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国際日本学部の特色のある授業紹介~異文化の学びとキャリア形成Ⅱ(募集型企画旅行演習)

 旅行会社が提供するパッケージツアーは街の旅行会社の店頭に並ぶパンフレットや新聞の広告等で目にする機会も多いと思います。このようなパッケージツアーのことを旅行業法および旅行業約款では募集型企画旅行と呼んでいます。

 コロナ禍でなかなか旅行ができにくい環境となってしまいましたが、コロナ前までの募集型企画旅行は大手、中小各社ともそれぞれの強みを活かし、旅客の立場に立った工夫が随所になされていることはあまり知られていませんでした。

 これから観光が回復していく過程の中では、感染症から観光客と観光地に住む地元住民双方を守る対策を講じる必要が以前に増して求められています。また、感染症の対策だけでなく、世界各地で相次ぐテロや自然災害に対し、安心安全な旅行の実現が以前にも増して求められていることを考えると、観光学を学習するにあたって当然押さえておくべき内容であると考えます。

 しかし、学生に実際に聞いてみると、募集型企画旅行(パッケージツアー)は「古臭い」「お仕着せで詰め込みのツアー内容」「まずい食堂や買いたくもない土産屋に連れて行かされる」等の古いイメージを引きずっており、学生たちは航空券と宿を自分で手配して海外旅行に行っているケースが多いです。

 そこで、今年から始まった異文化の学びとキャリア形成Ⅱという講義を通して、立案段階から実際のオペレーションまで旅行企画・実施の裏側を学び、実際にツアーに参加することで旅行会社の真の姿を知り、旅行会社の工夫を改めて学生たちに伝えることが本講義の目的です。

 これから、その特徴的な授業内容を、参加する学生に毎回レポートしてもらいます。

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10/7 いよいよスタート!自己紹介

 出身地も学部学科も趣味も全く違うメンバーが集まりました。それでも将来目指すものはなんとなく似ていたり、観光に関わりたいと思っている面では一致しているような印象でした。ご両親がホテルを経営している方もいたりして今度詳しく話を聞いてみようと思います。みんな明るい人達なので、笑いの絶えないクラスになりそうです。

                            (神田恵維)

10/14 パッケージツアーの現状

 2つのパッケージツアーと個人で手配した場合の料金を比較しながら、どのような行き方をして、飛行機はどの便で行けば、その旅行代金は1番安くなるのかというのを計算しました。感想としては、まずパンフレットを見たことはあっても写真だけ眺めるような感じだったので、実際の値段がどこに書いてあるのか、どの数字を見れば料金の計算ができるのかがわかりませんでした。ここに書いてあるよと教えてもらえば分かったのですが、最初の第1歩が難しかったです。私たちの計画している旅行は、パッケージツアーで行くと公園の入園料や食事を500円で楽しむことが出来るというプランもあったのですが、定価だと4000円以上するものもあるので、企画した旅行会社は元を取る事が出来るのか心配にもなりました。また3泊の所を1泊増やして人の少ない便に乗るようにすると個人旅行で行くのに比べて約半分の値段で行ける場合があったので、なんで今まで使ってなかったのだろうと思いました。あとはパッケージツアーを使うとレンタカーを並ばずに借りることが出来るようにもなるし、こんなにちがうのか、これはもう得しかないと感じています。パンフレットを見たことの無い私たちみたいな人はハードルが高いと思いますが、見方が分かれば利用しない手はないと思います。ですので今までパッケージツアーを利用したことの無いという人達にもっと良さが広がっていけばいいなと思っています。

                            (神田恵維)

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10/21 今回参加するパッケージの旅行会社、JALPAKと日本旅行の歴史

 「最初の予算以上にお客様にサービスすることが屡々(しばしば)であった」— これは、日本旅行会(後の株式会社日本旅行)会長夫人の令弟で、戦後当会の副会長になった方である木村七郎氏が、南新助会長について述べた一言である。この親切、誠実さが信用を得た根本で、日本旅行会発展の基礎を成し、今でも親切、誠実、勤勉(努力)ということが社風—美風として誇りとされているとあるが、いかに奉仕の精神を大切にしてきたかということが伺えるだろう。

