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【ワーホリ国際恋愛体験談】 ④ フルーツカクテル ケアンズの男 (前編)

※この記事はほぼノンフィクションです。誰かに迷惑が掛からないようちょっとだけフィクションを混ぜてます。

☆前回までのあらすじ☆
29歳、初ワーホリでオーストラリアのケアンズにやって来た!
到着早々変な香港人に捕まりそうになり、引き籠っていたけど・・

☆用語解説☆
ワーホリ: ワーキングホリデービザ (若者の異文化交流を目的とした就労可能なビザ)、またはその保持者。
バックパック: リュック。
バッパー: バックパッカーズホステルの略。安宿。
ケアンズ: オーストラリア、クイーンズランド州の北東にある常夏の町。

***
(本編ここから)

一年中半そでで暮らせるという常夏のケアンズ。

友人いわく、
「ここに暮らす人はみんな、頭のネジを数本失くしてる。」
のだそうだ。

1本じゃないんだ?

面白いじゃないか。

週末にマーケットをやっていると聞き、仕事探し以外特別することもなかった私はひとりでぷらぷら覗きに行ってみた。

良いお天気だった。
青い空にヤシの木、色鮮やかな花々はたくさん日の光を浴びて、可憐に、毒々しく輝いている。

ケアンズは本当に太陽がよく似合う。

日中は日差しが強いので、サングラスか帽子が必須だ。
あまりに外が眩しいため、屋根のあるマーケットにも明かりは点いているのだけれど中は薄暗く感じた。

マーケットでは果物や野菜、アクセサリー、時計、服、雑貨、いろんなものが所狭しと並んでいて、見ているだけで楽しい。

旅の途中で物は増やしたくなかったので、とりあえずこの強烈な日差しで受けたダメージを挽回しようと瑞々しいフルーツを選んでいた。
アラサーにもなるとビタミン摂取は必須なのだ。

太陽の光をいっぱいに浴びた色鮮やかなフルーツは、どれも輝きを放ち美味しそう。
金額を見て計算しつつ、あれもこれもと目移りしていたら声を掛けられた。

「これ!食べてごらん。美味しいから!」

おじさんがチェリーをポンッと自分の口に放り込みながら私に笑いかけてきた。

スラッとした長身で、飄々とした笑顔を湛える50手前と見られるイケオジだ。
目の際の笑い皺がたまらない。
白状しよう、私は年上好きだ。

「え、食べて良いの?!」
驚いて尋ねた。

「だって味分かんないとどのフルーツにしたら良いか選べないじゃん。」
ハハハと笑う陽気なイケオジ。

なんて理屈だ、さすがケアンズ。

マーケットの買い物客を見ていると、確かにみんなちょいちょいつまみ食いしてる。
なんて奴らだ。

さすがケアンズ!

懐が深いの?
ホントにみんなネジ数本失くしちゃってるの?

「ちょっとだけの味見なら良いんだよ。」
茶目っ気たっぷりなウィンク爆弾が投下された。

こんなウィンクが自然に出来る大人に私はなりたい。
今も思い出したように練習はしているのだが、なかなか自然にできない。

「そうなの?」
郷に入っては郷に従え、In Rome do as the Romans do(ローマではローマ人がするようにせよ)だ。

私もお店の人をちらりと見てチェリーをひとつ味見。うまっ。
ジューシーで甘すぎない、程良い爽やかな酸味が口の中に広がる。

なるほど、こうやってネジを一つ一つ失くしていくのか。

いくらかのチェリーを袋に詰め、他にも何かないか本格的に品定めを始めた。

「スイカを買うならあっちのお店が良いよ。赤くて甘そうだしここで一番安い。
マンゴーならそっちで、あそこの店はライチがおススメ。
チェリーはやっぱりここが一番フレッシュだね。」

そう言うおじさんの手にはたくさんのフルーツが抱えられていた。

「そんなにフルーツが好きなんだ?」
やっぱ暑いところの人はフルーツをたくさん食べるんだなぁと、ちょっと感心。
ビタミンいっぱい摂らなくちゃいけないもんね。

「うん、お酒に入れたりするんだ。美味しいよ」

お酒に入れるのか!
なるほど、お洒落!
ビタミン摂取どころかアルコールで一掃だ!

私はおじさんに教えてもらったように、他のお店もちょっと覗いてライチとリンゴを少し買ってみた。
もうこれだけでハッピー。

お日様の下で新鮮なフルーツを物色する日が来ようとは!
ジェームズのせいでしょっぱかった私のワーホリ生活が、ついにキラキラと輝き始めたことを実感した。
あのホクロめ。

こんなもんかなと本日の収穫に満足したところで、おじさんがまた声を掛けて来た。

「帰るでしょ?送ってくよ。
○○(泊まってたバッパーの名前)でしょ?」

へ?

「何で知ってるの?!」

いくら小さな町だとは言え、びっくりした。
え、何?
またヤバい人?

「だって君見たことあるもん。
僕もあそこに居るから。」

おじさんがぶら下げていたショッピングバッグはダンボールに変わっていて、中には野菜や果物がたくさん顔を出していた。

ヘルシー志向な人はちょっとスマートな良い感じの人に見える不思議。
良い人とは言わない、生活の質が良い感じに見えるということだ。

お互い食べ物を買い込んでるならすぐに帰るしかないし、
おじさんなんか段ボールいっぱいにフレッシュフードを抱えてるし、
私もそれほど警戒しなくても良いかなと判断してお言葉に甘えて送ってもらうことにした。

外は痛いほどの日差しで暑かったから、エアコンの風が心地良かった。
飄々としたおじさんはギャリーと名乗った。

バッパーに到着し、たくさんのフルーツを抱えて車を降りる。
フロントの若いお兄さんを指差しおじさんが言った。

「僕の息子なの、あれ」

19とか言ったかと思う。
優しくて可愛らしい、私も気に入っていた人だ。

お父さんなのか!
そうか、あんな大きな息子さんが!

まぁ確かにそんな年だよなぁと、驚きながらフロントのお兄さんとギャリーを交互にまじまじと見比べた。

「あともう一人、今は居ないけど似た顔の男の子がたまにフロントに居るでしょ?
あれも息子。23。」

似てるとは思わなかったけど、長いドレッドヘアのフロントのお兄さんの顔を思い出し、やはり驚いた。

そうか、じゃあたくさんの野菜は家族で食べるものか。
あ、このバッパーのオーナーさん?

オーナーかもしれないギャリーに車に乗せてもらったお礼を言い、そこで別れようとしたらまた呼び止められた。

「今日は暑いから何か飲む?
さっき買ったフルーツでカクテルつくってあげるよ。」

うわーお家カクテルってやつだ!
「良いの?!やった!」

おじさん相手に私は遠慮しないのだ。

(続く)

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