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鯖江の体感型マーケットイベント"RENEW2018"へ

2015年に福井県・鯖江の河和田地区で始まった、見て・知って・体験する” 作り手たちとつながる体感型マーケットイベント、「RENEW(リニュー)」。
今年で4回目になるRENEWへ遊びに行ってきました。

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鯖江の駅に降り立ってから無料で運行しているイベントのシャトルバスに揺られて30分ほど。河和田地区に続く道の脇には、イベントのキービジュアルでもある赤の水玉模様ののぼりがポツポツと見え始めます。
この目印がこれから行く先に面白くて素敵なものを予感させてくれました。

鯖江市河和田地区は、業務用漆器の国内製造シェア約8割を誇る越前漆器の産地です。越前漆器の起こりは約1500年前。継体天皇が河和田に訪れた際、その漆器技術に感動し、河和田地区で漆器づくりを行うよう奨励したのが始まりだと言われています。河和田の漆器づくりは、様々な技術を持つ職人が関わりあっているのが特徴。木からお椀を削り出す「木地師」や、漆を塗る「塗師」、蒔絵を施す「蒔絵師」など、たくさんの工房が連携し、漆器を作り上げています。今日では、昔ながらの漆器はもちろんのこと、それぞれの職人が、漆器の技術を応用した木工雑貨やタンブラーなど、様々なオリジナルブランドを生み出しています。
(REMEW公式Webサイトより:http://renew-fukui.com/2017/about.html

メイン会場は「うるしの里会館」

そもそもこのイベントは「職人の工房を一般の人たちに開くイベント」であり、「地域のプロダクトの展示会」でもある、産業観光イベントなのですが、イベント全体を見ていると、街の文化祭にも思えてくるほど、来場者だけでなく、出展者や運営スタッフの活気と賑やかさが伝わってきます。特に運営のみなさん自身が、ほんのりとソワソワしていて、高揚感を押し隠しつつも楽しんでいる姿がとても印象的でした。

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メイン会場「うるしの里会館」では、主要産業である漆塗りの展示コーナーだけでなく、全国の面白い活動を紹介するショップ型の特別企画展、地元の美味しい食べ物が味わえる屋台コーナー、移住やまちづくりをテーマにしたトークイベント会場とここだけでも時間が足りなくなるくらいコンテンツが盛りだくさん。
(今回は河和田地区だけでなく、鯖江市・越前市・越前町にもエリアを拡大。参加業種も前年から増えたそうで、眼鏡・漆器・和紙・打刃物・箪笥・焼物・繊維の7産地から110社の工房・企業・飲食店が参加していたようです)

また、特別企画展の今年のテーマは「まち/ひと/しごと」。ここの企画展には普段SNSなどでよく見かけている全国のローカルで活躍する人やモノ、社会的意義の高いプロダクトなどがショップ型で展示されていて、どれも面白いものばかり。
これらの面白くて活躍してる人やモノを引っ張ってこれる運営の力量にも感動させられっぱなしでした。(こういう出展者集めって、人とのつながりの中で交渉が上手くいったりするものですし、全く初めましての場合にはイベントの企画・コンテンツ力、共感できるビジョンがないとなかなか合意が得られるものではありません。こういうラインナップをところに運営の力量を感じさせられました。)

「展示・販売・トークイベント・ワークショップを通して、地域の熱量を上げるきっかけを作りたい」というWebに書かれていた一文が具現化された空間でした。

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時間も全然ないので、急いでメイン会場をぐるりと巡り、まちに飛び出して色々と散策開始。

漆琳堂

漆塗りというと、つるりと光る黒や朱の和を感じさせるものの代表格といったイメージですが、漆琳堂さんのお椀は青や緑といったカラフルなものや、マットな質感のものなど現代の生活にも馴染むものがたくさん。
小さな傷などがついてしまったアウトレット品も安く手に入るので、うっかり買い込みそうになるわたし笑

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河和田地区の会場は徒歩で回れるほどのサイズ感がまたよくて、ぶらりと歩いていると、ありきたりな日本の地方の風景でありながら、ちょっとしたところに遊び心があって、なんとなく明るい印象を受けます。
明るい田舎って、優しいくてポジティブなエネルギーがあって住みたくなりますよね。
街の端々からそういう雰囲気って感じられるもので、「結局は人だ」とはよく言われるものですが、いい人が住んでいる街は、人が住み、彼らが住んでいて気持ちがよくなるように手入れをする。そうするとハード面からもいい雰囲気が漂ってくるものです。そういう人の手が入れられた街という感じがしました。

PARK食堂

Hacoa

ここはワークショップや屋台の出店もあるサブ会場的な場所。
Hacoaのショールームにはデザインの素敵なものがたくさんたくさん。
木製カトラリーを手彫りで作ったり、木とアイアンのスツールを作るコーナーも。体験型マーケットということで、色々なワークショップや工房見学が至る所で楽しめます。

そもそも見学って「面白かったね~」で終わりがちな点が課題の一つ。ただ知ってもらうが目的であれば「みる」だけでもいいとは思いますが、見るだけはおそらく2度目ってなかなかありませんし、見学した対象以外の部分との接点が持ちづらい。せっかく滅多に来ない人たちが遠方からわざわざ来てくれている。「この街を好きになってもらう」「移住してもらうために、この街に恋に落ちてもらう」が目的だとすると、そこで「いかに記憶に残り、帰ってからも思い出してもらえるモノ・コトが提供できるか」が重要なように思っていました。

