見出し画像

時間切れ!倫理 131 賀茂真淵

 賀茂真淵(1697~1769)は荷田春満に学びました。住んでいたのは今の静岡県ですが、京都にある上賀茂神社神職の一族です。
 彼は『万葉集』の研究をし、日本人本来の心情を追求した。万葉集については国語の授業で学んだと思いますが、「おおらかで力強い」という特徴がある。このことを最初に指摘したのが多分この賀茂真淵です。この人の評価を現在の国文学研究も引き継いでいると思います。
 「おおらかで力強い」を、賀茂真淵の言葉でいうと「ますらおぶり」。ますらお(益荒男)というのは堂々とした立派な男という意味。そういう風格が万葉集にはある。それが万葉集の良いところであると評価する。男性的でおおらかな気風、これが古代日本人の基本的なあり方であり美風なのだと唱えました。同じような中身ですが「高く直き心」という表現も使っています。『万葉集』研究から見出した古代日本人の素朴で自然な心情を、こういう表現で評価しています。清明心的ですね。

※「人の心もて作れる事はたがふ事おほきぞかし」儒学の道は徂徠によれば聖人によって作られた。だからだめ。日本には「直きこころ」がある。悪人も陰険ではない。素直に朗らか。だから大乱にはならない。素直な心情と率直な暴力の美しい国・日本(『日本政治思想史』渡辺浩)

 逆に平安時代になってくると、なよなよしてきてダメになると賀茂真淵はいいます。それが平安時代以降の「たおやめぶり」「からくにぶり」批判、というところです。「たおやめ」は手弱女と漢字で書く。「女みたいになよなよしている」ということです。女性蔑視な表現ですけどもね。こんなのが平安時代になると出てくるから、平安時代の文化は駄目だというわけです。「からくにぶり」は唐国振り。から(唐)は特に中国を指すわけではなく外国全般をさしています。仏教や儒学などの外国文化が入ってきているからダメだ。これが平安時代以降の日本文化に対する賀茂真淵の評価です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?