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国際日本学部の特色のある授業紹介~異文化の学びとキャリア形成Ⅱ(募集型企画旅行演習) その②

その①はこちらから。https://note.com/kanagawa_ccj/n/n8ccea28550f5

今年から始まった異文化の学びとキャリア形成Ⅱという講義は、立案段階から実際のオペレーションまで旅行企画・実施の裏側を学び、実際にツアーに参加することで旅行会社の真の姿を知り、旅行会社の工夫を改めて理解することを目的としています。前回に引き続き、その特徴的な授業内容を、参加学生にレポートしてもらいます。そろそろ専門的な内容になってきました。

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パンフレットの裏側(旅行業公正取引協議会 袋井等事務局長)

旅行を選ぶ際に旅行パンフレットを使うという選択肢がある。私たちはこの旅行パンフレットの裏側を、旅行業公正取引協議会の事務局長である袋井さんからお聞きした。

まず、旅行というのは目に見えない商品である。目の見えない商品というだけでも信頼が得にくいのにさらに旅行というのは前払いの商品である。そして返品ができない商品でもある。家電や食品のように、目に見える商品はレビューがしやすいだけでなく、他の人も同じサービスを受けることができる。一方旅行は、その時の気候や人との関わりによって大きく内容や満足度が変わってしまう可能性がある。"同じ"サービスを受けることができないのだ。だからこそ、その特徴を利用しバッグれる旅行会社が多くいたのが事実である。そういったことから、お客さんの誤認を防ぐためにこの公正取引協議会ができた。

以前の日本では旅行の大衆化によって悪質な旅行あっ旋業者が存在した。例えば、修学旅行において旅行あっ旋業者がお金を旅館に払わずにポケットマネーにしてしまったり、お客さんの要望を無視にしたホテルに宿泊させたりした。これを防止するため、1952年に現在の旅行業法の前身となる旅行あっ旋業法というが制定され、旅行あっ旋業務の登録制度が完成した。そしてこの旅行あっ旋業法の5つの柱として、

 1 旅行業者の登録
 2 営業保証金(弁済業務保証金)の供託
 3 旅行業務取扱管理者の選任
 4 旅行業協会制度
 5 取引準則

が定められた。この4つめの旅行業協会制度は、任意であるがトラブルにも仲介してくれるということから加入者は多い。

以上のことが、日本においての旅行事業の取り締まりである。

つづいて、景品表示法についてである。景品表示法とは、過大な景品類の提供になる販売競争が過勢し、広告表示が実査の内容と異なる事件が発生していることから誕生したものである。不当景品類及び不当表示防止法とも呼ばれるように、不当に割引していたり、グッズが過少評価販売されてたりするところから人々を守る法律である。これは、近年も身近で行われている。袋井さんは実際に実名を挙げて紹介してくださった。

そして最後に、私たちは旅行業における公正競争規約とは、観光庁が管轄する旅行業法と消費者庁が管轄する景品表示法の二刀流で守られていることを学んだ。この理念として、①詳細かつ正確な情報・②虚偽ももしくは莫大な広告・③重要な要素の不表示により一般消費者に誤った期待を起こさないということが挙げられる。

私たちは、今回袋井さんのお話を聞いて、いかに旅行業者が私たちお客さんを守ってくれているのかということが分かった。そしてそれと同時に、自分が就職したときお客さんを守れるような接客要員になりたいと改めて感じた。(辰口凛奈)

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JALPAK 企画の裏側(JALPAK担当者原口寿様、永井孝充様)

ジャルパックはJALグループの旅行会社である。しかし、その認知度はさほど高くない。だが、1965年に日本で初めて海外パッケージツアーを販売したのは言うまでもなく、「ジャルパック」である。当時の行き先はヨーロッパ。価格は今の時代だと700万以上。宇宙旅行に行くような感覚だった海外旅行が現在は身近になったと思っていたが、コロナウイルスという未知のウイルスによって遠い存在になってしまった。しかし、コロナ前はジャルパックではハワイの取り扱いが他社より多かった。冒頭に述べた通り、JALグループの会社のため、ハワイに向けてのJAL便がたくさん飛んでいるからである。それがJALPAKの特徴であり、強みである。

