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Green Card 狂想曲(1)

外国人が、アメリカで合法的に滞在・就労するために避けて通れないのがビザ問題。今回はそのGreen Card取得の際に起こったもろもろのお話。

タイトルを見て察していただきたい。本当に、本当に面倒なプロセスだったのだ。ともあれ、普段はたいして役に立たない文章を書いているけれど、これはビザの種類とか諸々ご紹介することにもなるので、在米の人っぽいNote記事になるといいなぁ……と思っている次第。

Green Card -正式名称は、Permanent Resident Card。永住許可証。米国国内のみにおいて発行、更新される永住権である。市民権ではない。つまり、私はこの国に法的に暮らすことが許されているし、納税しているが、選挙権はない。そして、名前の通り緑色のカードである。因みに名前の由来は1940年代当初に採用されたカードの色がグリーンだったことに起因するらしい。ほ~ん。

そもそも、グリーンカード申請の手続きそのものが面倒な上に、私の場合は結婚前にビザを何種類か所持していたため、話がややこしい。そして、過去Noteで書いているが、アルゴは過去にもろもろあったし二人そろって逮捕された案件もある。そのうえ、付き合い始めてから入籍に至るまでの期間が12年と長い。そのため、弁護士さんに頼んで申請することにしたのだが、大都会と異なり、ここいらの田舎では国際結婚、特殊なケースでのグリーンカード申請に詳しい弁護士さんが希少だった。

流れ的には、入籍(市役所的なところで書類を出す)→正式入籍:州からの Marriage License(結婚証明書)を獲得→グリーンカード申請。入籍するまでの書類諸々で、私はもうすでに疲れていた。この件については少しばかり過去のnoteにて語っている。

入籍に必要な手続きや証明書、費用などは、永住権申請に比べたら屁でもないようなレベルであったが、それでも面倒であった。実のところ、私が長い間、アルゴと入籍しなかったのは、親から絶縁されていたので、勝手に結婚するのもなんだかなぁということもあったが、一番の理由は、入籍からグリーンカード申請の手続きがとてつもなく面倒でしかも、結構な額の費用がかかることが分かっていたからである。

学生ビザ(大学)→OTP→学生ビザ(院)→就労ビザ→グリーンカードという流れで私はこの国での法的に認められた移民生活をしているわけである。私は想定されるさまざまな手間暇を避けるために、学生ビザで過ごしている時から、就労ビザでいる間、約10年ほど、毎年、抽選永住権 に応募し続けていた。

抽選永住権というのは、要はくじ引きである。当たれば、永住権がもらえるのである。くじ引きで永住権プレゼントなんてそんな阿呆な、と思うけどあるんである。年間、計50,000件の移民ビザ(永住権・グリーンカード)が発給されるというから、期待したものの、当たらず、本当に当たりとかあんのか?と文句を言っていたら、友人はこのくじで当たり、グリーンカードを保有と知り、なるほど、あるんやな……当たり……(がくり)と思った。

で、ほかの方法は、米国への投資(EB-5)による取得。米国内の新規企業あるいは再建企業に100万ドル以上の投資を行い、2年以内に10名の米国人従業員を直接的に雇用しなければならない。……こんなん。無理。

そして、自己の才能、能力によるもの。国内あるいは世界的に有名であると証明できる「並外れた才能」を持つ人。科学、芸術、教育、事業、スポーツとか。「傑出した教授、研究家」および「世界に認められている人」。もしくは、企業の役員もしくは管理職で、その企業に過去3年の内1年以上役員もしくは管理職として雇用され、同様の業務を米国内の親会社、支社、系列会社、子会社に提供するために米国に移転できる人。……論外である。

で、米国の雇用先(スポンサー)のサポートによるもの。これは、上記の才能のある人にのみ通じること。スポーツ選手なら所属先の団体、研究者なら会社なり、大学なりが身元、身分、財力を証明、保証するもの。……全然だめである。

ということで、くじ引きに外れ続け、世界的に有名な人にもなれず、資金力と行動力のある起業家にもなれなかったため、私は配偶者(結婚)・家族による申請という形で永住権を獲得した。米国人と結婚。配偶者が申請するという形。多分、これが一番、メジャーな方法だと思われる。

うんと昔の映画だけどタイトルまんまのGreen Cardなる映画があった。初対面同士のカップルが互いのメリットのために偽装結婚するなんていう恋愛映画。9.11テロの前はかなりの人がビザのために偽装結婚してグリーンカードを取得したらしいが、今は条件が厳しくなったのでそんなケースも減少したのだというけど、そもそも書類だの、手続きだの考えると本当の結婚でもものすごく大変だから、偽装するくらいなら相手を探した方がいいよと私は声を大にして言いたい。

