好きな人にはいつか会う

エリエール間に果てない春の山

追いつけぬ下駄響き春の闇開く

春の星指を撫でることもする

ヒヤシンス僕の未来を決めてくれ

夏近し集光道路の方に朝

芳烈の離れ難き夜月下美人

瓶を抱き梅雨をありたけ閉じ込める

夜が明ける曲がる蜻蛉の身の果てに

麻紙を千切って捏ねて夏の形にする

おりがみのはばたきそうな夏の果

昼の子の加速を得て跳ね油蝉

夏襟の娘は辞書で原宿と引く

銀杏降り止まぬいついつまでも拍手

桃色の遺伝子を呼ぶ良夜かな

林檎一個傷つきながら待っている

濡れたまま集団下校の冬の虹

朝の道吾子マスク外して喋る

狼よそのまま穏やかなままで

クリスマス聞こえぬほどに息をする

煙草水つつきはらはら冬の蝶

冬青空ミッキー・マウスと目が合う

山眠る僕らの秘密を造りだす

正論をブロッコリーと言い換える

雨に濡れて思い出す氷柱だったのを

崩れるとわかって言った雪達磨

カトレアは忘れた花だ傷の跡

折り紙破れ狼は自由なり

寂寞を洗って鯨跳んでくる

姿勢良く座る小春を忍ばせて

冬薔薇好きな人にはいつか会う


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