 私たちは、「日本旅行百年史」という本の「第1章/創業」と「第2章/明治時代」、「第3章/大正時代」を読んで、日本旅行会創業の歴史と南新助会長について、そして当時の旅の詳細を学んだ。これらについてグループでディスカッションをした際、「南新助会長はいかなる人物なのか」というトークテーマになったのだが、やはり「親切」だとか「仕事熱心」という声が多く上がった。旅行あっ旋業創始の動機に、南家は長年国鉄の恩恵を受けてきたため、少しでも国鉄の収益を上げて恩返しをしたかったからということもあったそうだが、そこまで報恩主義を確立できるのは、やはり南新助会長が「人のために」という信念を重要視してきたからなのではないだろうか。また、「印象に残ったこと」についてディスカッションをした際、「当時の旅は憂いもの、つらいものといった概念があったほどの一大行事で、現代の旅の捉え方とのギャップに驚いた」という意見も少なくなかった。そのような旅でも、旅の大切さとその需要にいち早く気付き、現代のような広告方法がない中500人の募集予定のところを約900人も集め、旅を気軽に、そして楽しいものにする工夫をして成功を収めた南新助会長の凄さを、改めて実感した。日本旅行会の創業時、南新助会長は私たちと同じ20歳であったそうだが、自分に今これほどのことができるかと問われると、とてもできるとは思えない。だが、南新助会長のように奉仕の精神を忘れずに、お客様など相手のことを第一に考えて行動することは、どのような場面でも大切になってくると思うので、自分もそういったことを心掛けていきたいと思う。

 さて、ここまで日本旅行会の歴史について述べてきたが、私たちはもうひとつ、ジャルパックの歴史についても学んだ。1964年、日本人の海外旅行が解禁され、翌年の1965年には、海外のパッケージツアーとしてジャルパックが発売を開始した。そして1970年、国際線の主要となっていたDC-8などと比べると、約3倍もの座席数があるボーイング747というジャンボジェット機が就航し、普通運賃よりも安価になるバルク運賃が導入され、パッケージツアーの代金が低下した。このバルク運賃はIT運賃(Inclusive Tour運賃=包括旅行運賃)として発展したのだが、安価である代わりに予約変更や払い戻しに手数料がかかるなど、様々な制限がある。しかし、そういった制限がある中でも対応できるのがレジャー目的の人々であり、ビジネス目的の人々には従来の普通運賃を販売することで、レジャー利用の取り込みを図ったのである。こうして、海外旅行が一般市民にもより広く普及することになったのだ。

 奉仕の精神を大切にしてきた南新助会長創業の日本旅行会(後の株式会社日本旅行)と、旅行というものを大衆化させたジャルパック。私たちは今冬、それぞれのパッケージツアーに参加する。今回の歴史と、そしてこれからの学びを深めて、当日の旅を有意義なものにしていきたい。

                            (渡邊真子)

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10/28 トラブル解決と約款の実際

 今回は実際に旅行会社にあったお客様からの申し出を例にトラブル解決と約款について学びました。まず1つ目の例はバスの故障により一番楽しみにしていたツアーの一部である美術館に行くことができなかったので旅行費用の半額か航空運賃を返してほしいとのことでした。これについてグループに分かれてディスカッションを行った結果、私のチームでは約款に従い、旅行費用に含まれていた美術館の入場料のみを返金するということになりました。実際の旅行会社の見解ではバスの故障は旅行会社の管理し得ない事由による旅行内容の変更として入場料のみ返し、旅行費用や航空運賃の返金はしませんでした。旅行業法で定められている標準旅行業約款ではこの旅行会社の見解は間違っていません。しかし、申し出たお客様はまたこの旅行会社を利用して旅行をしようと思うでしょうか。美術館を一番の楽しみにしていたのはこのお客様だけかもしれません。ほかのお客様は行けなくなって逆にラッキーかもしれません。だからと言ってそれぞれに対応を変えることはできないでしょう。約款にとらわれず、すべてのお客様が納得いく方法を見つけ出す必要があると思います。

 次に三浦雅生弁護士の苦情対応についての文章を読みました。ひと昔前はクレームが起きてもとにかく謝り、お詫び金の支払いであらゆる苦情は解決できました。しかし、すべての企業にコンプライアンスが求められる現在ではこうした解決策はむしろ隠蔽策であるとされてしまいます。だから、今は理論的・法的に調査する必要があるのです。また、今日ではSNSが普及しているのでどんな事例でも同じ様に対応しなければSNSの情報ではこうだったというトラブルが起こる可能性があるでしょう。しかし、SNSで情報がオープンにされるということは企業側にとってもメリットはあります。他の事案を踏まえて解決策を検討できるということです。

 どのような旅行でもすべてのお客様が納得いくということは少ないでしょう。だからこそ、イレギュラーなことが起こった時のために約款が定められています。しかし、約款に書いてある通りにしか対応しなかったらお客様はもう二度と旅行しなかったり、旅行会社を利用しなくなるかもしれません。天候のせい、機材トラブルのせいで行きたかったところに行けなかったら誰に責任があるのでしょうか。約款上、旅行会社には責任がありません。しかし、楽しみにしていた旅行が台無しになったお客様の気持ちを考えると何も保証しないというのは酷な話です。お詫び金ではなく違う形でお客様の気持ちを救うような対応を取り、旅行業がもっと盛り上がっていってほしいと願っています。                                  

                           (樋口万南香)


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