品を買うことが、そのサービスを受けることが価値あるものなのかを伝え切らないとカスタマーが振り向いてくれなくなったからです。

【WHY】の領域にマーケティングが入り、宗教的なアプローチとも言える手法でのマーケティングが成功を収めて行きました。その最たる例は、スティーブ・ジョブスさんですね。自由意志で選択しているようで、ブランドの中に入っているカスタマーはどんどん自発的に没入していく。

もはやマーケッターがつくりだして行こうとしていたのは、信者でした。「お客様は、大切な信者です。」と言い切れる関係をアップルは創り出しiPhoneが爆発的に世界に広がって行きました。信じる者と書いて「儲かる」と書きます、とまことしやかに漢字の成り立ちも先輩から後輩へ説明されました。当時、初めて聞いた時は「なるほどー!」と思いましたよね。

マズロー的には「承認欲求」を商品・サービルが満たすようになったとも言え、優越感や貢献感を求めて消費をするカスタマーの出現でした。環境配慮やブランドコンセプトが購買動機となる、そんな環境で企業は、存在価値(Value)や目指す世界観(Vision)を明確な言語し社会的責任(CSR)戦略を打ち立て、そういった部署が出来て行きました。

そして「ブランディング」は更に事業戦略の核となり、マーケティングには多少それまでのものと被りつつ3iモデルが付与されました。

Identity アイデンティティ = 際立ったユニークさ USP(Unique Selling Proposition)とも言われます。
Image  イメージ    = 感情的な良い印象
Integrity インテグリティ = ブランドコンセプトがどこを切っても同じ顔。金太郎飴状態をつくると言えるでしょうか。

理屈は色々ありますが、つまりは事業の存在価値を徹底的に言語化することで、独自の世界観を構築し、そこに触れるカスタマーの自己肯定感をくすぐるということに企業が注力を開始し、その存在価値を伝える仕組みを作り、カスタマーが自由意志で選択しているような錯覚を生むという段階にマーケティングが入ったのが、マーケティング3.0と言えるかと思います。

マーケティング「4.0」で、初めて事業者と購入者が仲間のような関係になったと言えます。お客様は売り込む先とか巻き込む対象とか、そういう上下関係ではなく、ブランドを成長させる仲間であり推奨者と捉えられて、インフルエンサーの台頭もありました。

はじめてちゃんとした双方向性がマーケティングの中に生まれたのです。プロセスエコノミー的でもあり、【どうやって】事業が前に進んでいるかのプロセスを事業者と消費者が両方から発信する【HOW】の領域への突入です。今も多くの企業はこの領域への挑戦をスタートしたか、取り組んでいるかという状況だと考えます。

マズローの5段階欲求の中のどのニーズを満たしているかというと「自己実現欲求」であり、それは成長感を持てる消費をしているか、学びがあるかという高次のものも含まれて来ます。

マーケティング4.0は、マーケティング3.0が宗教的な関係性だったのに対して、かなりスポーツ的と言えるでしょうか。そして特に「サッカー」に近いと思います。目指すべきゴールは明確にありつつ、事業者も顧客もプレイヤーとしてポジションを持ちつつ大きなブランド戦略に沿って自律的な選択を求められているのです。

「お客様は、神様です。」というちょっと嘘くさいマーケティング1.0から見ると大分フラット化して、「お客様は、仲間です。」と心底マーケッターは感じざるを得ない状況となりました。日本では2010年以降でしょうか。

インフルエンサー活用で流行ったものが象徴的な成功事例となりますが、もう既に忘れていってしまっているものも多いですよね。化粧品などで多かったように思いますが、それ以外でもGU、無印良品、セブンスイーツ、「結果にコミットする」RIZAPなどはマーケティング4.0の成功事例と言えるでしょうか。身近な例では、発酵食堂カモシカのある「嵐山」でも一時期ですが、顔が小さく見えると評判になったバカでかい「綿あめ」屋さんに大行列が出来ていたことがありました。

マーケティングの道具としてSNSが加わり、Instagramを中心に、理論としては「AISAS」や「5a理論」が提唱されました。

どちらも1920年代から使われていたというAIDMAという古典的カスタマージャーニーがベースになっています。AIDMAは下記の頭文字で今でも新しく何かを買う時は自然と踏んでいるステップのように思います。
Attention: 注目する
Interest:  興味を持つ
Desire:  欲しくなる
Memory: 記憶する
Action:  購入する

電通の「AISAS」はSNS時代を見据えて下記のように進化させてくれました。
ネットでの検索とSNSでの情報共有が加わりました。
注意(Attention)→関心(Interest)→検索(Search)→購買(Action)→情報共有(Share)

コトラーの「5a理論」もとても似ています。
認知(Aware)→訴求(Appeal)→調査(Ask)→行動(Act)→奨励(Advocate)
電通のAISASがインターネット上の行動を前提としているのに対して、コトラーは行動をオンライン・オフラインを問わないものとして、検索は調査となっており、情報共有は奨励とされています。

コトラーは著書で実際にこんなことを言っています。
「マーケティング4.0とは、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティング・アプローチである」
「マーケティング4.0の究極の目標は、顧客を認知から奨励に進ませることである」
(出典:『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』)

コトラーは顧客が「訴求」から「調査」へ進まないのは、顧客の「好奇心」が低いからで、「行動」から「奨励」へ進まないのは、顧客の「親近度」が低いからだとしています。顧客の興味関心を高めてワクワクと好奇心を持ってもらいブランドをしっかり調べてもらい、購入後は、顧客がブランドを「あー、なんだか好きだな、このブランド」と親密な気持ちを持ってもらい、自然と周りにSNSや口コミで広めていくという流れをつくるのがマーケティング4.0。

ここまで来ると、もう一方通行の関係性はすっかり息をひそめて、ブランドの世界観や空気や企業風土までを一緒に作っていく仲間のような顧客がイメージされてきます。

言語化された領域で事業者と購入者が双方コミュニケーションを取ることがマーケティングの常識となったのがマーケティング4.0です。ただ、あくまでも「言語化された領域」「ゴールが明確な状態」という大前提があるのが、マーケティング4.0までの世界だと認識しています。

さて、ここでマーケティング1.0から4.0までを俯瞰して見ることで、次の段階にどんな世界が訪れるのか仮説を立てる土台として参ります。

マーケティング進化論 「4.0」までの比較マトリックス

■はじめに「これは朗報です。」
一章 マーケティングの進化振り返り
二章 マーケティング5.0以上の概念のペライチ
三章 VUCAな世界では「音楽的」であるのが強いかも
四章 もう見えて来た「音楽的」マーケティングの兆し
五章 小規模ビジネスにおける具体的実践について
六章 そして、その先にある世界 音楽と発酵の共通点など
【補足】お笑いの世代変遷とマーケティングの変遷の相似性

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