私自身は日ごろから「見学」に疑問を持っていたんですが、「体験型」にすることで街の人や職人さんたちとのコミュニケーションの総量も増えるな、と気づかされるシーンにたくさんであった今回。体験型おそるべし。(もちろん、体験型がそぐうケースとそうでないものがあるとは思うので、目的によって使い分けは必要です。)

TSUGI

念願のTSUGI。
以前、『インスタメディアcocoroneに関わっていた時のローンチイベントで初めてお目にかかったアクセサリーブランド・Surがきっかけで、TSUGIにはいつか行ってみたいと思っていました。この場所にはTSUGIがプロデュースしたり作ったりしているグッズの販売や、セミオーダーのシルクスクリーンが楽しめるコーナーが。意図してなのか、会話が生まれる催しものばかりで横から会話を聞いてみているだけでもホクホクしてしまう。
コミュニケーションの取り方が上手で優しい人たちばかりの印象、運営や出展者さんたちすごいなあと感心してしまいました。

RENEWのアートディレクションもTSUGIさんの仕事だそう。可愛い赤の水玉模様はシール型になっているので、建物やバスの窓などにも貼られていて、どこに行っても常に「お祭りに来たぞ」っていう雰囲気に包まれます。

キービジュアルを街中にあしらった今回のイベントのポップさは、イベントの統一感や、高揚感も上手く演出されており、街全体をイベント会場に仕立てる役割を担っている。一種のテーマパーク性を感じました。(現実に引き戻されずに過ごすためのワクワクの装置みたいなものだな、と。)

田舎をありきたりな田舎風景で終わらせず、ちゃんと「特別な日」を演出しつつも街の風景を毀損しない。とても好きな意匠です。

また、各会場で出会ったプロダクトの数々は目に映るどれもが「わぁ。いいな、欲しい!」と思わされるもの目白押し。イベント全体のアートディレクションを体感し感じたことは、「心を動かすデザインの力は偉大だな」と思わされるシーンばかり。

そして、もう一つ感じたのは「一部のイケてる人たちだけのお遊びではなく、運営に携わっている人、ものづくりの人たちが自分ごととしてプレゼンテーションしているイベント」だということ。

「デザイン」がもてはやされる昨今、外部のデザイナーを迎え、プロダクトをおしゃれでイケてる感じに仕上げて世に出して成功する、というのが商売の定石になりつつあるように思います。失礼ながら最初は鯖江のことも同じように思って見ていました。
「どうせ、デザイナーがプロダクトをデザインの魔法で素敵にして世に送り出しているだけでしょ」と。

しかし、この場所にあったプロダクトの多くは「ただ見た目の良いものを世に送り出しているようではなさそうだ」ということ。今までの「外から来た人が一時期的に美しいものを作って世に出した、それ以上でもそれ以下でもない中の人が置いてけぼりになっている“見栄えの良い”デザイン」ではなく、ちゃんと発信側のものとなって売られている。
自分たちがしっかり練りこまれたものが売られているなぁという印象でした。
(一方で、伝統産業系は買い手側が置いてけぼりになってるデザインがあることも否めないんですけど、今日のところはその話はちょっと置いておきます。)

そして最後に、RENEWが素晴らしいなと思ったのは、外の世界との接点がないままこの街で暮らしてきた地元の人も、外の世界や面白い刺激に接点が持てるという点。

インターネットがいくら発達したとはいえ、田舎に生まれ育ってずっとその街にいると「面白い人やモノ」に出会う機会は本当に少ない。私の地元も日本の中でも移住者が多い地域の一つで、外の地域から面白い人がたくさん移り住んではいるのだけれど、外からの面白い舶来モノは移住者コミュニティでとどまっていて、もともと住んでいる人たちへ届くことって実はそんなにありません。
見えない壁ができてしまいがちで、せっかく外からの風を取り込むきっかけの人たちが近くにいるけれど、なかなか接点が持てなかったりするもの。

今回のRENEWはイベントの中で、来場者も地元の人も一切関係なく、「面白い風」に触れるきっかけを用意してくれていたように思います。
今まで東京や都会に行かないと聞く機会のなかったようなトークイベントが目白押しだったし、非日常であることで「誰でも行きやすい」形態のイベントだったからこそ、普段接点を持ちづらい人でもその壁を超えられる。いろんな人が交わりやすい場になっていた気がしました。
(そもそものこの地区の人たちとその他のエリアや地元の人との日頃の関わりはわからないまま論じますが、移住者ばかりのコミュニティでの開催イベントって、街ネイティブからしたらちょっとアウェイ感あって、さらに越境感もあるから参加しづらいんですよね)

街に少し魔法をかけて、訪れた人にワクワクと驚きを提供するだけでなく、住んでいる人にも非日常の刺激をくれ、街にいながら外の風に触れられる素晴らしい場だった、そう感じます。

帰りのバスで秋の柔らかくて暖かい光に包まれ、田園と山並みがキラキラしていて美しい景色に見とれていたらあっという間に鯖江駅到着。
すごく面白くていろいろなことが参考になる、素敵なイベントでした。

来年はもっとゆっくり見てまわりたい、ぜひ一緒に行きましょう。

次回 ➡︎ 『RENEWでの戦利品』のご紹介を

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