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宝箱の思い出

年末年始の長期休みのときのこと。

部屋の引き出しの中を、年末恒例大掃除をしていたら目に入ったもの。

「まだ捨ててなかった……」

そうつぶやいて、私は掃除中の引き出しの中から金色の小さな宝箱を取り出しました。


その宝箱は金属製で小さいですが、開閉できるようになっていて、中にちょっとしたものを入れることもできます。

この金色の宝箱を手に入れたのは、私がまだ小学生のころの話です。


この宝箱が私のものになったのは、たしか小学3年生のとき。

私の当時通っていた小学校は、ひとクラス30人近い大人数が一緒に生活するような、いわゆるマンモス校。

ひと部屋に30人もいると、それはまぁいろいろな性格の子たちがいるわけで。

私のクラスにも、"問題児"といわれるようなタイプの子がいました。


その男の子は感情の起伏が激しい子で、クラスの友達ともよく喧嘩をしていました。

友達同士で喧嘩することが多く、その度に教室内で大きな声をあげるため、それを先生が止めに入るのも日常茶飯事。

そして、その男の子はキレると大声で怒鳴るところがあり、おとなしいタイプの私は怖かったので、とにかく関わらないようにしていたと思います。


そんな中、あるとき席替えでその男の子と運悪く、隣り同士になってしまったのです!

「怒鳴られるのではないか」

とドキドキしながら、なんとか帰りの時間を迎えると、私が帰ろうとするより先に、隣りに座った彼が声をかけてきました。


小学3年生の出来事なので、現在27の私にとってはもうずいぶん前の話。

今まで席替えをして声を、それも、他のクラスメイトの男の子がするような、からかうそぶりもなく、ふつうに声をかけてくれた彼に正直おどろいてしまい、当時のやりとりは全くといっていいほど覚えていません……。


ただ、その会話中、彼が突然金色の宝箱の話を私にしてきた部分だけは、なぜか今でも覚えています。

「………あっ!

そういえば金色の宝箱のマスコット持ってるんだけど、よかったら明日持ってくるね!」


次の日、約束どおり彼が持って来た金色をした金属製の宝箱のマスコットを受け取りましたが、この状況がよくわからず、とりあえず

「ありがとう」

とだけは返していたと思います。


そのあとも、彼が切れて怒鳴ることがなくなることはありませんでしたが、あるときテストの最中、突然怒りだした彼は気持ちが落ち着いたころ、私へ近づき

「さっきは怒鳴っちゃってごめんね。」

と、小声で謝りに来ました。

それまでは、キレたら周りを気にせず、とにかく大声で怒鳴り散らすだけの問題児だったあの彼が。

私に対してだけ態度が変わる彼の変化に、誰よりも早く気がついたのは周りの先生たちでした。


その後の社会科見学で整列するとき、彼と私はなぜか1番前の最前列に2列で並ばされました。

当時の私に友達がいなかったわけではないのですが、学校行事はいつも1人になってしまうことが多かったので、たくさん声をかけてくれるのがうれしくて、周りの目なんて気にもとめていなかったと思います。

以来、私たちはその学年が終わるまで、並ぶときは基本、最前列に2人で並ばされていたような気がします……。


それから学年が上がり、クラス替えで別々のクラスになると、彼と話す機会もなく、たまに廊下で友達とふざけ合う彼とすれちがうことはあっても、あのときのように声をかけてくることは二度とありませんでした。


私のところに残された金色の宝箱を見ると、あのときの出来事をやっぱり思い出すのですが、なぜか未だに捨てられずにいます。

#日記 #学校 #学校の思い出 #思い出 #小学校の思い出 #幼い頃の思い出

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