グリーンカード申請人は米国人であるアルゴだが、もちろんヤツが細かい書類やもろもろの証明書を集めるはずもない。5月に入籍(詳しくはこちら)し、弁護士さんを探し、全部の書類がそろい、申請書類を提出できたのは10月。その間に、何度も打ち合わせがあり、証明書集めに奔走し、移民局に何度か出向き、指紋もろもろを採取されたり、面接があったりした。で、実際にカードが手元に届いたのは、それから1年半後のことだった。しかも、こんなにも苦労したというのに、入籍してから2年未満だったため、カードの有効期限は2年。いわば仮免のようなものである(現在は10年の有効期限のものを所持)。

アルゴと出会い、付き合い始めた時、私は学生で学生ビザで入国した。大学から院へと移る間、何度か学生ビザを更新。大学を終えた時点で、院進学の諸々は決まっていたが、院プログラムが始まるまでに半年ほどのギャップがあったので、OPT(Optional Practical Training)というビザを申請。研究室の助手として働いた。

運がいいと言えば、とてもよかったのである。当時、師事していた教授は国からの研究費を持っていたので(Research Grantという。もちろん、応募して研究が国のお金を使うだけの価値があると認められた場合のみこのお金が発給される)助手として働く間は普通に給料をもらっていた。

OPTとは、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後にフルタイムで就労することができる制度。就労には学校および移民局の許可が必要で、また就労可能な職種も専攻領域と関連するものに限られる。

で、その後、院生として、再度、学生ビザに戻る。ちなみに、学生ビザは、学校からの合格通知もろもろの他に、財力(学費、暮らしていくためにかかる諸々の費用)証明が必要。大使館でインタビューもされる。期限は最長5年。9.11以降は学生ビザの申請、更新等も厳しくなった。

心と体を壊して院を辞めてからは、インターン先であった現在のオフィスで職員になったので、就労ビザ。H-1Bビザというものなのだが、取得条件は、4年制大学以上の学位か、それ相当の実務経験が必至。有効期間は通常3年で、最長6年まで延長可能。申請職種は4大卒以上の知識を必要とする専門職でなければならず、大学の学位か実務経験が申請職種に関連していなければならない。雇用主が労働市場の平均以上の賃金を支払うことも条件。

これらの条件をすべて満たしていて、細かい書類等は雇用主というか、働いているところの弁護士さんが全部やってくれたし、私はラッキーだった(再度)としか言えないのだけど、費用もすべてオフィスが払ってくれた。有効期間は通常3年で、最長6年まで延長。私は6年間マックスでこのビザを使った。

院を中退した時点で母を始めとする親族は、何故帰国しない?と謎に思い、批判されたがアルゴがいたのが第1の理由。そして、棚からぼた餅ではないが、ほんな風に始まった自分の職歴、キャリアを積みたかったというのも理由。そもそも心理学部というのはあまり潰しがきかないのである。そんなんなのに、心理学を大学、院で勉強した、臨床経験(カウンセリング)の経験がある、大学という環境で研究者のキャリアが活かせる。と、そんなお仕事なので自分(と、親の助け)により築きあげた『何か』を形にしたかったのである。

前政権の折、オレンジ髪の大統領は移民排斥傾向にあったので、色々な移民に対する法令が出たり、激しい取り締まり等があった。私はそれらのニュースをとても複雑な気持ちで眺めていた。いろんな人に、いろんな状況があって、不法滞在や不法就労していたのだろう。経済的にビザの申請ができない人たちがいるのもわかる。親子が引き離されたり、子供が収容施設で泣き、寒さに凍えている映像は心が痛んだし、見るに堪えなかった。永住権に限らず、いろんなビザにおいて、取得条件が厳しいのもわかる……と、頭の中ではわかっている。

わかっているのだけど。私は、ビザの更新、切り替えがあるたびに時間、お金、労力を使いきちんと手続きしてきたし、就労ビザの時は一旦、アメリカを出たら日本で手続きを踏まない限りは再入国ができない、そして手続きが必ずしも認められるわけではないし、プロセスするのにどれくらい時間がかかるかもわからない、と言われていたため、6年間、アメリカ国外にはでなかった。そのため、大好きだった母方の祖母の死去にも立ち会えなかった。

だから……というわけではないけど、頭ではわかっていても(不法滞在の状況に色々な事情があること)どうしても、「ゆーて、違法やんけ」とか「親なら自分が無理でも、せめて子供の将来と安全保障のためにちゃんとしてあげなさいよ」などと思ってしまうのだ。

(続)






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