近年、「ダイナミックプライシング」という価格体制が主流である。Dynamic:変動する
つまり、「価格が変動する旅行商品」ポイントは3つ。売り上げの最大化・需要が高ければ高額で、低ければ低額・金額は常に変動である。ちなみに、ダイナミックプライシングは価格が変動するので、簡単に価格を変えられるWebのみでの販売である。ここ数年で旅行商品は大きく変化した。例えば、団体旅行よりも個人旅行で、窓口受付はネット予約が挙げられる。そんな中でも、旅行は実際に行ってみないと分からない。だからこそ確かな品質と信用、ニーズの対応と先取りが必要であるということを永井孝充さんは述べた。

実は、旅行業界全体はコロナ前から変化していたのである。ダイナミックプライシングという新たな価格変動の体制や楽天などの若い会社の参入によって、50年以上続くJALPAKには従来の枠組みからの脱出と創造価値が求められる。また、社会環境や旅行業界の事情に合わせた変化が大切になってくるだろう。マーケティングには欠かせないSWOT分析に当てはめて考えてみる。そもそもSWOT分析とはStrength(強み) Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)を挙げて分析することである。今回は「機会」と「脅威」について主に述べられた。「機会」はチャンスにできることである。例えば、人口減少の中旅行に行きたいと思っている層や一人旅が増加中の若年層をターゲットにすること。一方で「脅威」はコロナによる景気悪化やZOOMの利便性に気付いたサラリーマンたちの出張減少。シニア層の需要も伸びていないのが現状である。そこで、Go toトラベルの再開が期待されるものの、感染拡大せずに持続的にできるかが鍵となってくる。

さて、旅行商品や旅行業界も変化し続ける今、「旅行会社の存在意義」とは一体何か?

JALPAKは3つのことに取り組んでいる。1つ目は食物アレルギーの子どもを持つ家族に楽しんでもらうため、「食物アレルギー対応」に取り組んでいる。有効な治療法が確立されていないアレルギーは食べないことが原則とされているが、旅行者がホテルに直接頼むのはそう簡単ではない。そこで、実際に食物アレルギーの子どもを持つJALグループの社員の声から生まれたツアーをまずは団体向けに作成した。

2つ目は運転免許証を持っていない若者や高齢者など幅広い年齢層をターゲットにした沖縄における「JALうたばす」の取り組みである。バスガイドが実際に歌って演奏をしながらガイドをするバスである。さらに、車いすの方に向けて設備のグレードアップを図ったり、リピーターでも楽しめるようにルートの改廃を行っているが、利用客の伸び悩みが課題である。

3つ目は「車いすで行く沖縄」と題し、車いすを利用している社員の意見も取り入れたツアーを作成した。さらに、車いす利用者だけではなく歩行に自信がない高齢者もターゲットである。

3つの取り組みを通して言えることは、JALグループの企業理念の1つとして、「お客様に最高のサービスを」そしてJALPAKの理念である「お客様視点」であり続けるツアーを販売することにつながるのではないか。JALグループは今後も全てのお客様に旅行が身近な存在としてあり続けるサービスを展開することに期待したい。

観光業界が変化していることは、大学の授業でも大学外で参加した講義を通して学んでいた。もちろん、50年以上続く企業も新しい企業も関係なく、変化し続ける必要がある。コロナによって変化した価値観を変えるのは難しいという話があった。私もそう思う。しかし、その変化した価値観を活かした旅行商品を売り出していくことが従来の枠組みから脱出することにも繋がると私は考える。もちろん、全てではない。例えば、JALはブランドである。私はフルサービスキャリアは無くならず、LCCに勝るものであってほしいと願っている。ただ、生き残って行くために、何を維持して何を変えるのか、取捨選択をすることが大切だと考える。近い将来、私は変わり続ける観光業界に売り手として飛び込む準備を大学でしていきたい。(春田 菜々美)


11/25 
プレゼン準備
沖縄のオプショナルツアーの決定
平田進也さんに関する動画視聴

12月9日に行われるプレゼンに向けて、現段階で調べた資料の共有と次回までに調べなければならない内容の確認、パワーポイントの作成を行い、沖縄のパッケージツアー参加者はオプショナルツアーの決定、そしてテレビ朝日「覗いてみた3つのドア」の番組の一部を視聴しました。

プレゼン準備では、各チームでいろんな意見を出し合いながらよりよいプレゼンを作り上げようとしているように感じました。私のチームでは、「なにわのくいだおれ」についてプレゼンを行います。他のチームは「淡路島」や「沖縄」ととてもざっくりとした内容ですが、私たちはかなり範囲の狭いテーマなので、面白い内容だと感じてもらえるようなプレゼンを仕上げられるよう、情報収集に力を入れたいと思います。

