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肉食系女児

昼食には火を使わない事をポリシーとしている。土曜日の昼は、冷凍しておいたケンタッキーフライドチキン(以下ケンチキ)のオリジナルチキンを出した。

余談だが、ケンチキほど略称の流派が分かれる全国チェーンは無いのでは。ケンタッキー、ケンチキ、KFC、ケンタ、etc...

これまで我が家では、子ども達にはいつもチキンナゲットを与えてきた。ケンチキのナゲットは柔らかくて美味しいんです。
この度ついに、オリジナルチキン・デビューの娘たち。さぁ、これが天下のケンチキ様だ、しかと味わえ。

部位は恐らくサイ(腰)、油たっぷり贅沢なお肉。1ピースを三人で分け合うのはなんだかひもじいな。適当に切り分けたりほぐしたりして、肉と衣が同じ配分になるようにして(気持ち、わたしの取り分は多めに)皿に乗せた。

これ何?と四歳の長女。
ケンタッキーのお肉?ふーん、食べてみる!
美味しい!美味しい!

大喜びだ。味、すんごい濃いもんね。
一方、警戒しつつ手を伸ばした一歳九ヶ月の次女。ひと口食べるやいなや、目の色が変わった。一心不乱に口に運び続ける。元来肉好きなのだが、凄まじい勢いだ。さすが天下無双のケンチキ様。あっという間に食べ終えた。皿に残っている芋の天ぷらを食べさせると、もっさもっさと噛み砕き、粉々にして吐き捨てた。食感が気に食わんらしい。

そして、わたしの皿の肉を指差して
コエ!コエ!!と訴えてくる。「これ」、つまりはよこせ、と。
長女は芋の天ぷらの方が好きらしく、「次女ちゃん食べないなら残ったのちょーだい」と言いだす。是非そうしてくれ。

わたしは、骨の周りに残っているなけなしの肉をこそぎ、次女に分け与える。母の取り分はほとんど無くなった。それも瞬殺、満足いかぬ肉食女児は最終的にわたしの皿からチキンの骨を奪い取り、むしゃぶりついた。まさに骨の髄まで、だ。結局わたしの肉はほとんど奪われやるせない思いだったが、ここまで食い尽くすならばむしろ彼女に与えるべきだ。鶏も心置きなく成仏するだろう。

改めて次女を見つめる。口の周りを油でテラテラさせながら、骨にしゃぶりつく獣のような我が子の形相に、言葉を失った。生き物としての本質を見た気がした。大丈夫、この子は強く生きていく。

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