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まま、あい、いろいろ、すこしこわいはなし、もうそう


 くらいくらい、ちょっとくさい。かわくさい、かれいしゅう。うーんせまい、はいりこむんじゃなかった。おまけに「あのひと」があるくたびにぼくのからだもゆられるわね。ふざけんな!!



「、、、」



「あのひと」がふつうさいずのてさげかばんをあけた。ひかりでぼくのめがくらくらちんぽ。



「、、
ひっっっっっ‼︎‼︎‼︎‼︎
、、︎」



「あのひと」はこえにならないこえをおとした。



「、、
バッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎
、、︎」



 そしてかばんをいそいでしめる。とてもあせっているんだろな。はしっているんだろな。からだがやたらゆれるもん。ぼくもそのせいであせかいてきた。かばんのなかでぼくのあせとかわがくっついて、とんでもないにおいになっている。とてもくさい。


「、、、」



 ぼくはじゅうりょくをうしなった。「あのひと」はかばんをなげすてたきがする。そしてきょうれつないんりょくにきゃっちされて、ひきよせられて、ぼくのからだはとてもいたい。ふはいしゅうとともに、ぼくはとなりのうちゅうにとばされた。



「、、、」



 私は何か見えるはずが無いものを見た、気がする。「あの子」がなんで自宅にいたのか、成猫ほどしかない小さなカバンの中にどの様にして入り込んだのか、何もかも分からないことだらけだ。これは夢なのか、それとも幻覚なのか、私は白日夢の思考の中を泳ぎつつ家に帰る。

「とりあえず暖かいカモミールティーでも飲もう。」

 床の木の香りと橙色の優しい照明、少し冷えた部屋には何故か温もりがある、帰宅した「そこ」はいつも通りの私の部屋だった。気のせいだった、当たり前だ、そうに決まっている、捨てたはずのカバンがそこにあったことが、それをよりリアルな実感へと変えてくれた。難破船は岸にたどり着く。私は生きている。いつもの日常に戻る準備をする為に、私は水道の蛇口に手をかけた。


「、、、」




 つめたーい、くらいくらいきんぞくとえきたいのうちゅう。ぼくはそこにはきだされたせいえきやろうだ。こどくをかんじるはずのくうかんなのに、ひとりぢゃないってそんなきがした。くらいから、やっぱりなにもわからないけどね。


「うまれた」


 こだまする。そういうこと。お、お、お、なんかうごいているぞ、おれはひとりぢゃない?こわいこわい、こわくない。いたいのはもういやだね。ふしぎだなふしぎだな、そしてじゅうりょくのかわりに、ぼくはやっぱりいんりょくをてにする。



「ジャー、、、、、
ヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌル‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」




 こうしてぼくはうまれた。いろいろなところから。といれのすいどー、きっちん、せんめん、おふろ、ぜーんぶから、ぼくがうまれたよ。それどころか、おふろながすところ、といれのべんきとか、そういうのもぜーんぶぎゃくりゅうして、ぼくがうまれてるみたい。やっぱりぼくはひとりぢゃなかった!やったね!なのになぜか、かなしいきぶん。あのひとはなんであんなにおどろきこわがっているんだろー。


「...」


「......」


「.........」


 どーしてあのひとはなにもいわないんだろー。ぼくはかんげーされてないこなのかな?かなしいな。ひとりぢゃなくても、やっぱり「あのひと」にきらわれたらかなしいや。





「、、、」




 脳が游いでいる。そこには重力も引力もない。私は統合失調症なのか。身体が重く軽く、気候は暑く寒い。家中の水場という水場からは液体状の「あの子」が次々と流れ出ている。蛇口を閉めようにも、身体に重力がない。

 やはり、あの子は溢れ出し続けているようだ。家は次々と浸水してゆく。身体に纏わりつく感覚が心地良いのか悪いのか、誰にも、何も理解できない。怖いという感情は三途の川の向こう側に流してしまうことにしよう。その方が良い。そう海馬が教えてくれている、らしい。



「、、、」


「ままって、よんでいい?」


「、、、」



 ぼくはままがほしいのかな。ながれでるぼくはあのいえを、「あのひと」をなぜかしっていて、それでもってごっくんしていくの。「あのひと」はわけがわからないっていうかんじのぜつぼーがおで、ていこうすることもあきらめて、のみこまれてくれたよ。うふうふ、よかったね、たぶん、よかったね、たぶん、ぜったい。なのに、なんでだろー、とってもねむいなぁ、ぼくはいまうまれて、めざめたはずなのに、どうしてかなぁ。あーあ、またじゅうりょくがなくなっていく。そしてつぎはどこのうちゅうにいくんだろ。あーあ、このまましんじゃいたいな。あーあ。あーあ。あーあ。あーあ。



「、、、」



 3時25分、か...。寝ていた。

 僅かな線香の香りと僅かな木枯らしがある、そして特に何もない、それで良い。カーテンは揺らめく、寒そうに、ずっとずっと。寝返りを止めるのは貴方なのか。大量の汗と不釣り合い、体温のような嫌な温もりとも。そして、私は布団をそっと捲り上げる。



 そこには...








「あの子」がいた。





「まま。こんにちは」





 そして私は...





「うん、こんにちは...」




「、、、」




 夜の太陽を見ていた。重力のない部屋で。私は水と宇宙を見る。なんだかなぜか、とても眠い。おはようのない、おやすみ、おはようのない、おやみす、こだましている。





「、、、」





 ほらね、やっぱりよかったでしょ?うふふ、やっぱりね、やっぱりね、ぼくっていいこ?すごいこ?ままはほめてくれるかなぁ、ほめてほしいなぁ、かなしいなぁ、うれしぃなぁ、なんもおれわからんけどね!うふふ、うふふふふ。じゃあ。







「「おやすみ」」





「、、、」





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