今回私たちが参加する沖縄のパッケージツアーの最大の特徴は、各種オプショナルツアーが、定価だと4000〜5000円するものも全て500円で提供してもらえるという大変お得感があるものです。パッケージツアーにこんな工夫があるとは全く知りませんでした。

2日目の夜の外食する場所、3日目の午後の自由行動、夜の外食する場所を決めました。もうすでに決まっている内容としては、2月3日(2日目)うたばすを利用し、古宇利オーシャンタワーと美ら海水族館へ行くこと、2月4日(3日目)クジラ博士ホエールウォッチングです。2日目の夕食を何にするかみんなで考えた際、お得感や、目の前で行われるパフォーマンスなどを考え、キャプテンズインにすることになりました。しかし、ホテルJALシティ那覇のオプショナルプラン500円ディナーの内容を他の学生が調べてくれて、その内容がコース料理であったり、とにかくおしゃれで上品な盛り付けにみんな圧倒され、本当にキャプテンズインでいいのか迷ってしまいました。すると、島川先生から素晴らしい提案をして下さりました。それは、2日目にホテルのコース料理を堪能し、3日目はパフォーマンスを見ることができるディナーにするというものでした。みんな島川先生の提案に賛成し、最終的には、2日目にJALシティ那覇のオプショナルプラン500円ディナー、3日目にサムズインのディナーにすることになりました。

2月4日(3日目)の午後の時間に何をするのか、オプショナルプランを使うのであれば、どのオプショナルプランにするのかも考えました。私は「琉球ガラス村」で吹きガラスのグラス作り体験をやってみたいと心の中で思っていました。しかし、グラス作り体験は糸満市にあり、那覇からは少し遠いため、断念せざるを得ませんでした。そこで那覇市内でできるオプショナルプランを探したところ、「オルカ号海中散歩」という、船の中からいろいろなお魚を見ることができるプランでした。沖縄の海はとてもきれいなので、きれいな海を船の中から楽しむのはとても面白そうだなと思いました。

今回の授業のメインである動画視聴では、2014年に放送されていたテレビ朝日「覗いてみた 3つのドア」という番組のバスツアーについてでした。スタンダードなバスツアーを提供しているHISと大阪のコテコテバスツアーを開催している日本旅行を比較しながら、HISで働く社員が、今度私たちがお世話になる難波のカリスマ添乗員平田進也さんが企画するバスツアーにお客様と一緒に1日参加するという内容でした。

HISは年間6000本のバスツアーを開催しています。その特徴は、お客様にお得を感じてもらえるような商品内容にしているということです。番組では、実際に行われたバスツアーを例に出していました。
HISではツアーのタイトル名にこだわりをもっており、タイトルを見ただけでツアーの内容が分かるように考え、作られているそうです。そのため、1つのツアーのタイトル名がとても長くなっていました。
内容が盛りだくさんのバスツアーであるので、午前7時30分に新宿西口集合でした。お客様の客層は20代から40代の女性のグループがメインでした。バスの座席にもこだわりをもっており、2人組の場合は隣同士になるように、3人組であれば横1列になるように、あるいはほかに3組のお客様がいたら縦の座席でL字になるように組み合わせているそうです。今回の旅行代金は8,490円でした。

バスの中にお客様が全員入り、出発する際の添乗員によるアナウンスでは数分で諸注意を述べ、その後すぐに椅子に着席します。そうすることで、お客様が自由にバスの中で時間を使うことができるからです。HISでは自由度も重視しています。これは、お客様の声からうまれた自由時間がメインのバスツアーになっています。

新潟に到着し、「塩沢宿」という観光名所でお客様が自由に散策し、塩沢宿で利用できる「もてなし手形」というクーポンやつかみ取りなど、自発的に楽しむことができる内容を提供し、お客様の満足度を高めている戦略を取っていました。また、魚野の里という料理屋さんでも蟹の食べ放題を提供していました。HISさんで行われるパッケージツアーの9割は食べ放題を入ており、鉄板のイベントなんだそうです。
昼食の後は、蟹のつかみ取り、温泉に入浴、バスの中でスイーツのサービスなど、お客さまにとってお得だと感じるサービスを提供していました。バスの中ではみんなぐっすりと熟睡している様子も放送されていました。

