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子どもの選択を受け入れたら奇跡が起きた

私には2人の息子がいる。

今は高校生の長男は、
小学生の頃から側湾症を患っている。

きっかけは小学校での側湾症の検査に引っかかったからだ。

たまたま、発達障害のかかりつけ医の病院が大きな病院だったので、
側湾症でも整形外科でお世話になることにした。

半年に1回の受診。
ちょうど身長がぐっと伸びる時期だったので、
背骨は、
真っ直ぐになったり、反対方向になったりと色々であった。

「様子を見ましょう。」

これが整形外科医のお決まりの言葉だった。

ところが、長男中2の夏。
いつものようにレントゲン画像を見ていた医師が、厳しい表情になった。

医師は私と長男に、
「背骨の曲がりが酷くなっています。」
「コルセット装着した方がいいですね。」

曲がりが25度以上になるとコルセットを装着したほうが良いらしい。

私はそれを聞いて
困ったな、
と思ってしまった。

というのも、
長男は、中1の夏から不登校で、学校には時々登校するものの、
発達障害やゲーム依存で児童精神科医にカウンセリングを受けている状況。
思春期の反抗期と重なり、
果たして素直にコルセット装着を受け入れられるか、不安になった。

医師の話を聞いていた長男はというと、
「とりあえず装着してみようかな。」
というので、装具を作っている所で、寸法合わせをした。

後日、仮のものが出来たからと連絡が来たので、受診して装具つけてみたら、、、

長男は
「痛い、痛い!
こんな苦しいものなんてつけられない!」
と、大声で叫んだ。
整形外科の診察で、医師が
「コルセットをつけないと背骨が大きく曲がって、大人になって大変なことになるよ!」
と、長男に諭すと
前日寝不足だったせいか分からないが、
長男は、目を釣り上げて
「俺を殺す気か!.…etc」
等など、私が耳を塞ぎたくなる様な暴言を吐いた。
正直、暴れ出したらどうしようと思った。
家では感情を抑えられないことも多々あるからだ。
幸いそこまでは至らなかった。
さすがに長男も家ではない事は分かっていたのだろう。

こういう場面で成長を感じるというのもなんとも言えず、、、

長男の様子を見ていた医師はというと、
さすが冷静さを保っていた。
医師は親である私の方を向いて、
「まあそこまで拒否するなら、装着しなくて良いですよ。
大人になって手術をする方向で考えましょう。」
と、極めて大人な対応をしてくれた。
親として、すみません、すみません、と言いながら病院を後にした。

“側湾症に対して何もしない”
これがこの時点の長男の選択であった。

私の本音は
“コルセット装着を頑張って欲しい”だった。
大人になってからの手術は、
ネットで調べても大変で体に負担がかかりそうであった。コルセット着用で、背骨が曲がるのを大人になるまでにどうにかさせてあげたかった。

だが、
思春期で背も力もある息子に拒否られたら、親は体力的になすすべがない。

後ろ向きに息子の選択を受け入れざるを得なかった。


ところが、ここから好転していく。

私の息子達が当時二人共不登校で、
その時に参加していた、
“不登校バドミントン”のコーチが、
側湾症をたくさん扱っている理学療法士さんの居る病院を紹介してくれたのだ。

コーチには長男の側湾症の事は話をしていた。
ある時のバドミントン中にコーチが長男に
「リハビリを受ける気はある?
受けるとなると、コルセットのように途中でやめるのは難しいよ。
あなたが本気で取り組むなら紹介してあげる。」
と言ったそうだ。

これに対して長男は
「本気でやるからリハビリ受けたい。」
と答えたらしい。

コーチに
「お母さん、連絡したからとにかく行って!」

と言われるがままに、
隣市の整形外科を受診した。

そして、紹介してくださった理学療法士さんによる、
月2回のリハビリが始まった。

正直、長男が家でやっている様にあまり見えなかったのだが、

リハビリを続けていくことで奇跡が起こった。

約一年後のいつもの整形外科でのレントゲン検査で、
側湾が改善されたのだ。

傾きは5度以下。
コルセットは必要ない値にまで良くなっていた。

診察室で検査結果を聞いて
当時中3だった長男と目を合わせると、
互いに笑みがこぼれた。


その1年後の先日の定期検診でも変わりがなく、
ありがたい事に、
身長が止まったら経過観察も終了予定だ。

あの時の長男の選択は、決して前向きでは無かった。
キツイ事を避ける、逃げる。
そんな選択であっただろう。

だが、“あきらめる”選択が後の展開に繋がっていくなんて、私も長男も思いもしなかった。

今回のこの出来事は、
キツイ、しんどいことが正しい選択ではないことを教えてくれた。
むしろ諦めることで違う選択肢を選ぶことができるのだ。

そして、何より、
長男の選択を受け入れた私自身の気持ちが変わった。
当時は何となく長男の力に屈した様な気持ちではあった。
だが思春期も終わりが見えてきた今は長男の意見をフラットに受け止める事が出来るようになったと思う。

選択に良いも悪いもないのだ。

#あの選択をしたから

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