ありがとうを忘れた少年

太陽が照りつける、ある夏の昼下がり、少年は道に立っていた。
身なりがとても、貧しそうな少年に、道行く人達は「それ」を与えてくれた。そうした日々が続いたある日、一つも「それ」を貰えない日があった。
少年はそこで怒りを覚えた。「なんでいつもくれるのに今日は誰もくれないんだ」少年は、泣き喚きた。
するとそれを見かねた紳士が、少年に「それ」をくれた。
その時の少年に感謝の気持ちはなかった。くれて当たり前なんだと、少年は思った。
その後、少年に「それ」を与えてくれる人は、誰ひとりいなくなった。
始め少年はとても怒り叫んでいたが、少年の心には次第に後悔が湧いてきた。
あの時感謝をしていれば、こうならなかったかもしれない。しかし、ただ立ち後悔をしていても、誰も「それ」を与えてくれない。
少年は「それ」を誰もくれないなら、自分が頑張って貰えるように動こうとおもった。しかし、少年がどんなに頑張っても、誰も見向きすらしない。「あいつは感謝の心がない。今だって頑張っているフリをしているだけだ、騙されるな」そんな声を聞いて、少年は頑張る事をやめた。誰も「それ」をくれないなら頑張る意味がないと少年は頭の中で思った。
そう少年は本当の意味では、頑張っていなかったのだ。ただ「それ」が欲しかったからしていただけ、見返りを求める頑張りは、頑張りではないのだ。
彼がその事に気づいた時、すっかりおじいさんになっていた。
彼がどうなったかは、あなたにしか分からない。

#小説 #短編小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?