一方、平田進也さんのバスツアーでは、朝8時半に新大阪駅で黒いスーツケースをもった平田さんがHISの担当者を待っていました。

平田さんが付けるバスツアーのタイトルはとてもシンプルでした。その理由は、1番は「笑い」を伝えたい、お客様に面白そうと思ってもらうため、ツアーが始まる前から「最高だ」と言ってもらえるようなタイトルづくりをしているからだと平田さんは仰っていました。今回のバスツアーの価格は1万円でした。HISさんより少し高めのお値段になっています。

午前9時になり、お客様がぞろぞろと集合してくると、平田さんはお客様一人一人のお名前を言って挨拶をし、お客様の服装をほめたりして笑わせていました。

お客様がバスの中に入っていき行く準備ができると、平田さんのマシンガントークが始まりました。お客様は笑うためにバスツアーに参加しているので、移動時間は平田さんのトーク力を発揮しています。

目的地到着前に、お客様にはサプライズで観覧車に乗ることになりました。しかし、サプライズとは言っても、バスツアーの中には含まれている内容であるため、あえてサプライズを演出してお客様をハッピーにしていました。また、お客様と一緒に観覧車に乗ることで、その場でお客様の意見を聞くことが聞くことができるので、一石二鳥な戦略だと思いました。

また、「あわじ花さじき」という憩いのスポットである兵庫県の国立公園では、冬の寒さと強風でお客様の気分も下がってしまっていました。しかし、平田さんは「ちょっと失敗してしまいましたわ~」と明るくお客様に言っていました。しかし、これも平田さん戦略の一つであり、マイナスなものをあえて入れることで、そのあとに行く目的地でのサプライズが際立つように演出しているそうです。

お昼の時間になり、「鯛の宿 うめ丸」という旅館で昼食をいただくことになりました。そこではHISとの圧倒的な違いがありました。それは、「食事の提供の仕方」です。HISではお客様お一人あたり1皿を提供していましたが、平田さんのツアーでは、テーブルに大きなお皿1皿をみんなで共有するスタイルを取っていました。これは、家族のように食事をしてお客様同士の仲を深めてほしいという平田さんの思いが込められていました。

お客様がお食事を楽しんでいる中、平田さんが急遽ウェディングドレスを身にまとってひな壇の真ん中に登場しました。手に持ったキャンドルでお客様のお鍋に火をひとつずつ付けていきながらお客様一人一人とお話しながらツーショット写真を撮ったりして、サービス精神旺盛でお客様との交流をされていました。

なぜここまでするのか、それはお客様に喜んでいただきたいからです。しかし、お客様の期待に応えないとお客様はリピーターになってもらえないため、様々なサプライズを考え、身を張って提供していると平田さんは仰っていました。

お鍋に火をつけた後も、ステージではじゃんけんに勝った人だけが挑戦することができる玉ねぎのつかみ取りが行われていました。じゃんけんに勝った人だけだと、全員が参加できないため、一見クレームになりそうな感じですが、その前に一つのテーブルで共に時間を過ごしたことでお客様同士の仲は深まっていたため、自分が参加しなくてもその場はとても大盛り上がりでした。

食事が終わると、最後に「たこせんべいの里」というお店でお土産を購入し、バスツアーは終了しました。

お客様は最後までみんな元気で、バスの中で爆睡ということはありませんでした。

以上のように、HISは企画内容の充実さを重視しており、平田さんのツアーはお客様に喜んでも頂けることを重視しているということが分かりました。

確かに、内容が充実しているとお客様は満足感やお得感を感じられますが、お客様が喜んでくれるかどうかはまた別の話になってきてしまいます。それに対して、「お客様を喜ばせたい」という思いを中心にツアーを作り上げることで、お得感や満足感でお客様を喜ばせるのではなく、サプライズをしてみたり、あえてマイナスなものをいれて、その後のものを際立たせるなど、演出の仕方を少し変えるだけでお客様が求めていた「笑い」を提供することができることを平田さんのバスツアーから学びました。

私も将来旅行会社に就職することを夢見ているので、旅行会社に就くことができ、ツアーの企画を担当するときがきたら、「お客様を笑顔にする、お客様に喜んでもらう」という一番大切なことを中心に考えて、さまざまなサプライズを盛り込んだツアーを作りたいと感じました。(北村美衣)


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